
株式会社 富山村田製作所
代表取締役社長:西田吉宏
設立:1982(昭和57)年
所在地:富山県富山市上野345番地
従業員数:1,965名(2024年4月1日現在)
事業内容:圧電セラミックスをベースとした電子部品(圧電セラミックス応用製品)と樹脂材料を用いた電子部品(樹脂多層基板)の開発・製造
https://corporate.murata.com/ja-jp/group/toyamamurata
恵まれた環境と独自の技術から生まれる世界品質の圧電セラミックス製品
株式会社 富山村田製作所は1982年に設立、1984年に操業を開始して以来、今年で40周年を迎えました。この間、一貫して圧電セラミックスを用いた電子部品の開発・設計・生産を担い、同じく圧電セラミックス製品を生産する株式会社氷見村田製作所(富山県氷見市)、株式会社ハクイ村田製作所(石川県羽咋市)のマザー工場として、世界に向けて電子部品を供給し、村田製作所グループ(以下 ムラタ)の事業を支えています。

上:主力製品であるメトロサーク™
左下:セラミック発振子(セラロック®)
右下:圧電アクチュエータ
「当社は、力を加えると電気が起き、逆に電気を与えると振動するという圧電セラミックスの原理を活かして、規則正しく振動するセラミック発振子や素早く緻密な動作を行う圧電アクチュエータ、液晶ポリマーを使った樹脂多層基板などを生産しています」と事業概要を紹介するのは、同社 代表取締役社長の西田吉宏様です。「当社の強みは、セラミックスを薄くスライス、研磨し、電極パターンを印刷した上で、1辺が3mmもないサイズにカットしたものを基盤に乗せて、金属製のキャップを寸分の狂いもなく被せていくという精密な加工、組み立て技術にあります。また、加工や組み立てに使う特殊な設備を社内で設計できる力があることも大きな強みですね」。同社の圧電セラミックス製品は、ムラタが海外に工場を新設する際に必ず生産品目とした重要な製品であり、進出先での経営の安定化に大きく貢献したという歴史があります。

株式会社 富山村田製作所 代表取締役社長 西田吉宏 様
ムラタでは、創業者 村田昭様がつくられた社是の理念を「Innovator in Electronics」というスローガンに込め、エレクトロニクス産業のイノベーションを先導していく存在であることをめざしています。また、このスローガンの下には、経営における大切な価値観としてCSとESを置いています。西田様は、「ムラタの品質マネジメントシステム M-QMSの基盤にESを位置づけているように、お客さまに感動し評価していただける価値を提供するためには、従業員が充実感と誇りを持って働ける環境づくりが最も重要だと認識しています」と強調されました。

クリーンルームでの精密なモノづくり
カーボンニュートラル実現をめざした取り組みを推進するエキスパート集団
「ムラタでは2020年、事業の使用電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことをめざす国際的なイニシアティブ(RE100)に加盟し、現在、2030年に再生可能エネルギーの利用率50%、2050年までに事業活動での再生可能エネルギーの利用100%をめざしています。当社は2023年に『富山県SDGs宣言』を表明し、事業活動を通して地球環境への負荷を低減することや、次世代を担う子供・若者たちの育成・教育の支援、地域の皆さまと積極的なコミュニケーションを図り、安全で安心して暮らせる町づくりに取り組むことをお約束しています」と西田様。この姿勢を象徴する取り組みの1つが、カーボンニュートラル実現に貢献する再生可能エネルギーや未利用エネルギー活用の取り組みであり、トップのリーダーシップのもと、現在、同社 管理部 環境課によって意欲的に進められています。

株式会社 富山村田製作所
管理部 環境課 シニアマネージャー 水野剛 様(左)
同課 マネージャー 江守拓哉 様(右)
同課のシニアマネージャーである水野剛様は、「環境課の役割は構内の工事全般や施設の運用といったいわゆるファシリティ全般の管理と、環境保全、労働安全衛生、防災、入出門管理、廃棄物管理や化学物質管理などです」と環境課の幅広い業務範囲を説明されました。さらに、「中でも2023年末に実施した水の位置エネルギーを活用した水力発電システムの導入や、空気圧縮機の稼動に伴って発生する廃熱といった未利用エネルギーを活用する温水回収システム、また風力発電設備、太陽光発電、EV充電設備などを集約した再生可能エネルギー施設(E-forest park)の設置などは、環境課にとって大きな仕事でした」と実績を紹介されました。同課のマネージャーであり工事関連業務の責任者である江守拓哉様は、「ムラタの特徴として生産設備やラインの見直しを柔軟かつダイナミックに行うため、自ずと関連工事が発生しますので、当社の建物や設備を熟知している柿本商会さんのような工事関係者と常に話し合い、提案をいただいたりしています。水力発電や温水回収といった未利用エネルギーの活用にあたっても、計画の初期段階から柿本商会さんと日立産機システムさんにはご協力をいただき、プロジェクトを推進することができました」との評価をいただきました。

風力発電設備、太陽光発電、EV充電設備などを集約した再生可能エネルギー施設(E-forest park)(左)
風力発電デモ機(右)

ロビーに設置されたE-forest parkの監視モニター

防災センターに設置された中央監視システム

平時には工場、災害時には防災設備に電力を供給する村田製作所製蓄電池システム
ムラタ初、未利用の水の位置エネルギーを活用した水力発電システムを導入
水野様は、「ムラタは『Vision2030(長期構想)』において、『ムラタのイノベーションで社会価値と経済価値の好循環を生み出し、豊かな社会の実現に貢献していきます』と明言しているように、私たちは未利用エネルギーの活用は社会価値を高めるための挑戦だと捉えています」と語ります。第二種電気主任技術者として未利用エネルギーの導入を推進した同課の伊藤翼様は、「今まで、構内で多重利用した後の水は河川に放流していましたが、実は構内の至るところに水の落差による位置エネルギーがあります。そこで落差38mという水の位置エネルギーを回収して発電に使うために、日立産機システム製の3.5kWエネルギー回収システムを設置しました。運転開始直後は、各種パラメーターの設定や最適化のために試行錯誤を繰り返しましたが、計画通りに発電できることを確認したところです。これはムラタの中でも初のチャレンジです」とプロジェクトの概要を紹介されました。
機種の選定にあたっては、年間を通じて安定的に発電できるかどうか、流量、落差、発電量などの要件を満たすかどうか、またムラタ製の蓄電池システムと適合できるかどうか、などの面から検討されたといいます。「特にムラタ製の蓄電池システムとの接続については、日立産機システムさんの習志野事業所に蓄電池システムを持ち込み、接続試験を実施し、制御上の問題がないことをこの目で確かめることができたことは選定上の大きなポイントとなりました」と伊藤様。
構内のどの地点の位置エネルギーを活用するか、という点については、「プロジェクトに着手する前から、柿本商会さんから位置エネルギーの活用に関する情報と提案をいただいていたので、同社とシミュレーションを重ね、最適な地点を決めることができました」と江守様がシステム構成の経緯を紹介されました。

株式会社 富山村田製作所 管理部 環境課 伊藤翼 様
水野様は、「多くの工場には未利用の位置エネルギーが存在しています。当社の取り組みがその先駆けとなれたことは大変うれしいし、誇りに思います。今後も新たな挑戦を続けていきたいと考えています」と未利用エネルギー活用に込めた思いを語ってくださいました。

未利用の位置エネルギーを回収する日立製水力発電機(EBS F80L3-D)

水力発電用の蓄電池と制御盤(左)
同制御盤の内部(右上)発電状況を確認する伊藤様(右下)
徹底した水の多重利用で大切な資源をとことん有効活用する
「当社には、富山県の豊富な水資源を少しもムダにすることなく有効活用するために、各生産棟の地下には大きな水槽を設置し、水資源を何重にも使うための配管を巡らせ、数多くのポンプを駆使し、冷熱源として水を大切に使ってきました」と水野様は語ります。従来から冷熱源としての省エネに取り組んできましたが、さらなる⼿として、空気圧縮機で発生する温水を回収し、温熱源として再利用する温水回収システムを導入しました。「柿本商会さんの提案を受け、2022年に280kWの日立オイルフリースクリュー圧縮機を更新する際に温水回収システムを導入しました。年間を通して安定した温水を得るために、圧縮エアーと温水の使用量とを合わせ、最大限の熱量を得られる最適システムをシミュレーションで導き出し、2ヵ所のコンプレッサー室に設置しました。2023年度から運用を始め、年間約180t-CO2の削減の省エネ効果を生んでいます」と江守様は評価されました。伊藤様からは「当社の生産棟が抱える課題は常に変化しています。柿本商会さんは日立産機システムさんとともに課題解決のための良き相談相手だと思っているので、今後ともご協力をお願いします」とのお言葉をいただきました。

中央監視システムを使って構内のエネルギー利用状況を確認する伊藤様
「カーボンニュートラル実現に向けて、もはや時間の猶予はありません。すぐにでも着手したいことがたくさんあります。例えば、再生可能エネルギーの拡大については、2024年度中に従業員用の駐車場にてソーラーカーポート設置工事に着工し、来年の夏ごろには定格出力600kWの電力を構内に供給する計画です。さらに、水資源が持つエネルギーをもっと製造業や他の産業に活かすことができないだろうか、とも考えています。さらに、大切な資源の有効活用を通じてSDGsへの貢献を果たすことで、富山県全体として未来への可能性を拓き、次世代につなげていきたいと願っています」と西田様は今後の展望を語られました。
日立産機システムと柿本商会は、富山村田製作所様をはじめとするムラタ様の今後の成長と発展に貢献できる存在となることをめざして、さらに価値ある製品と提案をお届けしてまいります。
(2024年4月取材)

日立オイルフリースクリュー圧縮機AIR ZEUS 280(左)と温水回収システム(右)

空気圧縮機で生じる温水回収用の熱交換器
(配管の背後)

構内の空調機に温水を送る配管

主要生産棟の地下に設置された熱源水槽からさまざまな用途に向けて水を送る日立製ポンプ

出力7.5~30kWの多段うず巻きポンプが並ぶ

大口径の送水用配管
お客さまのために力を合わせて —日立産機システム 製品関係者—
カーボンニュートラル実現に貢献する未利用エネルギー回収システム
株式会社 富山村田製作所様に、柿本商会さんのご協力を得て、水力発電によるエネルギー回収システムを導入できたことは、近年力を入れている分野なので、大変うれしく思っています。実際の設置にあたっては、エネルギー回収システムとムラタ製の蓄電池システムとの接続を確認するために、習志野事業所に同システムをご持参いただき、接続試験を実施させていただきました。また安定した出力を得るために、柿本商会さんには現地の有効落差を調整していただくなど、プロジェクト全般にわたってお世話になりました。富山村田製作所様は、カーボンニュートラル実現をめざした取り組みを加速されています。今後も当社のソリューションを結集し、お客さまの進化に貢献してまいりたいと思います。

株式会社 日立産機システム
北陸支社
支社長 中西敏起(中)
営業第一グループ 部長代理 佐伯斉宏(左)
同グループ 主任 高山裕史(右)

富山、石川、福井の3県をテリトリーとする北陸支社のメンバー
株式会社 日立産機システム
北陸支社/北陸サービスステーション
〒939-8213 富山県富山市黒瀬81-1
ゼロカーボンのスペシャリストとして、最適な設備、ソリューションをご提案
当社は株式会社 富山村田製作所様の創業以来、設備工事や保守・メンテナンスをサポートさせていただいております。これまでにクリーンルームの設計・施工をはじめ、水資源の多重利用循環システムや空気圧縮機の廃熱利用システムなどさまざまなソリューションをご提案し、お客さまの課題解決に貢献してまいりました。2021年に社内にゼロカーボン推進室を設立しカーボンニュートラルに貢献する事業を強化・推進してきたところ、エネルギー回収システムと村田製作所製蓄電池を組み合わせるという企画に参加させていただくこととなり、日立産機システムさんのご協力を得て導入のお手伝いをさせていただきました。今後もお客さまのご信頼に応え、なくてはならない存在であることをめざしてまいります。
株式会社柿本商会
富山支店
空調技術部 兼 ゼロカーボン推進室
部長 山田康栄(右)
副部長 山口武志(左)


柿本商会TMC(富山村田製作所)現地事務所の常駐スタッフ
株式会社 柿本商会
本社 /〒920-0346
石川県金沢市藤江南2丁目28番地
富山支店 /〒930-0816
富山県富山市上赤江町1丁目16番1号
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( vol.135・2024年7月掲載 )