
エルナープリンテッドサーキット株式会社
代表取締役:楊 其筠(Ian Yang)
設立:2017(平成29)年10月
所在地:
本社・滋賀工場 滋賀県長浜市田町30
浅井工場 滋賀県長浜市三田町1713-1
従業員数:320名 ※2021年1月1日現在
事業内容:プリント配線板の企画・製造・販売
https://epc.elnapcb.com/
世界トップクラスの企業グループの傘下で、電子機器業界のサプライチェーンを支える
絶縁体の板の上や内部に、集積回路やコンデンサ、抵抗などの電子部品をつなぐ配線を施したプリント配線板。エルナープリンテッドサーキット株式会社は、電子機器に欠かせないプリント配線板を企画・生産するプロフェッショナル集団です。汎用の多層プリント配線板や薄型・小型化を実現した高周波ハイブリッド基板、過酷な環境下での信頼性を高めたはんだクラック防止基板、多層フレキ基板、放熱に適した銅コイン埋め込み基板や超厚銅基板など、約40,000㎡/月を超えるプリント配線板を市場に供給しています。
同社の前身であるエルナー株式会社のプリント回路事業は、1960年にスタート。以来、主に電化製品や産業機器、通信関連機器、医療機器、アミューズメント関連機器などに使われる多種多様なプリント配線板を生産。2017年10月にはプリント回路事業を分社化し、エルナープリンテッドサーキット株式会社を設立しました。

プリント配線板
「この間、2008年のリーマンショックを機に発生した世界的な金融危機と不況を乗り越えるために、車載機器向けのプリント配線板の生産・販売の比重を高め、その後の事業展開につながるビジネスモデルを構築しました」と語るのは、エルナープリンテッドサーキット株式会社 人事総務部 部長の小森規博様です。
さらに同社にとって大きな転機となったのは、2018年4月、台湾の電子部品メーカーWalsinグループの一員であるPSAグループ傘下のGlobal Brands Manufacture Ltd.(GBM社)より35億円の出資を受け、GBM社を親会社としたことです。PSAグループは台湾の台北市に本部拠点を置き、中国の、昆山(こんざん)、重慶(じゅうけい)、黄江镇(ファンジャン)、深センなどに基幹工場を持つプリント配線板の世界シェアトップクラスの企業集団です。「当社は、PSAグループの主要メンバーとして、主に日系メーカーのお客さまに向けて事業を展開しています。一方、親会社のGBM社は非日系メーカーに向けて製品を提供するなど、東アジアのマーケットで互いに補完しながら電子回路業界のサプライチェーンを構成しています」と、同社生産技術部 部長 宮本雅朗様は、グローバル市場での位置付けを紹介してくださいました。

エルナープリンテッドサーキット株式会社
人事総務部 部長 小森規博 様(左)
生産技術部 部長 宮本雅朗 様(右)
高い品質を実現する工程づくりに欠かせない、空気圧縮機
「製品の設計開発から製造、品質管理までを一貫して手掛ける本社工場と、穴開け工程を受け持つ分工場である浅井工場は、ともに量産品に求められる品質や信頼性、製品特性、製造ノウハウが詰まった自慢の工場です」と胸を張るのは、同社生産技術部 環境保全課 課長 兼 マネジメントシステム 課長補佐の中西真一郎様です。「当社は量産メーカーなので、実際に量産で使用するラインを使って試作ができるので、量産を想定した視点での問題点や課題を、すぐにお客さまにフィードバックすることで、量産時の高い品質を実現することができるのです」。さらに同社独自の強みに加えて、PSAグループの一員である強みもあります。同課 主任 兼 マネジメントシステム 主任の石川僚一様も、「お客さまは、信頼できる安定したサプライチェーンの構築を重視されています。当社では、PSAグループの力を背景に海外の材料メーカーとも取り引きができるので、災害時でも材料調達ができずお客さまへの供給が滞るようなことはありません」とグループ力を生かせる強みを紹介されました。

穴開け工程を担う浅井工場外観
同社のモノづくりを支える本社工場と浅井工場において重要な動力を担うのが空気圧縮機であり、その設備投資計画の策定から実行までを担当されるのが中西様です。
「圧縮エアーは工場内の省力化や自動化を支えるさまざまな空圧機器に使われています。例えば、高度に自動化された浅井工場の穴開け工程では、高速スピンドルによりドリルで基板に穴を開けますが、機械的なベアリングだと焼けてしまうので、エアーベアリングを使っています。また、基板の吸着搬送用にも圧縮エアーは欠かせません」と、中西様。
さらに中西様は、「両工場にとって重要な空気圧縮機ですが、浅井工場ではその更新時期が迫ってきたこともあり、PSAグループの設備部門スタッフの推奨により中国製の水冷式スクリューコンプレッサーを導入する計画が進められていました。しかし折からの新型コロナウイルス感染症拡大に伴って、中国メーカーの担当者が来日できなくなったため、社長より、日本製機器の導入で省エネを図るようにとの指示を受け、日立産機システムさんと特約店の三枝電機さんに相談しました。そして両社技術スタッフのレスポンスの良いご提案を受け、日立空気圧縮機の導入を前向きに検討することになりました」と導入経緯をご紹介してくださいました。

銅メッキ工程のライン

最終検査工程

洗浄工程

数値制御されたNC工作機で微細な穴を基板に開けていく

穴開け工程のライン

穴開けされた基板
高い省エネ性を生かし、環境への配慮と成長に貢献
こうして2020年11月に、浅井工場では真新しいコンプレッサー室に、水冷式75kW給油式スクリュー圧縮機4台に加え、台数制御盤、タンク、フィルターなども新設。12月から運転を開始しました。
「高効率の水冷式空気圧縮機の導入は、省エネとともに環境面の改善も実現してくれました。以前の空冷式の圧縮機の場合、穴開け工程で粉じんが飛散し圧縮機に吸い込まれ、冷却を行うアフタークーラーが目詰まりを起こすことがありました。また、夏期にはオーバーヒートが発生することもありましたが、そんな心配もなくなりました」と中西様。省エネ効果は期待通りで、空冷式の従来機の電力使用量は約25万kWh/月でしたが、水冷式の新設機の電力使用量は約15万kWh/月となり、約40%の電力削減を達成。これはCO2に換算すると約33,400kg/月の削減を実現したことになります。この成果をご評価いただき、2021年5月には、本社工場にも4台の水冷式空気圧縮機を導入いただき、省エネ機推進の横展開が図られました。

エルナープリンテッドサーキット株式会社
生産技術部 環境保全課 課長
兼 マネジメントシステム 課長補佐 中西真一郎 様(左)
生産技術部 環境保全課 主任
兼 マネジメントシステム 主任 石川僚一 様(右)
「三枝電機さんには、長年にわたって2つの工場の空気圧縮機の定期保守メンテナンスをお願いしてきました。とてもていねいな整備のおかげで、使い込んだ機器でも長く安定運転を維持することができました。今後もコストパフォーマンスとサービス両面で、当社の良きパートナーであっていただきたいですね」と中西様からご評価をいただきました。
さらに、「美しい琵琶湖の近くで事業を営むにあたり、湖水や地下水、河川などへの環境負荷は生物多様性や豊かな水資源に支えられた地域社会に大きな影響を与えることになります。今後も省エネの追求とともに、環境と調和した事業活動、環境負荷低減活動を展開していきたいと思います」と中西様は、環境管理責任者としての抱負を語られました。
同社はPSAグループの豊富な経営資源や組織マネジメント能力、材料調達能力を得る一方、PSAグループに向けては、長年培ってきたプリント配線板の品質管理ノウハウや国内市場の商流を提供しています。強大な資本力を有するPSAグループと高い品質を誇る同社のアライアンスによる事業シナジーは、今後のさらなる成長につながります。三枝電機と日立産機システムは、力を合わせて同社のモノづくり現場の実情にマッチした製品、システムをご提案し、これからの発展に貢献していきたいと考えています。

浅井工場に導入された日立空気圧縮機(75kW×4台)

台数制御盤

FitLive®用のアンテナ

本社工場に導入された日立空気圧縮機(75kW×4台)

FitLive®で遠隔監視・遠隔制御が可能

FitLive®機能が搭載された日立空気圧縮機
お客さまのために力を合わせて —日立産機システム 製品関係者—
“空気圧縮機の日立”の実績を生かしたご提案でお客さまのご期待にお応えすることができました
エルナープリンテッドサーキット株式会社様へのご提案については、海外製品と競い合うためにも、お客さまが求める省エネ効果を裏付ける正確なデータが必要でした。現地調査では、長年お客さまの信頼にお応えしてきた三枝電機さんの経験と情報力に大変助けられました。また当社には空気圧縮機の分野で実績を重ねてきた経験と分析ソフトがあり、ご提案に生かすことができました。すでにお客さまには、リアルタイムで稼働状態を遠隔監視するFitLiveサービスをご活用いただき、遠隔監視のメリットも体感していただいています。今後は、メンテナンスパックもご検討いただいていますので、三枝電機さんとともに長く安心してお使いいただけるように努めてまいります。

株式会社 日立産機システム
中部支社
第三営業部 空圧システムグループ
主任 大削卓之
お客さまの省エネにかける熱い思いにお応えできるパートナーでありたいと願っています
エルナープリンテッドサーキット株式会社様には、空気圧縮機のメンテナンスなどで長くお付き合いをいただいてきました。2019年3月には浅井工場様の空気圧縮機更新のお話をいただき、日立産機システムさんとともに現地調査や省エネ診断に取り組みました。その結果、お客さまの実情に合わせたきめの細かい台数制御のプランをご提案、ご採用いただきました。2020年末には浅井工場に4台設置し、計画通りの省エネ効果を発揮。2021年5月には本社工場にも4台設置していただくことができました。お客さまはさらなる省エネを追求されていますので、今後も万全のメンテナンスをご提供するとともに、新たな製品やシステムをご提案していきたいと思います。

三枝電機株式会社
第三営業部 直需2課 髙尾一貴(左)
第三営業部 直需2課 部長 早野英一(中)
サービス技術部 産業システム課 課長 野津智一(右)
ご採用いただいた製品
空気圧縮機
給油式スクリュー圧縮機 HISCREW NEXTⅢseries
省エネ性能と充実のIT機能で生産現場を支える先進の空気圧縮機
日立空気圧縮機HISCREW NEXTⅢseriesは、周囲温度45℃に標準対応(50℃まで運転可能)※と、高温下での信頼性を確保しました。水冷機はオイル/アフタークーラの性能向上により周囲温度45℃に標準対応。空冷機は、熱源となるオイル/アフタークーラを上部に配置したユニット構造と大型ターボファンによるユニット内部の強制換気により、安定した運転を実現しました。
主な特長
1. 新型エアエンドによる高効率化の実現
2. 省エネ制御スイッチ「E-MODE」を標準装備で最大の省エネ効果を発揮
3. IPC制御(末端圧力予測制御)で消費動力を低減 特許4425768号他
※ 周囲温度が45℃を超えると周囲温度警報を表示します。

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( vol.117・2021年7月掲載 )