モノづくり現場をはじめ、さまざまな産業分野で活躍する空気圧縮機。動力源や搬送用など多様な用途の圧縮エアーを供給する重要な設備のため、保守メンテナンスを担当するサービスエンジニアには高い知識と技術力、いざという時の対応力が求められます。今回は、青森県を中心に幅広いエリアを担当して奮闘する若きサービスエンジニアの取り組みをご紹介します。
画像1: 【熱きサービスエンジニア・7】
八戸サービスステーション[空気圧縮機編]
画像2: 【熱きサービスエンジニア・7】
八戸サービスステーション[空気圧縮機編]

八戸サービスステーション
所在地 : 〒031-0071 青森県八戸市沼館1丁目13番96号

上:本州最北の地でお客さまのご期待に応えるサービスステーションのスタッフ達。
下:空気圧縮機を中心にさまざまな製品の部品が揃うサービス工場。

広大なエリアを駆け巡り、得た経験を学びに変える

 モノづくり現場や大型商業施設、学校や病院などで圧縮エアーを供給する空気圧縮機。東北支社 サービス・エンジニアリング部 八戸サービスグループの四戸(しのへ)健太郎は、空気圧縮機を担当するサービスエンジニアとしてグループを支える期待の若手です。2012年に入社し、宮城県仙台市の東北支社で2年間のOJTと実務経験を経て、8年前から同グループに配属されました。同グループは、青森県全域と岩手県北部のお客さまにお使いいただいている当社製品のメンテナンスを担っていますが、中でも空気圧縮機の取り扱いが最も大きな比重を占め、四戸も年間250~300台の空気圧縮機の保守メンテナンスに対応しています。地域柄、拠点から遠く離れたお客さまも多く、青森県最北端の下北半島に位置するお客さまの場合、天候が悪ければ、片道4時間以上かかることもあります。

 「空気圧縮機は生産ラインを支える重要な設備です。お客さま先では、動力として使われることも多く、万一トラブルが発生すると、生産ライン全体が停止してしまうので、メンテナンスには細心の注意を払っています」と語る四戸。分解修理や部品交換の際に起こりやすい、小さなネジの締め忘れなどの作業ミスを決して起こさないように、グループでは複数人によるチェックを怠りません。特にオーバーホールの際には最新の製品知識と整備技術を共有し、グループ全体の技術力の向上を図っています。

 またサービスエンジニアには、時には想定外のことにも対応しなければいけないことがあります。「農家のお客さまに納入したベビコンのケースですが、使用時に度々ブレーカーが落ちるというので、容量の変更をお願いしました。すると今度は電柱側のヒューズが飛んだのです。調べてみると電柱の容量が不足していることが分かりました。お客さまに圧縮エアーを適切にお使いいただくためには、使用環境をしっかり確認することもサービスエンジニアの大切な仕事だと実感しました」と語ります。

画像3: 【熱きサービスエンジニア・7】
八戸サービスステーション[空気圧縮機編]

四戸(しのへ)健太郎 (2012年入社)
株式会社 日立産機システム
東北支社
サービス・エンジニアリング部
八戸サービスグループ

オイルの凍結という、寒冷地特有のトラブルに対応するために

 同グループには、冬場は日本海側エリアには積雪が多く、太平洋側エリアでは道路が氷結することが多いという寒冷地ならではの苦労があります。特に冷え込んだ朝には、空気圧縮機のオイルケースに入っている潤滑油が寒さのために固まることで給油圧力が低下し、起動することができないこともあります。「空気圧縮機は氷点下の環境で使うことを前提としていないため、起動前に機械を暖めていただく必要がありますが、お客さまにご負担をかけないために、簡単な対策として、前夜から屋内の投光器でもいいので熱源を当てるようにしてくださいとお願いしています。それだけでも随分と効果がありますよ」とお客さまにご案内をすることで、冬季のトラブルを防いでいるといいます。

画像: 先輩の橋本から工具の使い方や作業のポイントを学ぶ。

先輩の橋本から工具の使い方や作業のポイントを学ぶ。

空気圧縮機の台数制御と配管見直しで、大きな省エネ実現に貢献

 2022年、四戸は、忘れられない体験をしました。8年前からお付き合いのある、金属粉末・金属射出成形部品・人工水晶原石の開発・製造・販売を行っているエプソンアトミックス株式会社 北インター事務所様へのご提案時のことです。同社の工場内には当社製の空気圧縮機を多く設置されていて、特約店の東北日立とともに四戸がメンテナンスを担当してきました。新設されたコンプレッサー室には5台がそれぞれ別系統で生産ラインにつながっていましたが、配管を変更し1つにまとめたいとのご要望があったのです。そこで四戸は、特約店とともに、空気圧縮機を効率良く運転するために台数制御システムをご提案し、採用していただきました。

 「3月に台数制御盤を入れて試運転をしたら、なぜか起動しませんでした。他社による配線作業の手違いが原因でした。お客さまのためにその日のうちに起動させなくてはと思い、地道に1本ずつ配線を確認していきました」と四戸は当時を振り返ります。1台につき7~8本もつながっている配線を時間をかけ1本1本確認し、無事に起動させることができた時に、「良かった」と安堵されたお客さまの笑顔は、四戸にとって忘れられないものになったと語ります。

画像: 大きな荷台に多くの整備用工具や部品を積み込んでお客さまのもとへ。

大きな荷台に多くの整備用工具や部品を積み込んでお客さまのもとへ。

 そして同年6月。お客さまからは、「省エネ効果をさらに発揮できるよう工夫してほしい」とご要望をいただきました。調べてみると、台数制御で運転の効率化は進んだものの、空気配管系統の都合上、複数台を制御している空気圧縮機の内一部が停止したタイミングで空気槽内が空となり、他の空気圧縮機が常に稼働する増エネ運転となっている状態を確認できました。しかし、既存の配管を大幅に変更するためには生産ラインを停めることが必要でしたし、追加の費用もかかります。そこで四戸は東北日立の下舘とともに、既存の配管をループ化するという最低限の施工によって、効率的な運転とさらなる省エネを実現できるプランをご提案したのです。配管を変更してからは、タンクを常に満タンにできることでエアーの減少によるトラブルも解消できました。お客さまからは効率良くエアーを使うことができるようになったとご評価をいただきました。四戸にとって、このような既設配管の変更提案は初めてのケースでしたが、下舘と力を合わせて成功に導くことができたのです。「これまでは保守メンテナンスを主なミッションだと考えてきましたが、今回の積極的な提案の成功によって、お客さまのご要望にお応えし、自身もサービスエンジニアとして新たな一歩を踏み出せたという手応えを感じることができました」と四戸は胸を張ります。

画像: 報告書やメンテナンスの提案書を作成するデスクワークも重要な仕事だ。

報告書やメンテナンスの提案書を作成するデスクワークも重要な仕事だ。

画像: 少数精鋭の体制で当社製品のメンテナンスを担うサービスエンジニア達。

少数精鋭の体制で当社製品のメンテナンスを担うサービスエンジニア達。

画像: 四戸のさらなる成長に期待をかける上司の笠井。

四戸のさらなる成長に期待をかける上司の笠井。

画像: お客さま先で空気圧縮機の稼働状況を確認する。

お客さま先で空気圧縮機の稼働状況を確認する。

エンジニアとしてさらに成長し、お客さまと会社への貢献をめざす

 広範なエリアを担当する同グループでは、事前にトラブルを察知するメンテナンスサービスの普及にも力を入れています。新たなサービスの展開をめざして奮闘する四戸の仕事ぶりを、同グループの上司である技師の笠井嘉人は、「四戸は性格がすごく良いサービスエンジニアだと思います。今後は、さらにお客さまとの対話の機会を増やし、より信頼していただけるようになってほしいですね。メンテナンスパックなどの保守契約、IoT対応の設備監視システムであるFitLiveサービスなどの導入も、サービスエンジニアとしての信頼感が高まれば、もっと受け入れていただけるようになると思います」と期待を寄せます。先輩の技師、橋本隆も、「1人でお客さまの元へトラブル対応に行ってもらうことがありますが、作業を終わらせるまでは集中して黙々と頑張っているようで、頼もしく思います。現場で作業を指揮する際にも全体の流れを正確に理解しているので、お客さまや施工会社さんにもしっかりと信頼されていますね」と評価しています。

 しかし、少数精鋭で広い地域でレベルの高いサービスを提供するためには、空気圧縮機以外の製品知識も身に付けて、想定外のご要望にも応えられるようになることや、お客さまの抱えるお困り事を把握し、新たに提案に結び付ける力を高める必要があると四戸は考えています。

 「今は、中型や小型の空気圧縮機の修理・整備技術については自信を持ってやらせていただいています。しかし、お客さまが自覚していないような課題を把握できるように、コミュニケーション力をもっと高め、目の前の問題以外のお困り事や将来的な課題にお応えできるようなサービスをご提案できるようになりたいですね。私が成長できれば、お客さまの事業発展により貢献できるようになるし、社内の上司や先輩をサポートできるのではないかと思っています」と四戸は高い目標を掲げ、決意を新たにします。

 空気圧縮機を筆頭に、幅広い製品の知識と技術を備えて、さまざまなお客さまのご要望に応え続ける当社のサービスエンジニア達。彼らがいる限り、モノづくりの現場は今日も進化を止めることはありません。

画像: 株式会社 東北日立 八戸支店 下舘とは常に丁寧な打ち合わせを欠かさない。

株式会社 東北日立 八戸支店 下舘とは常に丁寧な打ち合わせを欠かさない。

■特約店メッセージ

台数制御と配管変更による効率化のご提案に携わって

 当社は、日立製の空気圧縮機、ポンプ、空調機などの製品・システムの販売、エンジニアリング(設計・施工)、メンテナンスなどを通じて、お客さまに安定した生産設備の運営と快適な作業環境の提供をしています。今回、四戸さんとともにエプソンアトミックス株式会社 北インター事務所様に台数制御システムと配管変更をご提案し、作業を無事に完了することができたのは、私にとっては大きな経験でした。
 まず私が、同社から既存設備をもっと効率良く運転できないかとのご相談を受け、四戸さんと相談しながら台数制御システムと配管変更のご提案をさせていただきました。実際の作業では、ほとんど生産ラインを停止することなく完了できたのは良かったと思います。四戸さんは、安全に配慮した作業計画を立て、的確に人員の配置をしてくれるので、安心して任せることができました。また、お客さまに立ち会っていただく必要がある時には早めに連絡をいただけるため、お客さまも予定が立てやすかったと思います。
 今後も安定した機器の運用のために、お客さまとの会話や巡回を通じた情報共有と、自身のフットワークを生かした対応で、サービスのご提供と新たなご提案に努めていき日立ブランドを支えていきます。

画像: 株式会社東北日立 八戸支店 営業二課 下舘政史

株式会社東北日立 八戸支店 営業二課 下舘政史

サービスエンジニアが活躍するお客さまを訪ねて

電子部品に欠かせない金属粉末を、
オンリーワンの技術でつくる
エプソンアトミックス株式会社 北インター事業所様

画像: 業界トップクラスの性能の微細な金属粉末(奥)と金属射出成形部品(手前)。

業界トップクラスの性能の微細な金属粉末(奥)と金属射出成形部品(手前)。

画像: 上:自社開発の生産技術が随所に生きる金属粉末生産ライン。 下:エプソンアトミックス株式会社 事業管理部 課長 白鳥達也 様(右)同社 北インター事業所 設備担当 佐藤徹三郎 様(左)

上:自社開発の生産技術が随所に生きる金属粉末生産ライン。
下:エプソンアトミックス株式会社 事業管理部 課長 白鳥達也 様(右)同社 北インター事業所 設備担当 佐藤徹三郎 様(左)

青森発。金属粉末のリーディングカンパニー

 エプソンアトミックス株式会社様は、青森県八戸市の地で、金属粉末、金属射出成形部品、人工水晶を独自の技術で開発・製造・販売を行う国内トップクラスのスペシャリストです。セイコーエプソン株式会社が、1999年に八戸市内にある大平洋金属株式会社の金属粉末事業と金属射出成形事業を継承したことから同社の歴史がスタートしました。
 同社 事業管理部 課長の白鳥達也様は、「会社設立の経緯から分かるように当社の主力製品は金属粉末で、売り上げの過半数以上を占めています。直径が数マイクロメートルの微細な金属粉末は、自動車やパソコン、スマートフォン、ゲーム機などの電子部品の原材料として使われています。その一部はエプソンのプリンターなどにも使われていますが、多くは外販用です。中でも、磁性粉末は世界シェアNo.1ですね」と事業概要をご紹介されました。
 同社が手掛ける金属粉末は、成分がわずか1%違うだけでも全く性質の異なるものになるので、粒子の大きさ、配合する材料の種類などの組み合わせ次第で、製品ラインアップは数え切れないほど多いといいます。特に最近注目を集めているのはアモルファス合金粉末で、電子部品の低消費電力、小型化、高周波・大電流対応などの性能を向上させる高機能材料粉末として、高い評価を受けています。
 「性能向上の身近な例は、携帯電話のバッテリーですね。以前はバッテリー残量の減り方が早くまめに充電することが必要でしたが、当社の金属粉末を使うことで電気抵抗を減らすことができ、電気を効率よく使えるようになりました。またバッテリーの長寿命化にも貢献しています」と白鳥様は胸を張ります。

業界をリードする磨き上げた生産技術

 同社は2種類の製造法で金属粉末をつくっています。一つが水アトマイズ法といって、溶けた金属に高圧の水を吹きつけて粉にする方法です。小さくて球状の金属粉末をつくるためにガスを使うことが多いのですが、同社では低コストの水を使って高品質の金属粉末をつくる技術を確立しています。もう一つがS.W.A.P.○R 法(スピニング・ウォーター・アトマイゼーション・プロセス)で、ガスで細かくした金属粉末を急激に水流回転で冷やすという製造法です。「これは世界で当社だけが持つ独自技術で、お客さまのニーズに応じて製造法を使い分けています」と白鳥様。「しかし、当社製品の高い品質を支えているのは生産技術だけではありません。生産技術と従業員一人ひとりの技能が融合することで、初めて高性能の金属粉末をつくることができるのです」と、モノづくりのコンセプトをご紹介されました。水アトマイズ法を例にとれば、原料となる金属塊を高周波誘導炉で溶かして、それを水流によって発生する気流で非常に細かく分散させますが、その制御は熟練した人の技能がなくては不可能だといいます。

画像: コンプレッサー室内の空気圧縮機 HITACHI 37 OIL FREE SCREW single stage NEXTseries 3台 エアー搬送用 HITACHI 22 OIL FREE SCREW single stage NEXTseries 2台 分級用

コンプレッサー室内の空気圧縮機
HITACHI 37 OIL FREE SCREW single stage NEXTseries 3台 エアー搬送用
HITACHI 22 OIL FREE SCREW single stage NEXTseries 2台 分級用

画像: 左:コンプレッサー室 中:5台の空気圧縮機を最適制御し、省エネを実現する台数制御盤。 右:溶解工程で使う冷却水を運ぶ日立製給水ユニット IJ2。

左:コンプレッサー室
中:5台の空気圧縮機を最適制御し、省エネを実現する台数制御盤。
右:溶解工程で使う冷却水を運ぶ日立製給水ユニット IJ2。

完成した金属粉末を搬送するエアーをつくる空気圧縮機

 こうしてつくられた金属粉末は、脱水・乾燥を経た後、粉末を大きさごとに分ける分級機に送られますが、ここで活躍するのが日立製の空気圧縮機です。同社北インター事業所の生産設備全般の管理・保全を担う佐藤徹三郎様は、「従来は容器に入れて人の手で運んでいましたが、エアー搬送設備の導入により自動化を実現することができました。それに伴い、新たにコンプレッサー室を設置し、搬送用と分級用の空気圧縮機を設置しました。また、脱水・乾燥ラインの省力化のために、多数のアクチュエータが働いていますが、これらもすべてエアーで動いています」とご紹介されました。
 同事業所は、24時間、常にフル操業に近い状態にあるため、生産ラインを支える空気圧縮機のメンテナンスは重要です。佐藤様は、事業所内のほぼすべての設備・機器の稼働状態を五感を研ぎ澄まして、毎日点検しています。また時には、特約店である東北日立の下舘や日立産機システムの四戸とともに、設備改善やメンテナンスにも当たっています。「空気圧縮機がなくては当社の生産ラインは動きませんので、トラブル発生時には無理なお願いをすることもありますが、いつもフレキシブルに対応していただき、大変助かっています」とのお言葉をいただきました。さらに、「2022年度には、コンプレッサー室に設置した5台の空気圧縮機を一体的に運用する台数制御システムをご提案いただき採用したところ、大きな省エネ効果を発揮することができ、満足しています」とのご評価もいただきました。
 エプソングループでは、2050年の「カーボンマイナス」「地下資源消費ゼロ」の達成をめざしています。この方針を受けて、同社は2025年春に北インター工業団地内に不要となった金属を金属粉末の原料として資源化する新工場を建設する計画です。日立産機システムと東北日立は、環境面でも同社のお役に立っていきたいと考えています。

画像4: 【熱きサービスエンジニア・7】
八戸サービスステーション[空気圧縮機編]

エプソンアトミックス株式会社
代表取締役社長:大塚 勇
設立:1999年10月1日
本社:青森県八戸市大字河原木字海岸4-44
北インター事業所:青森県八戸市北インター工業団地2-1-60
事業内容:金属粉末、金属射出成形部品、人工水晶の開発・製造・販売

( vol.126・2023年1月掲載 )

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