
本社正門(上)
本社屋に設置された太陽光パネル(下)
東邦フイルム株式会社
代表取締役社長:三谷郁彦
設立:1972(昭和47)年4月
所在地:徳島県板野郡板野町羅漢字川原崎2番地1
従業員数:100名
事業内容:合成樹脂フィルム・セロハン・不織布などの加工販売印刷、製袋、スリッター加工、シート加工販売
https://www.tohofilm.co.jp
プラスチック包装資材の価値をさらに高めるオーダーメイドのモノづくり
食品スーパーや青果店の店頭に並ぶ新鮮な野菜や果物は、ほとんどがプラスチック製のシートや袋で包装されていますが、その包装資材には多彩な形状や機能があることをご存知でしょうか。今回お訪ねした東邦フイルム株式会社は、そんな包装資材を幅広く手掛ける、徳島県板野町に本社を構える専門メーカーです。
徳島県は海の幸に恵まれていることから水産練り物製造業が盛んで、地元では蒲鉾にかけるセロハン包装のニーズがありました。この土地柄を背景に、同社は1972年に創立され、セロハンの加工販売を始めました。やがて熱加工が容易な石油由来のプラスチックフィルムへのニーズが高まってきたことから、同社では合成フィルムの印刷・製袋や裁断などの事業をスタート。1988年には大阪に営業拠点を展開し、2007年に東京、2010年には福岡にも営業所を開設し、お客さまのニーズに合わせて成長を続けてきました。

多種多様なプラスチック包装資材
「成長期には次々と生産設備を導入し、手狭になったら工場建屋を増築し、また新たな機械を入れるという状況でした」と振り返るのは同社代表取締役社長の三谷郁彦様です。創業者の父、二代目の兄を継いで三代目社長として同社の成長と発展を牽引しています。
「当社の直接のお客さまは商社や包装資材ディーラーで、エンドユーザーが食品スーパー、量販店、農協や農業法人などです。野菜や果物などの青果向けが約半分、雑貨や花き、工業向けが残りの半分を占めます。ほとんどの製品がオーダーメイドなので、登録している製品数は約5万アイテムに及びます。原料はポリプロピレン(PP)が中心で、1990年頃からは野菜の呼吸による曇りを防ぐ機能のついたPPフィルムの製袋が主要な事業の一つとなりました」と三谷様。店頭におけるPOSシステムの導入拡大で、バーコード付きの製袋需要が増えたことから、高速サイドシール機を導入し、さらなる発展の基盤を築かれたそうです。「当社ではチャック付き、糊付き、取手付きなどの袋や、自立するスタンドタイプなどの付加価値が高い複雑な工程が必要な製品づくりに注力し、お客さまに信頼され、頼られる企業をめざしてきました」と同社の歩みを語られました。

東邦フイルム株式会社
代表取締役社長 三谷郁彦 様
モノづくり現場の創意工夫を活かして生み出す、独自の製品
同社本社工場では製袋・スリッター加工・シート加工・後加工などを担い、印刷工場では大型の高性能グラビア印刷機4台を駆使して包装資材に多彩な印刷を施しています。
本社工場においては、フィルムを重ねて焼き切る方式の溶断加工で手詰め用の袋をつくる「製袋」や、フィルムにスリットを入れて筒状に巻き取る自動包装用のロール加工、フィルムを断裁してシート状に加工するなどを行っています。原料となるフィルムにはさまざまな機能があります。一例が野菜の鮮度維持機能を持たせるために、フィルムに微細な穴を開けたもので、野菜から発生する水分をコントロールして野菜の変色を防ぎ、鮮度を保つことができます。また同社の強みが発揮される袋の形態もさまざまで、シート状のものや少人数世帯に対応した少量パック用のチャック付き袋、陳列に便利なスタンドタイプの袋などがあり、細かな後加工に対応できることも同社の強みとなっています。

東邦フイルム株式会社
取締役工場長 市橋雅俊 様
「レタスや花きの包装に使うシート加工は、簡単そうに見えて実は高度な職人技を必要とします。例えばシート100枚を印刷や穴がずれないようにまとめて、ぴったりと揃えてハンダ付けをすることなどは機械ではできない工程であり、現場のスタッフが丁寧かつ手際よく行っています。チャック付きの袋も、製袋の後工程でオスとメスを互いに付け、内側からははがしにくく、外側からははがしやすい鍵式にしています。それをスタッフが自ら治具を考案したり、作業がしやすいように工夫したりするとともに、その技術や発想の仕方を若手に伝えているのが当社の強みであり、伝統です」と取締役工場長の市橋雅俊様は、同社の生産技術を支える強みを語られました。現場の意見や工夫を尊重する社風が、働く人の意欲をさらに引き出す好循環を生み、「機械+人の力」で、きめ細かくお客さまのご要望にお応えしていくことができるのです。
同社の印刷工場において、長年お使いいただいているのが日立産業用インクジェットプリンタです。レタスに使う包装用シートの加工工程で、ロール状のプラスチックフィルムが5m/秒という高速で流れる中、生産者名や認識番号などを印刷するものです。2023年1月には最新機種に更新され、野菜の安心・安全を守るトレーサビリティに貢献しています。

製袋工程で稼動するサイドシール製袋機

丁寧な後加工で商品力を高める(左) 印刷工場の6色対応グラビア印刷機(右)

鮮度維持機能を持った野菜包装用シート

安心・安全なトレーサビリティを支えるには鮮明な印字が求められる
新たな技術にチャレンジしつつ、スマート&コンパクトな企業をめざす
同社がIJプリンタに求める機能は、スピード、正確さ、インクの速乾性、メンテナンスのしやすさです。その条件を満たしたのが日立産機システムの製品でした。
「シート加工で使うIJプリンタの稼動期間は、あまり長くないため、どうしてもインクが固まりやすくなるので、そのメンテナンスに手間がかかっていました。新しいIJプリンタは印字ヘッドの自動洗浄機能が付いているので、その手間がほぼなくなりました」と手応えを感じている同社 製造課主任の石橋雄介様。また、リアルタイムにIJプリンタの稼動状況を把握できるIoT対応設備監視サービス「FitLive」に標準対応している点にも、「実際にトラブルが発生する前にメンテナンスができるので、ダウンタイム発生のリスクを軽減できます。またサービス体制も信頼でき、安心できるので、今後も大切な設備をおまかせしたいですね」と期待を寄せられます。石橋様は現在、IJプリンタがさらなる高速印刷に対応できるよう、スリッター機の改善・改良にも取り組まれています。

東邦フイルム株式会社
製造課主任 石橋雄介 様
お客さまのニーズに応え、多彩な製品を生み出している同社は、これからどのような企業をめざされるのでしょうか。
「まず働き方改革をさらに進め、当社で働いている人を幸せにすることが当面の私の目標です。そのためには、全員が自ら考えて仕事を改善し続けるとともに、「人間力」を高めていく職場環境づくりが大切です。また、お客さまやエンドユーザーから求められる前に、新たな包装資材を提案していく営業力も重要です。こうして現場と営業が力を合わせて、不可能な課題でも実現できる技術にチャレンジしていきたいと願っています」と三谷様。
さらに、「これからは拡大ではなく拡充をテーマとして、スマート&コンパクトな企業をめざすつもりです。すでに自家消費型太陽光発電システムを導入しましたが、さらに環境関連設備の投資を拡大し、印刷工場のエネルギーの大幅な節減とSDGsに貢献したいと考えています。不透明な時代ですが、設備機械の入れ替えや増設、DXも取り入れ、果敢に挑戦していきたいと思います」と力強く語られました。
日立産機システムは、包装資材のスペシャリストである同社の発展のお役に立てるよう、さらに邁進していきたいと考えています。

IJプリンタでフィルムのスリッター加工時に生産者名や認識番号などを印字

日立産業用IJプリンタ Gravis UX2 series(左) 印字ヘッド(右)

フィルムの高速回転にも対応し、ブレやかすれのない鮮明な印字を実現

ヘッド先端部自動洗浄で印字精度を保つ(左) FitLiveで遠隔監視・遠隔制御が可能(右)
お客さまのために力を合わせて —日立産機システム 製品関係者—
新鮮な野菜のトレーサビリティに貢献する産業用インクジェットプリンタ
今回ご紹介した東邦フイルム株式会社様の印刷工場では、ロール状の防曇フィルムをレタス用の包装紙としてカットする工程で、生産者名や生産者番号を印字するためにIJプリンタをお使いいただいてきました。2023年1月には、直感的な操作、印字ヘッドの自動洗浄機能があるなどメンテナンスしやすいことが特長のGravis UX2 seriesに更新していただきました。この工程では、5m/秒という速さでフィルムが送られるので、そのスピードに合わせて正確に印字できる性能が求められています。また、通常の印字検査装置では処理速度が追いつかないので、当社製のPLC(プログラマブルコントローラ)を使って、信号で印字確認をするシステムを構築しています。本製品はFitLiveサービスに対応しているので、今後は稼動状態を遠隔監視し、予防保全にもつなげていきたいと考えています。

株式会社 日立産機システム
四国サービスステーション
サービスグループ 技師 池内直矢
日立産機システム 四国支社/四国サービスステーション
〒761-8012 香川県高松市香西本町142-5
笑顔と誠実さ、そして技術力で
四国のお客さまを支えています
日立産機システム四国支社に置かれた四国サービスステーションでは、日立産機テクノサービスのスタッフを含む20人ほどのサービスエンジニアが、香川県と徳島県のお客さまにメンテナンスサービスをご提供しています。一方、高知県と愛媛県のお客さまを担当するのは、2020年愛媛県新居浜市にオープンした新居浜サービスステーションです。香川県や愛媛県の瀬戸内海沿岸部には工業地帯が広がり、化学や造船、製紙、繊維、食品関連などのお客さまが多く、空圧機器やクレーンシステム、IJプリンタなどをお使いいただいています。四国では、沿岸部以外にも多くのお客様の事業所に対応するため、2つのサービスステーションが県境を越え、協力してお客さまのご要望にお応えしています。
「四国サービスステーションのサービスエンジニアは、幅広いジャンルの製品に関する知識と技術を身につけてメンテナンスにあたっています。私自身もIJプリンタを得意としていますが、空気圧縮機やホイストのメンテナンスも手掛けることができます」と語るのは、主任技師の遠山匡昭。後輩技師の池内直矢も、ホイストやインバータのメンテナンスにも対応しています。「コンパクトな四国支社では皆の距離が近いので、営業スタッフとも密にコミュニケーションをとり、お客さまに適時適切なサービスをご提供できています」と池内。遠山は、「空気圧縮機、IJプリンタ、ポンプなど対応製品が拡大しつつあるIoT対応設備監視サービス『FitLive』を活用し、いつもお客さまの笑顔が見られるように、より高い品質のサービスをご提供していきます」と抱負を語りました。

四国支社を支える営業スタッフ、サービスエンジニア、そしてオフィススタッフ

支社の前には多くの営業車が並ぶ(左) 整備されたサービスエリア(右)

スタッフ間の距離が近いオフィス(左) IJプリンタのサービス室(電応室)(右)

サービスグループ 主任技師 遠山匡昭(左) IJプリンタのインクの粒子化を確認(右)
ご採用いただいた製品
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( vol.127・2023年5月掲載 )