
株式会社クボタ
代表取締役社長:北尾裕一
創業:1890(明治23)年
所在地:[本社]大阪市浪速区敷津東一丁目2番47号
[グローバル技術研究所]大阪府堺市堺区匠町1-11
従業員数:50,352名(2022年12月31日現在、連結)
事業内容:農業機械、エンジン、産業機械、パイプ・バルブ、素形材、環境施設、ポンプ、住宅機材、空調機器などの開発、製造、販売
https://www.kubota.co.jp/
地球規模の課題解決に貢献する製品、技術、サービスの提供をめざして
1890年の創業以来、食料・水・環境に関わる地球規模の課題解決に取り組む株式会社クボタ。創業者である久保田権四郎氏の「やればできる」「失敗を恐れるな」の信念のもと、日本で初めて水道管の国産化や農業の機械化を実現して以来、社会の発展に貢献。現在は、国内トップシェアのトラクタ、田植機、コンバインなどの農業機械をはじめとした機械事業や水環境システム事業などを、グループ一体となってグローバルに展開しています。
2022年10月26日に大阪府堺市に開設した同社の研究開発の新拠点「グローバル技術研究所」(Kubota Global Institute of Technology、以下「KGIT」)は、農業をはじめとするさまざまな分野で展開する、IoTやICT、AIに関する先端技術の強化と製品やソリューションへの実装、さらには電動化をはじめとしたカーボンニュートラルの実現に貢献する製品、技術、サービスの開発を推進する研究開発拠点です。

研究開発拠点のフラッグシップをイメージした外観(上)
広々としたエントランスロビー(下)
同社 研究勤労部 研究環境管理チーム チーム長の因幡俊宏様は、「KGITが開設された大きな理由は、これまで主力生産拠点の堺製造所内や国内各地に展開していた研究開発拠点を統合することで、研究開発業務の効率化、高度化を図り、イノベーションを加速するためです。当社では現在、農業機械の自動化、カーボンニュートラルを見据えた電動化や水素技術の開発などを進めていますが、KGITに集結した約2,700人のスタッフが、これらの重要な社会課題の解決に一体となって貢献することが期待されています」とKGIT開設の背景を語ります。
「例えば次世代研究開発部では、農業の効率化に貢献できる技術やシステムといったこれからの農業経営を支えるソリューションの開発を進めていますが、農業機械、建設機械の開発チームと同じ拠点内で仕事ができることが、シナジーを活かす上で大きなメリットとなっています」と因幡様。
さらにKGITは、世界各国・各地域のさまざまな市場ニーズに合った製品開発を強化するために、タイ、フランス、アメリカに設置された研究開発拠点のハブとして、各地域の研究成果や課題を集約し、それらをつなぐ、まさにグローバルな機能を担う技術研究所です。

株式会社クボタ 研究勤労部 研究環境管理チーム チーム長 因幡俊宏 様
先進の環境技術を導入した研究開発拠点のユーティリティをチーム一丸となって守る
KGITの特徴は、同社の研究開発拠点のフラッグシップ(旗艦)であることをイメージした斬新なデザインに表れていますが、同時に注目すべき点は「クロス」というコンセプトです。棟内の研究事務所部分はワンフロアで約1万8,000㎡もありますが、そこでは人と人、知と技、内と外をつなぐことをめざした空間デザインが実現されています。
またKGITでは、太陽光パネルや高効率空調、外光を採り入れた心地良い省エネ照明を採用することで、社員の皆さまが快適に働ける空間づくりを実現しています。例えば広い天井には採光のための窓が設置されていますが、外気の方が涼しい場合、一部の窓のカバーが自動で開き、外からの空気の流れをつくり、内部の熱を抜く仕組みにより省エネに貢献します。こうした取り組みにより、KGITの中心となる共用棟は「ZEB」(Net Zero Energy Building:ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を取得し、設計研究棟全体では「Nearly ZEB」を取得するなど、国内最大級のZEB取得建築物となりました※。
※:(一社)照明学会参照 https://www.ieij.or.jp/atarashii-shomei/2023/pg_35.html

株式会社クボタ 研究勤労部 研究環境管理チーム 作業長 押川謙治 様
因幡様をリーダーとする研究勤労部 研究環境管理チームは、イノベーションを推進する研究開発陣を支える安定したインフラ供給と働きやすい職場環境の維持、そして環境関連法遵守、環境事故防止、環境負荷低減などの環境管理という2つの大きなミッションのもと、施設の運用に必要な電気、空気、水といったユーティリティ関連の施設や設備機器の管理、運用を担っています。
「KGITは当社グループの研究開発拠点の中心として、さまざまな研究開発施設を集約した大規模な拠点なので、建物と施設を支える最新のインフラを整え、最適な運用を実現することは簡単ではありません。しかし、地球規模の課題解決に貢献することに全力を傾ける研究開発スタッフにとって働きやすい環境をつくることは大変ですが、大きなやりがいのある仕事です」と因幡様は誇らしげに語ります。
同チームの作業長である押川謙治様は、「私はユーティリティ管理において現場の統括とともに、空気圧縮機の日常管理や廃棄物の搬出管理、排水設備の管理も担当しています。建屋はもちろんのこと敷地も広大なので、開設以来、チーム長とともに一丸となってKGITの施設管理に全力をあげてきました」とこの1年間を振り返ります。

部門間の活発な交流により新たなイノベーションを創出する設計・研究棟の執務スペース

技術者たちが意見交換し、多角度からのアプローチを行う(左)
テストコースで急発進、停止など、走行性能をチェック(右)
研究開発の現場に欠かせない電気を供給する、超高効率のアモルファス変圧器
同チームがエネルギートータルマネジメントシステムによって管理する電気、空気、水の中で、電気と空気(圧縮エアー)は研究開発の現場に欠かせない重要な動力です。
第二種電気主任技術者である同チームの岡田眞様は、「KGITで使う試験装置の電気容量はどれも大きい上に、試験前の段取りとか調整のために使わない時間もかなり長く、しかも試験時には一斉に稼動することが多いので、電気使用量の上げ下げの波が激しくなることが特徴です」といいます。「そこで大量の電気を必要に応じて供給でき、しかも全体の電気使用量抑制に貢献できる変圧器として、特約店の扶洋さんを通じて日立産機システムさんのアモルファス変圧器を96台導入しました」と語る岡田様。因幡様は、「カーボンニュートラルの達成を使命とする当社の環境ビジョンのもと、KGITでは変圧器には無負荷損が極めて低い超高効率変圧器を導入することを入札時の条件としていました。またKGITは海に面しているので塩害に強い変圧器が求められますが、重耐塩塗装仕様に対応できたのは日立産機システムさんだけでした」と機種選定の経緯をご紹介されました。岡田様は、「当社内の電気主任技術者による勉強会を通じて、KGITの建築設計コンペが始まる前から、アモルファス変圧器の性能について知見を得ていたことも同機を選んだ背景にありましたね」と語ります。

株式会社クボタ 研究勤労部 研究環境管理チーム 岡田眞 様
KGITには実機を走らせるテストコースがありますが、今後はテストコースに加えて屋内の台上試験室を使った試験を大幅に強化して、開発期間を短縮することをめざしています。因幡様は、「多くの電気を使う台上試験棟はKGIT内に4つあり、対応するサブ変電所は11ヵ所。すべて超高効率のアモルファス変圧器を設置しています。また今後本格的に運用する低温試験室では、極寒地向けの製品の性能や耐久性を試験するためにやはり多くの電気を使うので、ここでもアモルファス変圧器を導入しています」と試験設備に必要な変圧器の配置について説明されました。
KGITは開設して約1年が経過しましたが、研究開発に使う装置にはこれから導入されるものもあります。そのためサブ変電所は、今後の電気容量の増加を見越して配置されています。「大きな省エネ効果をもたらすアモルファス変圧器が、その真価を発揮するのはKGITが本格稼動するこれからだと思います」と、岡田様からは期待の言葉をいただきました。

サブ変電所に設置された日立アモルファス変圧器。重耐塩塗装が施されている

共用棟屋上のサブ変電所

免震構造のキュービクルの架台(左) 重耐塩塗装が施されたコンデンサ(右)
試験装置を駆動する圧縮エアーを負荷変動に対応して供給する空気圧縮機
もう一方の動力源となる圧縮エアーの使い方は棟ごとに違います。研究開発現場ではエアガンによるブロワとして使われ、耐久試験などをする台上試験棟では試験装置を駆動する動力源となります。そこで採用されたのが、高効率で負荷変動に柔軟に対応するインバータ制御機やオイルフリースクロールタイプの日立産機システム製の18台の空気圧縮機です。
「広大なKGITの構内で、圧縮エアーを使わないところはありません。機種選定にあたり重視した点は、自動制御で、しかもしっかりと負荷に追従して稼動できるかどうかと、遠隔監視ができるかどうかでした」と因幡様。「試験室の数は100を超えますが、常時稼動しているわけではなく、圧縮エアーを供給する空気圧縮機にかかる負荷は大きく変動します。したがって十分な供給能力と省エネ性能を両立することが最大のテーマで、運転の効率性を追求するために台数制御盤を効果的に組み合わせて使っています」と語ります。

株式会社クボタ 研究勤労部 研究環境管理チーム 道脇脩斗 様
実際に空気圧縮機の管理とメンテナンスを担当する同チームの道脇脩斗様からは、「広い構内に点在するコンプレッサー室には自転車を使って行き来します。遠いところでは5分以上かかりますが、全機が遠隔で常時監視が可能な『FitLive』サービスに対応しているので、管理業務の効率化を図ることができました。また日立産機システムさんのメンテナンスサービスは、安定稼動と予防保全につながるのでありがたいですね」との評価をいただきました。
「当チームは、『豊かな社会と自然の循環にコミットする“命を支えるプラットフォーマー”』をめざす革新的な製品開発に貢献できるように、KGITのインフラの安定稼働や動力の安定供給、環境保全、環境負荷低減を力強く進めていきます。新しい研究開発拠点がその実力を発揮するのは、開設1年を経てまさにこれからです。他の生産拠点でも日立製のさまざまな製品を導入していただくなど、扶洋さんとは長いお付き合いがあります。両社には、カーボンニュートラルの達成に貢献できる製品やシステムを活かして、当社の事業発展にご協力いただきたいと思います」と因幡様は語ります。
日立産機システムは、今後とも株式会社扶洋とともに、社会課題を解決する製品、技術、サービスの提供をめざすKGITの発展のお手伝いをさせていただきたいと願っています。

共用棟のコンプレッサー室に設置された日立オイルフリースクリュー圧縮機

日立台数制御盤(左) 「FitLive」で遠隔監視を実現(右)
お客さまのために力を合わせて —日立産機システム 製品関係者—
先進の研究開発拠点でカーボンニュートラル達成に貢献する96台のアモルファス変圧器
株式会社クボタ様には、以前より超高効率を実現したアモルファス変圧器を高く評価していただき、特約店の扶洋さんの協力を得て中条事業所での勉強会にご参加いただいたことがあります。この勉強会を通じて製品に関心を持っていただくとともに、その性能について深くご理解いただくことができました。実際に数多くのアモルファス変圧器を採用いただいたことで、株式会社クボタ様が追求するカーボンニュートラル達成に貢献できることをうれしく思っています。
アモルファス変圧器は、環境と省エネに貢献できる素晴らしい製品です。今回の成果で自信を深めることができたので、これからもその価値を幅広いお客さまに伝えるとともに、環境調和型変圧器「Superアモルファス奏(かなで)」もお客さまにアピールすることを通じて、社会が抱える課題解決に貢献できるよう努めていきます。

株式会社 日立産機システム 関西支社
第二営業部 配電システムグループ
主任 池原真(左)
同グループ
主任 山淵直樹(右)
遠隔監視サービス「FitLive」を活用し、リカーリングビジネスモデルの展開をめざします
グローバル技術研究所様の案件では、入札仕様において高い省エネ性能の空気圧縮機が位置づけられていたこともあり、9台のオイルフリースクリュー圧縮機と9台のアモルファスモータ一体型オイルフリースクロール圧縮機をご採用いただきました。
受注活動が成功したのは、扶洋さんと当社がお客さまの技術的仕様を把握し、ゼネコン、サブコンとともに適切なご提案ができたからだと思います。運用開始後は、広大な敷地に点在するコンプレッサー室とつないだ遠隔監視サービス「FitLive」が効果を発揮し、お客さまの維持管理業務の効率化に貢献しています。
グローバル技術研究所様では、空気圧縮機は主に多くの試験室で使われている試験装置の動力源として活躍しています。今回、大きな負荷変動に対しても安定して稼動しているとお聞きし、大変うれしく思っています。
株式会社 日立産機システム 関西支社
第三営業部 空圧システム第一グループ
主任 矢部泰介(左)
同部 空圧システム第二グループ
増田剛也(右)

お客さまの社風に学び、ともに成長できるベストパートナーであり続けます
株式会社クボタ様は、堺製造所をはじめ堺臨海工場など、これまで多くの拠点でお付き合いをいただいている大切なお客さまです。今回のグローバル技術研究所様に関わる大型案件に関しては、受注に必要な情報をいち早く入手し、当社のビルシステムグループやゼネコン担当部隊と連携するとともに、これまでの経験を活かして仕様書を読み解き、お客さまのニーズに的確にお応えできる体制を整えて臨みました。株式会社クボタ様はモノづくりについては厳しい姿勢を貫く社風がありますが、その分、プロジェクトを一緒にやり遂げることができた時には、大きな充実感がありました。グローバル技術研究所様の開設で得た実績は、今後、他の工場での営業活動に良い影響があると感じています。今後とも株式会社クボタ様が大切にしている「5ゲン主義」を学び、お客さまを支えて、ともに成長できればこれに過ぎる喜びはありません。
株式会社扶洋
取締役部長 産業システムグループ・営業推進グループ
関東ブロック 梶善則(右)
産機システムグループ
課長 宮脇宗憲(左)

ご採用いただいた製品
日立変圧器
SuperアモルファスZero
圧倒的な省エネ性能と高い耐震性を実現した超高効率変圧器
変圧器は24時間365日、休みなく稼動し、その間電気を少しずつロスしています。ほんのわずかでも、積み重なれば膨大なエネルギー損失になります。「SuperアモルファスZero」シリーズは、待機電力が極めて低いため、トップランナー変圧器2014の(第二次判断基準)をはるかに超えた、「超高効率」を発揮。「SuperアモルファスZero」シリーズは、油入変圧器で3タイプ、モールド変圧器で2タイプをラインアップ。その他、お客さまのニーズに合わせて、さまざまなシリーズを取り揃えています。
主な特長
1. アモルファス合金を変圧器の鉄心に応用
けい素鋼鈑に比べて無負荷損(ヒステリシス損+渦電流損)を約1/5※に低減。
※当社現行機比。機種により一部異なります。
2. トップランナー基準値を上回る省エネルギー性能
損失電力−37%[Sシリーズ 三相300kVA、50Hz、等価負荷率40%の例(当社比)]
3. 耐震性能、相対変位抑制への対応
地震災害における耐震性能を考慮し、耐震2Gでの対応を強化。

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日立圧縮機
オイルフリースクロール圧縮機
■ アモルファスモータ 一体型オイルフリースクロール圧縮機
コンパクトで省エネ、しかもクリーンで使いやすい先進モデル
世界で初めて※1IE5※2相当のアモルファスモータを圧縮機本体と一体化した「アモルファスモータ 一体型オイルフリースクロール圧縮機」。モータそのものを可能な限り小型化した上、圧縮機本体と一体化し、ベルトレスで飛躍的なコンパクト化を実現しました。狭いスペースや作業現場のすぐそばなど、従来置けなかったような場所にも設置が可能。生産性や省エネ、リスク回避などさまざまな現場ニーズに貢献します。また、吐出し圧縮空気中のオイル含有量は、最高品質等級の「クラスゼロ」レベルを達成※3しました。
※1 2017年1月現在 自社調べ。
※2 IE5:国際電気標準会議(IEC)のIEC60034-30-2で現在策定議論中のモータのエネルギー効率ガイドラインで最も高いレベルのもの。
※3 ISO 8573-1(圧縮空気-汚染物質および清浄等級)に基づき、日立オイルフリースクロール圧縮機の吐出し圧縮空気中の油分濃度測定を実施。

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日立圧縮機
オイルフリースクリュー圧縮機
■ オイルフリースクリュー圧縮機 NEXTⅢ series
省エネ性能と充実のIT機能で生産現場を支える先進の空気圧縮機
高精度の歯面研削で加工されたローターの素材には、耐食性と耐久性に優れた特殊ステンレス鋼を採用。また、単段機で300℃以上、二段機でも200℃以上になる吐出し温度にさらされるローターは大きく熱膨張しますが、この熱膨張をあらかじめ見込んで運転中に最適な隙間が確保できるように、日立独自の高性能ロータープロファイル「3次元補正技術」が適用されています。さらに、ローターには金属間での隙間をさらに縮小し、性能向上を図るために、300℃を超える過酷な環境でも十分な性能を有する固体潤滑被膜を塗装しています。

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( vol.131・2023年11月掲載 )