空気圧縮機用の主要部品をはじめとする高い加工精度を誇る製品群(左)日立給油式スクリュー圧縮機(右)
株式会社 三陽機械製作所は、東京都大田区の町工場の力を世界に発信するために、創業以来、切削・研磨技術をたゆむことなく進化させてきました。材料調達から熱処理、表面処理、メッキ処理、塗装、研磨加工までの工程をワンストップで手がけ、お客さまである産業機器メーカーの要望に応えてきました。培った技術は、量産品における高い品質、加工精度、短納期を誇るとともに、お客さまの試作品の開発も支えています。今回は、同社の本社工場と山形県米沢市の工場で活躍する、金属加工に欠かせない空気圧縮機などの日立産機システムの製品をご紹介します。
画像1: 【お客さま導入事例 vol.175・空気圧縮機】
株式会社 三陽機械製作所

精密金属加工に特化した、
独自の生産技術を誇る下町のプロ集団
画像: 本社・本社工場(上) 米沢工場(下)

本社・本社工場(上) 
米沢工場(下)

株式会社 三陽機械製作所

代表取締役:黒坂浩太郎
設立:1953年(昭和28)年
所在地:
[本社・本社工場]東京都大田区千鳥2-37-17
[米沢工場]山形県米沢市アルカディア1-808-25
従業員数:40名
事業内容:産業機器の試作および量産部品の精密機械加工
https://sanyokikai.co.jp/

画像: 株式会社 三陽機械製作所 代表取締役 黒坂浩太郎 様

株式会社 三陽機械製作所
代表取締役 黒坂浩太郎 様

創業以来80年近く磨いてきた切削・研磨技術で
産業機器メーカーを支える

 株式会社 三陽機械製作所は1948(昭和23)年に創業、1953年に設立されました。現社長 黒坂浩太郎様の祖父にあたる創業者の黒坂清様は、戦後間もなく九州から上京し、下町工場が軒を並べる東京都大田区に切削・研磨技術を活かした機械部品工場を立ち上げ、同氏の豪快な個性が反映された会社を築いたといいます。

 同社は、創業当時から大手産業機器メーカーからレシプロコンプレッサーのバルブ生産を受注し供給していました。時は高度経済成長が始まる前、まさに激動の時代にあって創業者の格闘は続きましたが、黒坂浩太郎様の父にあたる黒坂浩様が二代目の代表取締役に就任してからは、汎用旋盤が主流だった中、機械加工におけるNC(数値制御)化を大胆に進めて、毎年1台ずつ加工機を入れ替えて自動化を推進。大きく飛躍するきっかけとなりました。これで職人の勘を頼りに部品を切削していた時代を脱して、NC化によって精密な部品がつくれるようになり、工数をかけずに一つの部品を素早く低価格でお客さまに提供することで競争力を高めていきました。2009年には黒坂浩太郎様が三代目代表取締役に就任。以来、「モノづくり企業」のプロ集団として、切削・研磨技術を高めながら、「創意工夫」の精神でより良い製品をお客さまに提供し続けることで、信頼される企業として成長してきました。

 「私は、小学生の時から自宅の隣の工場にしょっちゅう出入りし、父や職人さんの働く姿を見て育ったので、将来は工場を継ぐものだと当然のように思っていました。中学生になると夏休みにはボール盤を使って現場作業を手伝うようになりました。工場の人たちが親切に教えてくれたことをよく覚えています」と黒坂様。「100分の1mm、1,000分の1mmの精度で加工された部品と部品を合わせるとスーッと一つになった時にはすごく感動したので、金属加工がただただ楽しかったのだと思います」。この言葉から、同社の成長を支えてきたのは三代にわたるリーダーの情熱と職人魂、技術であることが伺い知れます。

 黒坂様が社業を継いだ当時は、創業時と比べると空気圧縮機の主流がレシプロからスクリューに代わったことで受注が激減していました。そこでスクリュー圧縮機用の機能部品の受注獲得に奔走。経営状態を好転させると、まだ産業界に広がっていなかったオイルフリー空気圧縮機の構造部品の生産を受注することで成長を加速させ、現在は7.5〜100kWの空気圧縮機の機能部品と構造部品を中心に、電気チェーンブロックの部品、汎用ポンプの回転部品、アモルファスモータの筐体など、多彩な製品を手がけています。

2つの拠点の異なる強みを活かして勝ち取った
お客さまの信頼

 同社では、東京都大田区に構える本社工場を研究開発・生産の拠点とし、上杉氏の城下町として江戸時代から産業を育成してきた山形県米沢市に開設した新工場を量産加工の拠点として事業を展開。本社工場のベテランと米沢工場の若手が互いに刺激し合って新しいモノづくりに取り組み、品質、価格、納期、部品供給の安定性を強みとしています。

 黒坂様は、「本社工場の特徴は、お客さま先での製品開発に必要な材料のテストピースづくりを、設計・開発段階からお手伝いできる技術力にあります。例えば、空気圧縮機用のアルミ製ケースは鋳物でつくりますが、通常、試作用の鋳物の型を起こし、鋳造部品を加工し仕上げて、最後は組み立てて納品することが求められます。しかし当社では、20年以上前から5軸マシニングセンタを導入したことで、鋳物の型をつくることなくアルミのブロックを正確に切削することで部品を完成させることができます」と語ります。試作段階における度重なる設計変更にも対応でき、短納期、低コストで部品の試作ができる同社の技術力は、メーカーの開発・設計者を大いにサポートしてきたといいます。

画像: 設備監視システム「FitLive」を確認する 株式会社 三陽機械製作所 営業部副主任 青田光弘 様

設備監視システム「FitLive」を確認する
株式会社 三陽機械製作所 営業部副主任 青田光弘 様

 「生産技術に関しては、両工場とも切削と研磨を一貫加工できる強みがあります。創業以来、切削加工と研磨加工をともに手がけ、経験とノウハウを積み重ね、切削と研磨をシームレスに仕上げる加工技術を磨いてきたからです」と黒坂様。2つの工場がそれぞれ切削加工と研磨加工の機能を有していることで、それぞれの工場内で工程を完了できるので納期短縮と品質確保に貢献できる上、両工場での連携した加工作業も容易にしています。さらに、部品加工を支える治具を協力会社に任せるのではなく、設計から開発までを自ら行い、治具そのものを内製化したことで、独自のノウハウ、技術力を高めてきました。

 現在、本社工場と米沢工場では、日立産機システム製の空気圧縮機や天井クレーンシステムなどが活躍しています。「マシニングセンタなどの工作機械では、圧縮エアーによって切粉を飛ばしながら特殊加工する必要があるので、信頼性の高い空気圧縮機が欠かせません。降雪地にある米沢工場では、22kWの屋外型スクリュー圧縮機2台が安定して活躍しています。また天井クレーンシステムは、本社工場、米沢工場ともに重量物である治具を安全に搬送するために使っています」と、日立製品の活躍ぶりを紹介していただきました。

画像: 立体マシニングセンタ

立体マシニングセンタ

画像: NC施盤で精密に加工された製品をチェック

NC施盤で精密に加工された製品をチェック

画像: NC施盤(手前)と複合加工機(奥)

NC施盤(手前)と複合加工機(奥)

画像: 同時5軸縦型マシニングセンタなどの設備を揃えた本社工場

同時5軸縦型マシニングセンタなどの設備を揃えた本社工場

画像: 日立給油式スクリュー圧縮機 NEXTⅡ series(左)とG Series(右)

日立給油式スクリュー圧縮機
NEXTⅡ series(左)とG Series(右)

画像: 日立給油式スクリュー圧縮機 G Series(左) 日立電気チェーンブロック(右)

日立給油式スクリュー圧縮機 G Series(左)
日立電気チェーンブロック(右)

モノづくりの大切さ、精密金属加工の奥深さを
次世代に伝えるために

 同社では、2つの拠点で技を磨いている若い社員に、モノづくりの精神を伝え、高度な技術を伝えることに取り組んでいます。

 「まずはOJTに力を入れて、熟練技術者から若い世代への技能継承に取り組んでいます」と黒坂様。その上で、NC化だけではなし得ない高い加工精度をいかに実現するかを伝えたいといいます。「普段から自らチャレンジし、自ら考えながら仕事をしようと強調しています。指示を待つのではなくて、創造力と想像力を活かして取り組み、その結果から生じた誤差を厳密に評価することで材料と加工機の癖を読み解くことが大切です。感覚とか手触りではなく、自分が入力した回転数、速度などによって加工した部品を自らがしっかり計測する経験を積み重ねることで、データに裏付けられた技術力が高まるからです」。

 今、同社では蓄積してきた技術を活かして、世界各地の産業機器メーカーから受注できるよう積極的な営業活動を展開するとともに、部品にとどまらず完成品の受託生産ができる体制づくりも検討しています。

 日立産機システムは、常に人を育て、技術を高めてきた同社のさらなる発展に貢献し、下町のモノづくりをともに支えていきたいと考えています。

画像: 最新鋭のマシニングセンタがずらりと並ぶ

最新鋭のマシニングセンタがずらりと並ぶ

画像: 複合NC施盤

複合NC施盤

画像: 屋外仕様の日立給油式スクリュー圧縮機 NEXTⅢ series

屋外仕様の日立給油式スクリュー圧縮機 NEXTⅢ series

画像: 株式会社 三陽機械製作所 製造部(NC旋盤) 須貝大樹 様

株式会社 三陽機械製作所
製造部(NC旋盤) 須貝大樹 様

画像: 日立電気ホイスト

日立電気ホイスト

お客さまのために力を合わせて —日立産機システム 製品関係者—

株式会社 日立産機システム 営業統括本部 東北支社

 当支社は、株式会社 三陽機械製作所様が2018年に米沢工場を開設した時からお付き合いをいただいています。当初、空気圧縮機は本社工場から移設したものが使われていましたが、事業の発展に合わせて出力22kWの給油式スクリュー圧縮機2台を導入していただきました。弊社製品をアピールされる目的で屋外機をご採用いただいたので、凍結や積雪に対する対策を施しました。今後も空気圧縮機の安定稼働と省エネルギーの実現を通じて、お客さまの発展に貢献してまいります。

画像2: 【お客さま導入事例 vol.175・空気圧縮機】
株式会社 三陽機械製作所

精密金属加工に特化した、
独自の生産技術を誇る下町のプロ集団

営業部
空圧システムグループ
部長代理 松田洋一

   

世界に翔び立て! 下町ボブスレー

画像: 2025年7月24日に行われた「イタリア冬季五輪向け新型機製作説明会」の記者会見の様子

2025年7月24日に行われた「イタリア冬季五輪向け新型機製作説明会」の記者会見の様子

 「下町ボブスレープロジェクト」をご存じですか。冬季五輪の競技種目でもあるボブスレーは欧米では伝統と人気があることから、強豪国は企業や国が総力を挙げて開発したソリを駆使して競技に臨んでいます。例えばアメリカ代表のソリ開発はBMWが支援し、イタリア代表はフェラーリが協力。そんな厳しい世界を相手に、東京都大田区の小さな町工場が中心となり、世界のトップレベルのチームと競い合う日本製のソリをつくり上げることで下町のモノづくりの力を世界に発信しようというプロジェクトです。
 しかし、2013年、日本代表チームは外国製のソリを採用することになったので、ターゲットを他国の代表チームに変更。その結果、2016年にジャマイカ代表チームが採用を決定しましたが、最終的にはまたしても他国製のソリが採用されることになり、プロジェクトメンバーは涙を飲みました。それでもメンバー達は開発の手をゆるめることなく新型機を開発し、2022〜2023年にかけてはイタリア代表チームの選手が同機を採用して、国際大会で何度も好成績をあげることができました。
 同プロジェクトの委員長である株式会社 三陽機械製作所 代表取締役の黒坂浩太郎様は、「イタリアチームの監督から、次期冬季五輪が母国開催であることから、世界トップクラスのチームを脅かすようなソリを新たに開発してほしいとのオファーがありました。2025年4月にテストをしたら下町ボブスレーが一番速かったので、3人の代表選手全員のソリを開発することになり、2025年は日本と開発拠点のドイツを何度も往復しました」と語ります。
 三陽機械製作所はプロジェクト発足時からソリの重要な部品を開発・製造してきましたが、今回の新型機でもフレームの部分を一体の金属の無垢材から100分の1mmの精度で削り出すことでつくり上げています。溶接を使わないのでひずみが一切ない上、左右のバランスが良く、軽量化も実現しているといいます。
 「今回こそ夢を現実のものにして、下町の力を世界に向けてアピールしたいと思います。これまでのご支援に感謝するとともに、さらなるサポートをお願いできればありがたいです」と力強いメッセージを寄せていただきました。

下町ボブスレープロジェクト 最新情報
https://www.shitamachibob.tokyo/

画像: ソリの性能を左右する加工精度について語る黒坂社長(左) 2025年9月に完成したイタリア代表向け新型ソリ3台(右)

ソリの性能を左右する加工精度について語る黒坂社長(左)
2025年9月に完成したイタリア代表向け新型ソリ3台(右)

製品の詳細や導入に関するご相談はこちらから

( vol.144・2026年1月掲載 )

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