日本では1873(明治6)年、時刻制度が不定時法から現行の定時法へ変更され、和時計から西洋式時計への転換が急速に進んだ。服部金太郎が1892(明治25)年に服部時計店の工場として設立した精工舎では、懐中時計製造で精密加工や組立技術を培い、腕時計製造に必要な技術を集積。そして1913(大正2)年、服部時計店は国産初の腕時計「ローレル」を発売した。
戦後になるとそれまで培ってきた時計技術の粋を結集し、1960(昭和35)年に「初代グランドセイコー」が誕生。国産では初めてスイス・クロノメーター検査基準優秀級規格と同等の高精度を実現した。1969(昭和44)年には世界初のクオーツ式腕時計「クオーツ アストロン35SQ」を発売。水晶振動子や時計用IC、ステップモーターなど独自に開発した技術が搭載され、日差±0.2秒、月差±5秒と飛躍的に精度を向上させた。米国スミソニアン博物館にレプリカが常設展示され、2018(平成30)年には重要科学技術史資料(未来技術遺産)にも登録された。
これらの腕時計は、日本が誇る精密機器技術の発展史を語る象徴的な遺産である。
(日本機械学会 機械遺産 第66号)
引用:日本機械学会「機械遺産」 機械遺産 第66号
https://www.jsme.or.jp/kikaiisan/heritage_066_jp.html
協力・参考:時と時計の博物館 セイコーミュージアム銀座 https://museum.seiko.co.jp/
( vol.141・2025年7月掲載 )