今では80%以上の家庭に普及し、清潔で快適な暮らしに欠かせない存在となった温水洗浄便座の歴史は、1960年代に国内のトイレメーカーが海外の洗浄便座を輸入したことから始まる。その後、1978(昭和53)年に東洋陶器株式会社(現 TOTO株式会社)は自社開発を決意。開発にあたっては、洗浄性能や使い勝手などを日本人に合ったものにするため、おしりの洗浄ポイントや水量・水温、噴射角度など必要な多くのデータを社内で一から集めた。このデータをもとに、温水の温度制御技術や専用熱交換器の開発、洗浄ノズルの格納方法の検討など多くの新技術が開発され、1980(昭和55)年に発売にこぎつけたのが、この「ウォシュレット※G」である。製品名は「レッツ・ウォッシュ(洗いましょう)」の語順を逆にしたものだ。発売後は、テレビCMの効果とも相まって急速に普及が進み、日本人の生活様式やトイレの設備環境を一変させた。その後も新機能やデザインなどの進化を遂げ、2022(令和4)年には累計出荷台数6,000万台を突破。現在では「ウォシュレット」は温水洗浄便座の中で最も知名度の高い商品となっている。
※「ウォシュレット」はTOTO株式会社の登録商標
(日本機械学会 機械遺産 第55号)
所蔵 : TOTOミュージアム
引用 : 日本機械学会「機械遺産」 機械遺産 第55号 https://www.jsme.or.jp/kikaiisan/heritage_055_jp.html
協力・参考 : TOTO株式会社 https://jp.toto.com/
( vol.140・2025年5月掲載 )