パイロットファインテック株式会社は、設立以来プラスチック射出成形分野を中心に発展を遂げ、近年はパイロットグループの筆記具、精密プラスチック部品のメーカーとして、世界的に人気のフリクションシリーズなどを生産し、事業拡大を図ってきました。現在同社は社会への責任を果たすとともに、さらなる成長のため、生産工場で使用するエネルギーの大幅な削減や環境に配慮した樹脂材料の導入など、新たな生産技術の開発にチャレンジしています。今回は、同社の省エネルギーの取り組みに貢献する日立産機システムの空気圧縮機の活躍ぶりをご紹介します。
※フリクションは、株式会社パイロットコーポレーションの登録商標です。
画像1: 【お客さま導入事例 vol.170】
パイロットファインテック株式会社

樹脂成形のプロフェッショナルとして、
優れた精密成形技術をさらに磨く

パイロットファインテック株式会社

代表取締役社長:服部直基
設立:1948(昭和23)年
所在地:愛知県豊田市本徳町東屋敷859番地9
従業員数:130名
事業内容:合成樹脂、成形および加工、印刷・転写・表面加飾、射出成形用金型設計・製作
https://www.pilotft.co.jp/

画像: パイロットファインテック株式会社 生産技術部 部長代理 甲斐敬様

パイロットファインテック株式会社
生産技術部 部長代理 甲斐敬様

一貫生産体制、精密成形、2材成形技術の強みを活かした事業展開

 緑が多く残る愛知県豊田市の郊外に拠点を構えるパイロットファインテック株式会社は、1948年に設立された東海化学工業株式会社を前身とし、樹脂精密成形技術の強みを活かして1949年からパイロットインキ株式会社との取引を開始。2023年7月、パイロットファインテック株式会社に社名を変更し、パイロットグループの一員として筆記具用のプラスチック射出成形部品を生産しています。

 より精密で優れた(=Fine)技術(=Technology)を提供するとの想いを込めた社名は、同社がよって立つ技術的基盤と、それを活かす人の力を象徴していると語るのは、同社の生産技術や生産設備、ユーティリティ関連設備の維持管理、さらには成形条件の管理を担う同社 生産技術部 部長代理 甲斐敬様です。「当社には、プラスチック射出成形の難しさを熟知した上で、高い品質を実現できる技術を備えた人材が揃っています。だからこそ、パイロットグループの重要な生産拠点としての役割を担うことができていると思います」と語ります。

 例えば樹脂材料をとってみると、同じ材料でも微妙に異なることで、成形中に挙動が振れることがあるといいます。また自然環境に配慮し、資源循環に貢献するために再生樹脂を使うと、バラつきが大きく、成形品質に影響を与えることがあります。このように成形中の材料の挙動が不安定になっても、厳しい品質基準に合わせたプラスチック部品を送り出すためには射出成形機を操作する人材に高い技術力が求められます。

 「当社では、射出成形・印刷から部品の組み立てまでをトータルに行い、一貫した生産体制を構築することで優れた品質とコストダウン、スピードアップを実現しています。また、大小さまざまな射出成形機と印刷機を揃え、多様化・高度化するニーズにお応えしています」と甲斐様。稼働している射出成形機の中には、1回の成形で2色の樹脂を同時に扱って一緒に成形できる2材成形ができるものがあり、強みの一つとなっています。さらに射出成形機の保有台数は100台を超え、同業社と比べても多いことからパイロットインキ株式会社からの受注を大きく伸ばすことにつながっています。

 「この生産技術面の強みを活かし、製品として表現してくれるのが、当社が誇る人材です。プラスチック射出成形技能士の資格を持つ技術者が多く、特級4名をはじめ、1級7名、2級15名と、企業規模から見ればまれなほど多くの有資格者が在籍しています。技術の基盤は人にあるので、会社をあげて常に若手や後進の育成に努めています」と、自らもプラスチック射出成形特級技能士の資格を有する甲斐様は胸を張ります。

生産ラインの自動化、効率化とともに、省エネ化をさらにステップアップさせる

 同社にとって、大きな発展の契機となったのが、パイロットインキ株式会社が開発し、株式会社パイロットコーポレーションが2006年から販売している、こすると書いた文字が消えるフリクションシリーズのボールペンがメガヒット商品へと成長したことです。現在、筆記具のボディなどの各外装部品、ノック作動用の機構部品など、パイロット製品のラインアップに応じた多くのプラスチック部品を生産し、中でもフリクションシリーズのプラスチック部品はその多くを生産しているといいます。

 甲斐様は、「当社の成形ラインでは、常時300型ぐらいの金型を駆使してプラスチック部品を生産し、その後工程の熱転写印刷ラインでは透明なプラスチック製のボディに色鮮やかなフィルムを転写しデザイン性を高めています。いずれのラインもロボットを導入するなど自動化を進めることで生産量の拡大に応じるとともに、省エネ化を追求してきました」とこれまでの取り組みを紹介されました。「しかし、生産設備の更新だけでは省エネ効果が頭打ちになりつつあると感じて注目したのが、各ラインに圧縮エアーを供給する空気圧縮機です。射出成形機のシャットオフ機構の駆動や射出成形機から成形品を取り出すロボットアームによる吸着や把持、原料ペレットの輸送関係も含めて、工場で使う動力のかなりの部分を圧縮エアーが支えているからです。そこで2023年に長年お付き合いのある日立特約店の東朋テクノロジーさんに相談したところ、日立産機システムさんとともにすぐに現地調査と計測・診断を実施し、空気圧縮機の更新や省エネに直結する台数制御による運用などを提案していただけました」と甲斐様。提案書には、安定した圧縮エアーの供給とエネルギー原単位の低減を、5台の空気圧縮機を最大限効率的に運用することで同時に実現したい、という同社の願いへの回答が用意されていました。また、出力75kWのスクリュー圧縮機3台の更新と合わせた合計5台の空気圧縮機と他社製のドライヤーなどの補機を含む長期的な保守・メンテナンス契約も締結していただき、2024年8月から省エネ、省人、省コストへの取り組みが始まりました。すでに同年8月〜12月にかけての電力使用量は2万kWh/月の削減ができ、空気圧縮機で約4%の低減を実現することができました。

画像2: 【お客さま導入事例 vol.170】
パイロットファインテック株式会社

樹脂成形のプロフェッショナルとして、
優れた精密成形技術をさらに磨く
画像: 射出成形されたプラスチック部品を取り出し整列・梱包する自動化ライン

射出成形されたプラスチック部品を取り出し整列・梱包する自動化ライン

画像: 印刷されたフィルムを成形品の表面に押し付けて転写印刷する

印刷されたフィルムを成形品の表面に押し付けて転写印刷する

画像: 工場には多くのプラスチック射出成形機が並ぶ

工場には多くのプラスチック射出成形機が並ぶ

地球環境に優しいプラスチック成形企業をめざし、新たな生産技術の開発に挑戦

 同社では、更新後の空気圧縮機が標準対応している遠隔監視が可能な設備監視サービス「FitLive」を活用し、日常点検業務の省力化とさらなる省エネ、効率化につなげていきたいと考えています。「圧縮エアーの流量をはじめ、温度、圧力、電流などの稼働状況の見える化ができたら、各生産設備の使用量の把握とムダなブローの廃止などによる負荷の削減を実施したいと考えています。また、メインで稼働している3台の空気圧縮機と別棟にある2台の配置方法や配管ルート、配管径も見直すことによって最適解を求め、圧力をもっと落とすことを検討したいと思っています」と甲斐様は、さらなる省エネに向けた取り組みを構想されています。「現在0.63MPaの圧力で吐出しているエアーを0.55MPaに抑えることができれば、かなりの省エネになります。工場のエネルギー源として重要な圧縮エアーの使い方をもっと高めたいので、日頃から省エネに向けたアイデアをいただいている東朋テクノロジーさんと省エネ診断や丁寧な設置工事を行っていただいた日立産機システムさんには、今後とも相談に乗っていただくとともに新たなご提案を期待しています」とご評価をいただきました。

 甲斐様は、「今後もプラスチック射出成形技術を進化させることに軸足を置きつつ、世の中の皆さまにプラスチックに対してクリーンなイメージを持っていただけるように、バイオプラスチックや再生プラスチックを積極的に活用するとともに、再資源化のスキルを磨き、地球環境に優しいプラスチック成形企業になっていくことをめざしています」と抱負を語ります。その実現のためには、現在は扱うことが難しい樹脂を自由に使いこなすことができる新しい生産技術への挑戦が欠かせないといいます。さらに筆記具以外の産業分野に貢献できる製品の拡大も、今後の成長に向けた大きな課題です。「すでにキャスターの車輪、シェービング用品の部品、家庭用浄水器の部品などを生産していますが、今後は精密成形と2材成形などの技術をより強化し、高付加価値を追求して幅広い業界に向けて製品を提供していきたいと思います」と甲斐様。

 東朋テクノロジーと日立産機システムは、今後の成長と進化をめざす同社にとって、さらなる省エネに貢献できる製品・システム、ソリューションをご提案するとともに、互いの力を結集してご期待にお応えしてまいります。

画像: 設備監視サービス「FitLive」で稼働状況を確認する

設備監視サービス「FitLive」で稼働状況を確認する

画像: 更新後の出力75kWの給油式スクリュー圧縮機

更新後の出力75kWの給油式スクリュー圧縮機

画像: 清潔なコンプレッサー室に並ぶ3台の空気圧縮機

清潔なコンプレッサー室に並ぶ3台の空気圧縮機

画像: 操作が容易な台数制御盤

操作が容易な台数制御盤

画像: 実務を行う生産技術部 係長の渡邊信也様(左)と 打ち合わせをする甲斐様

実務を行う生産技術部 係長の渡邊信也様(左)と
打ち合わせをする甲斐様

お客さまのために力を合わせて —日立産機システム 製品関係者—

東朋テクノロジー株式会社

 当社は、ファインメカ、エレクトロニクス、環境エンジニアリング、産業都市システムの4つの事業分野で、多くのお客さまの事業発展を支えてきました。パイロットファインテック株式会社様は、その中でも30年以上もお付き合いをいただいている大切なお客さまです。同社では日立空気圧縮機を長年お使いいただいており、当社のメンテナンススタッフがその保守、維持管理をお手伝いしてきました。
 今回は、空気圧縮機の台数制御と他社製の警報装置を組み合わせた監視システムを構築するなど、新しい取り組みにも挑戦させていただきました。今後も空気圧縮機のメンテナンスとともに、省人化、自動化や、電力、空調などの面でも省エネのお手伝いをさせていただきたいと願っています。

画像3: 【お客さま導入事例 vol.170】
パイロットファインテック株式会社

樹脂成形のプロフェッショナルとして、
優れた精密成形技術をさらに磨く

産業・エネルギー事業部
統括部長 馬場隆(左)
産業・エネルギー事業部 産業2課
主任 尾崎直人(右)

株式会社 日立産機システム 中部支社

 東朋テクノロジーさんから、パイロットファインテック株式会社様が既設の空気圧縮機の運転時間の平準化と省エネを希望されているとお聞きしたのが2023年4月。早速、東朋テクノロジーさんと一緒に計測・診断を実施し、その結果をもとに出力75kWの給油式スクリュー圧縮機の更新と台数制御盤の導入をご提案したところご採用いただき、2024年8月に更新工事を実施させていただきました。今回は、3台の空気圧縮機の更新に加えて、既設の2台を含む5台の空気圧縮機を対象とする長期のメンテナンスパックのご契約をいただけるなど、サービス担当者にとっても大変ありがたい成果をあげることができました。
 お客さまはすでに次の省エネの課題解決に向けた検討を開始されています。東朋テクノロジーさんとともに、設備監視サービス「FitLive」のデータを活用・分析し、新たなご提案につなげていきたいと思います。

画像4: 【お客さま導入事例 vol.170】
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樹脂成形のプロフェッショナルとして、
優れた精密成形技術をさらに磨く

空圧営業部 空圧システム 第二グループ
主任 小島茂(左)
サービス・エンジニアリング部
空圧グループ 原田龍樹(右)

ご採用いただいた製品

空気圧縮機
メンテナンスパック

変動しやすいメンテナンスコストを平準化する定額型の複数年保守契約です。
遠隔監視が可能な設備監視サービス「FitLive」に標準対応。オンコール無償です。

画像5: 【お客さま導入事例 vol.170】
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樹脂成形のプロフェッショナルとして、
優れた精密成形技術をさらに磨く

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( vol.140・2025年5月掲載 )

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