
らくのうマザーズ
(熊本県酪農業協同組合連合会)
代表理事会長:隈部洋
設立:1954(昭和29)年
所在地:熊本県熊本市東区戸島5-10-15
菊池工場 熊本県菊池市泗水町亀尾3533
会員数:23組合(酪農家475戸)
職員数:261名
事業内容:牛乳・乳製品の製造販売、肉製品の処理加工・販売、酪農家に対する指導、酪農生産資材の供給・販売、など
http://www.mothers.or.jp/
生活者と地域社会の健康づくりをめざす、酪農家とともに発展してきた総合酪農組織
酪農の基本は、「土づくり・草づくり・牛づくり」。恵まれた気候風土の中で西日本一の生乳生産高を誇る熊本県。健やかな牛からの贈り物である風味豊かな牛乳を生かすために、1954(昭和29)年、県内の酪農家たちが起ち上げた組織が、らくのうマザーズ(熊本県酪農業協同組合連合会)です。同連合会が掲げる基本理念は「生活者と社会の健康を創造する総合酪農組織」。牛乳や乳製品の製造・販売はもちろんのこと、酪農家への経営指導、種付け・改良・競りなどの生産管理支援、乳用経産牛を再肥育して展開する食肉処理加工・販売などをトータルに行っています。
発足後20年を経た1974年には、念願の熊本工場(チルド製品)が竣工。1985年にはデザート工場も併設されました。熊本工場の誕生は、県内はもとより、隣の福岡県まで販路を広げるきっかけとなりました。スーパー、コンビニ業界などからの要望に合わせて、牛乳、乳飲料、発酵乳、デザートなどのさまざまなチルド製品を、365日市場に送り出しています。

種類も豊富な常温保存のロングライフ(LL)製品
今回伺った菊池工場は、常温保存が可能な牛乳のロングライフ(LL)製品専用工場として1983年に完成しました。国内にLL製品がなかった頃、ヨーロッパ視察の際に現地でLL製品が広く普及しているのを目の当たりにした当時の会長が、導入を決断。経験やノウハウもない中、全職員が力を合わせて基礎から勉強し、苦労を重ねながら最新鋭のLL製品生産工場を起ち上げたといいます。LL製品は冷蔵庫で保管する必要がないことから、現在ではコーヒーチェーン店や乳製品を扱う食品メーカーなどの業務用分野でも大きく業績を伸ばしています。
「搾りたての生乳を使った、鮮度の高い、幅広い商品ラインアップと、酪農家さんと緊密に連携して発展してきた歴史がらくのうマザーズの強みです」と語るのは、菊池工場 工場長 の栗原二郎様。
強い絆で結ばれたネットワーク組織により、今では九州と関西を中心に、関東から沖縄までの市場をカバー。酪農の魅力や大切さを体験できる関連施設「阿蘇ミルク牧場」やユニークなCMも人気となり、らくのうマザーズの名は広く親しまれるようになりました。

らくのうマザーズ 菊池工場 工場長 栗原二郎 様
LL製品市場を拓くパイオニアとして発展、進化してきた菊池工場
菊池工場は、操業を開始して以来、90日間(一部120日間)常温保存が可能な牛乳、加工乳、乳飲料、清涼飲料などの多彩な製品を生産しています。
「操業開始当初は『LL要冷蔵製品』として出荷していましたが、1985年には常温可能品製造ライセンスを取得し、LL製品の市場開拓に貢献してきました。LL専用工場と一般の生乳処理工場との一番の違いは、生乳を殺菌する温度帯です。例えば熊本工場でつくるチルド製品の殺菌温度は130℃ですが、当工場では140℃で3秒間殺菌します。また殺菌処理した製品を、無菌状態のまま無菌の紙パックに充填する設備も特別なものです」とLL専用工場の特徴をご紹介される栗原様。
LL製品は、会員組合傘下の酪農家から集乳し、細菌数、風味などの品質検査を経て冷却、貯乳。次の日にサイロタンクから出して殺菌、充填、さらに外包装、品質検査を経て出荷されます。酪農家からの集乳は毎日行いますが、計画的に生産・出荷を行うことができるのも一般の生乳処理工場との大きな違いだといいます。

大切な賞味期限の印字品質
栗原様は、「当工場では操業開始以来、先進的で安全・安心な生産ライン構築に取り組んでいます。1998(平成10)年にはいち早く国際的な衛生管理手法であるHACCPの認証を取得(牛乳、加工乳、乳飲料)。2004年からは近代化工事を実施し、製造室、自動倉庫、製品出荷場などを増設。また充填機などの設備を近代化し、ニーズの拡大に対応してきました」と、菊池工場のこれまでの歩みを振り返ってくださいました。さらに2018年に工場棟の増築を行い、サージタンクや充填機、外包装設備を増設・増強。2019年3月には250mlパック製品の生産ラインを新設しました。
「生産ライン新設の目的は、高速化と効率化です。そのために従来3台あった充填機を1台の高性能機に置き換えました。これで省力化、パックロスの低減、省エネなどを実現できました」と栗原様。菊池工場では、従来から製品を充填した後の外包装ラインにおいて賞味期限を印字する際、日立製の産業用インクジェットプリンタをお使いただいていますが、新設されたラインでも日立製品をご採用いただきました。

高速化を実現した外包装ライン

左:専用紙パック充填機
右上:生乳の受乳場(左)と出荷場(右)
右下:製品出荷場
LL製品の市場拡大の切り札、高速充填ラインを支える高速印字システム
「当工場と熊本工場は、日立製インクジェットプリンタや空気圧縮機などを使ってきたことから、私自身、日立製品を信頼していましたし、競合メーカーと比較して扱いやすく、日常のメンテナンスや緊急時のトラブル対応も安心できるとの現場の意見も尊重し、日立製品を選びました」と栗原様は選定の経緯をご紹介くださいました。
LL製造課課長補佐の松本修一様からは、「今回新設したラインは従来の3倍以上の2万4,000本/時という高速充填を実現したものです。したがってインクジェットプリンタや印字検査装置、印字不良品を排斥する装置にもそれに対応した高速化が求められました。また、印字、検査、排斥を、高速ラインに合わせて正確に同期させなければいけません。これはかなり難しい調整でしたが、日立産機システムさんと旭電業さんに期待通りの高速印字システムを構築していただき、現在は生産計画通り順調に稼働しています。今後は高速印字、検査、排斥の精度をさらに高めていただきたいですね」との評価とご要望をいただきました。
現在、LL製品は、香港、台湾、タイ、シンガポールなどのアジア圏に向けても出荷されていますが、らくのうマザーズでは少子高齢化、人口減少が進行する中、海外市場のさらなる拡大をめざしています。

らくのうマザーズ 菊池工場 LL製造課 課長補佐 松本修一 様
「今は国内市場向けと同じ製品を輸出していますが、これからはアジアのお客さまにもっと飲んでいただくために、海外向けの専用レシピをつくることを検討しています。また、事業をさらに発展させるためには人材が重要です。そのために、働きやすい職場づくり、風通しが良く、何でも言えるような職場づくりをめざしていきます」と栗原様は今後の展望をご紹介されました。
同工場では、省エネのために日立製の配電・ユーティリティー監視システム「H-NET」を約5年前に導入され、生産ラインで使用する電気を一元的に監視。電気使用量の1%削減/年を目標に掲げ省エネ取り組みを実践しています。また2018年には栗原様の発案で、地中熱利用換気システムを導入するなど、地球環境に優しい工場づくりをめざしています。日立産機システムは旭電業株式会社とともに、今後とも確かなメンテナンスに取り組んでいくとともに、同工場の省エネ、効率化に貢献できるご提案をしていきたいと考えています。

印字、印字検査装置、サイドグリップコンベア、排斥装置を組み合わせた日立製の高速印字システム

左:高速印字を可能とする印字ヘッド
右上:印字検査装置のタッチパネル式液晶ディスプレイ
右下:印字前にエアーで印字面の水分を吹き飛ばす

日立製配電・ユーティリティー監視システム 「H-NET」の監視画面

工場の動力源となる日立製空気圧縮機
お客さまのベストパートナーをめざして —日立産機システム 製品関係者—
高速で印字、検査、排斥を同期させた印字システムを構築しました
らくのうマザーズ様の生産ライン増設に合わせて、産業用インクジェットプリンタ、印字検査装置、排斥装置などの導入を担当させていただきました。お客さまのご要望に応えるためにラインメーカーと調査・検討を重ねながら仕様を決め、納入させていただきました。ポイントは、24,000本/時で流れる製品の印字、印字検査、排斥を0.15秒以内で同期させること。試運転やテストを繰り返して、プリンタ、検査装置、排斥装置などすべての工程のタイミングを正確に合わせるまで調整を重ねました。現在、順調に稼働していますが、印字品質を維持するためのメンテナンスは重要です。これからも万全のサービス体制でお客さまのご信頼にお応えしてまいります。

株式会社 日立産機システム
九州支社
サービス・エンジニアリング部
サービスグループ
技師 中川浩之
印字品質を守る万全のサービス体制で、厚いご信頼にお応えしていきます
らくのうマザーズ様は、入社当時の私が空気圧縮機を納入して以来、20年以上お付き合いをいただいています。この間、産業用インクジェットプリンタ、ホイスト、配電・ユーティリティー監視システム「H-NET」も納めさせていただきました。昨年3月には、インクジェットプリンタとサイドグリップコンベア、印字検査装置などで一連のラインを構築し、設置させていただきました。導入後は日立産機システムのサービススタッフと一体となって、機動力を生かしたメンテナンスサービスをご提供しています。今後は、IoTを駆使したモノづくり現場の見える化や管理システムなどもご提案していきたいと考えています。

旭電業株式会社
産業システム事業部
産機システム1Gr
担当課長 緒方和成
ご採用いただいた製品
マーキングシステム・ソリューション
あらゆる外包装ラインに適したシステムをご提供
日立産機システムでは、インクジェットプリンタ、レーザマーカ、インク、印字検査装置などマーキングに関するさまざまな製品と、サイドグリップコンベアや排斥装置などを組み合わせた印字ラインをトータルでご提案。お客さまのニーズに合わせた最適な印字システムをご提供しています。
主な特長
1. マーキングに関する幅広い製品をワンストップでご提供
2. 最先端の技術を生かした高品質な製品開発
3. 国内外に展開した充実のサポート体制

高速印字用 UX-D451J
毎秒3,000文字印字できるので、紙パックやペットボトル、ケーブルなどの高速印字ラインに最適です。
製品の詳細や導入に関するご相談はこちらから
( vol.109・2020年3月掲載 )