化学、石油、医薬、金属、自動車、電子、電力などの幅広い分野において独立系エンジニアリングメーカーとしての強みを発揮する田辺工業株式会社。お客さまのニーズに合わせて大型プラントを設計、製作、施工するとともに、電気計装事業や工場などの自動化を進めるメカトロニクス事業などを展開。着実に成長を重ねてきました。中でもメカトロニクス事業の拠点である埼玉技術センターでは新しい事業にチャレンジする姿勢が実を結び、工場や倉庫などの省人化、自動化を担うAGV事業を展開しています。今回は、AGV開発を成功に導いた埼玉技術センターの取り組みと、AGVに搭載された日立製の製品とシステムをご紹介します。
画像1: 【お客さま導入事例 vol.151】
田辺工業株式会社 埼玉技術センター

大型の化学プラントからAGV(無人搬送車)まで、幅広いフィールドで “ものづくりのための、モノづくり。” を展開。

田辺工業株式会社

代表取締役社長:四月朔日(わたぬき)義雄
設立:1969(昭和44)年
所在地:
本社 新潟県上越市大字福田20番地
埼玉技術センター 埼玉県吉川市旭3番4号
従業員数:780名
事業内容:各種プラント設計・製作・施工、自動化・省力化設備の設計・製作・施工、設備保全工事、電気計装工事、送電工事、管工事など
https://www.tanabe-ind.co.jp/

細かなニーズに応える技術力と誠実さで、さまざまなプラントの設計、製造、施工を柱に成長

 “ものづくりのための、モノづくり。” をコンセプトに成長を続ける田辺工業株式会社。新潟県上越市に本社を置くエンジニアリングメーカーです。1969(昭和44)年に設立され、化学プラントをはじめ、工場の大規模な生産設備の設計、製作、施工を事業の柱としてきました。またプラント施工に欠かせない電気計装分野も事業化し、現在は「プラントエンジニアリング」「エレクトロニクス」「メカトロニクス」の3事業と、熱機器や工業炉の設計、製造を手掛けています。事業分野は、化学、石油、医薬、金属、自動車、電子、電力など多岐にわたり、国内に工場を6拠点、全国各地には営業拠点、海外にも4つの子会社を置き、事業を展開しています。

 プラント事業においては、工場の立地条件や生産する製品の種類などの複雑なニーズに応じて、生産設備や機器を精密な作業で1点1点、スケジュール通りにつくり込んでいかなくてはなりません。それを成し遂げるのが緻密で正確、そして着実な仕事ぶりであり、ここに同社の強みがあります。

画像: 工場の省人化、自動化に貢献する無軌道AGVWYN-200(左)とWYN-700(右)

工場の省人化、自動化に貢献する無軌道AGVWYN-200(左)とWYN-700(右)

 「これまでの歴史を振り返ると、お客さまには技術力に加えて、人間的な誠実さ、真面目さを評価していただいているのではないかと思います。エンジニアリングやサービスなどの対応を、外の力に頼るのではなく、当社のスタッフが直接お客さまの現場へ赴いてしっかりと取り組んでいるからです。この姿勢はどんな案件でも変わることはありません」と同社埼玉技術センター長の大原聡様は語られます。

 人の力と技術力を生かしながら、事業を発展させてきた同社。今、産業界で大きな課題となっている人手不足、オペレーションの高効率化や自動化などへの対応が求められている中、同社では市場ニーズに応え、さらなる飛躍をめざした取り組みが始まっています。中でも、メカトロニクス事業の拠点である埼玉技術センターが3年ほど前から注力しているのが、AGV事業。同センターのイノベーション課が中心となって、工場や倉庫などにおける搬送作業の省人化や自動化を担うAGVの開発・製造に取り組み、すでに納入実績をあげています。

画像: 田辺工業株式会社 埼玉技術センター長 大原聡 様

田辺工業株式会社 埼玉技術センター長 大原聡 様

自律走行、ロボット搭載可能な無軌道AGV開発で技術力を高める

 埼玉技術センターは1998(平成10)年に設立されました。以来、プラントエンジニアリングとエレクトロニクスの2つの事業で培った技術力を生かして、代表取締役社長の四月朔日義雄様と大原様がメカトロニクス事業のベースをつくり上げてきました。「メカニズムとエレクトロニクスを融合させて、今までにない分野に挑戦することで、当社の力を発揮したい、と考えたのです。その後、省人化、自動化に貢献する機械や設備を開発していく中で、納期、コスト、精度などの面で一歩ずつ技術力を高めてきました」とこれまでの取り組みを振り返る大原様。

 メカトロニクス事業で培ってきた知見と技術を背景に、AGV開発を担うイノベーション課が発足したのが2018年ですが、その前に、製品化をめざした取り組みの中で、技術的な進展を後押しした出会いがありました。2015年に開催された「国際ロボット展」において日立産機システムの開発フェーズの無軌道AGVとレーザ測位システムに目をとめられたことでした。これは、レーザ測域センサが光が当たった点までの距離を計測。その結果から地図をつくり、自らの位置を同定するシステムです。AGVに搭載することで、磁気テープなどのガイドがなくても自律走行ができ、工場や倉庫のレイアウト変更にも柔軟に対応できます。

画像: 田辺工業株式会社 研究開発室長 山崎和彦 様

田辺工業株式会社 研究開発室長 山崎和彦 様

 同社研究開発室長の山崎和彦様は、「当時は試験的にAGV1台を走らせる段階で、複数台を衝突しないように走行させる運行管理システムの構築に手間取っていました。そんな時、日立産機システムさんと日立ハイテクソリューションズさんから有望な提案をいただき、開発が大きく進みました」と開発の経緯を語られました。

 こうして2016年初頭には、レーザ測位システムを搭載した試作機が完成。車体のモータやコンピュータも一新して、開発が本格的にスタートしました。さらに同社では、競合製品との差別化を図るため、ロボットやコンベアなどを搭載するロボット搭載型AGVの開発にも取り組みました。2017年に開催された「第1回ロボデックス(ロボット開発・活用展)」では、同社のAGVが来場者の注目を集め、その後の成功を予感させることとなりました。今ではWYN-200、WYN-500、WYN-700の基本的なラインアップに加え、コンベアやカメラ、ロボットなどを搭載した製品も揃っています。

画像: AGVの運行試験の様子

AGVの運行試験の様子

画像: AGVの製造エリア

AGVの製造エリア

画像: 試験機に搭載されたレーザ測位システム

試験機に搭載されたレーザ測位システム

画像: ロボット搭載型AGV

ロボット搭載型AGV

さらに求められる高機能AGVに向けて開発とサービス面でお応えする

 お客さまの要望に合わせて、性能や機能をカスタマイズすることが求められる同社のAGV。埼玉技術センター イノベーション課長の木村篤様は「お客さまからの引き合いが多いのはアーム型ロボット搭載型AGVですが、ロボットメーカーによって仕様やコントローラなどが違うので、当社製の車体と組み合わせる際には、いかに制御するかで苦労します。重量物であるロボットを搭載しても車体が安定するように設計を見直したり、追加の検証も必要なこともあります」と工夫を語られます。研究開発室 係長の川田義猛様も、「お客さまが求める仕様、機構などにおいて、本当に満足していただけるAGVをつくっていきたいと考えています」と開発への意欲を語られます。

 近年は、ロボット搭載型AGVとともに、人とロボットが同じ場所で働く “人協働ロボット” への要望も高まりつつある中、同社ではすでに次の未来図を描いています。

 「今、さらに進化した高機能の製品開発に取り組んでいます。また、お客さま自らがモノづくり現場に合わせてカスタマイズしたいというケースも多いので、このようなご要望にもお応えできるサービス体制を整えていきたいと思っています。事業戦略としては、デモ機を多く用意し、AGVに対する潜在ニーズにしっかりと対応できる体制をつくり、会社を支える部門に成長させたいですね」と力強く展望を述べられる大原様。さらに「当社の強みは、いろいろなニーズに合わせたAGVをご提案できることです。またカスタマイズ品だけではなく、同じAGVで繰り返しご注文をいただける製品づくりと営業活動を展開したいと考えています」と語られました。

画像: 田辺工業株式会社 埼玉技術センター イノベーション課長 木村篤 様(左) 研究開発室 係長 川田義猛 様(右)

田辺工業株式会社
埼玉技術センター イノベーション課長 木村篤 様(左)
研究開発室 係長 川田義猛 様(右)

 山崎様からは、「日立製のレーザ測位システムと運行管理システムなくして、当社のAGVは成立しません。今後は、さらに高い性能を求められるお客さまの声にお応えするためにも、システムのアップデートや改善などのニーズがあれば、素早い対応でご協力いただきたいと思っています」とのお言葉をいただきました。「新しい運行管理システムを現行製品に組み込みたいので、さっそくサポートをお願いしたいですね」と木村様。川田様からも「3次元センサの開発を期待したいですね」とのご要望をいただきました。

 日立産機システムと日立ハイテクソリューションズは、これからも同社のAGV事業発展のお手伝いをさせていただきたいと考えています。

画像: 日立製レーザ測位システム「ICHIDAS Laser」のICHIDASコンポーネント(左)とレーザスキャナ(右)

日立製レーザ測位システム「ICHIDAS Laser」のICHIDASコンポーネント(左)とレーザスキャナ(右)

画像: AGVの運行管理画面

AGVの運行管理画面

画像: レーザスキャナのセンサ部

レーザスキャナのセンサ部

お客さまのために力を合わせて —日立産機システム 製品関係者—

お客さまの無軌道AGVの事業に貢献する「ICHIDAS Laser」をさらに進化させていきます

 無軌道AGV(無人搬送車)事業を本格的に展開されようとされていた田辺工業株式会社様から、当社のレーザ測位システム「ICHIDAS Laser」と無軌道AGV「Lapi」についてご照会をいただいたのは4年ほど前でした。すぐに株式会社日立ハイテクソリューションズさんと一緒になって、AGVに「ICHIDAS Laser」を搭載するための取り組みを進め、地図サイズの拡大や、地図データの切り替えをスピーディにすることで、お客さまから高い評価をいただくことができました。今後は自動搬送ニーズの高まりを捉えて、システムインテグレーターとしてさらなる技術開発に取り組み、お客さまとともにAGV業界をリードしていきたいと考えています。

画像2: 【お客さま導入事例 vol.151】
田辺工業株式会社 埼玉技術センター

大型の化学プラントからAGV(無人搬送車)まで、幅広いフィールドで “ものづくりのための、モノづくり。” を展開。

株式会社 日立産機システム
営業統括本部
産業ソリューション営業統括部
東日本営業部 関東ソリューション営業グループ
主任 金子卓哉

夢が広がるAGV事業において、開発力を生かしお客さまの発展に貢献していきます

 田辺工業株式会社様の無軌道AGV製品化に際して、制御技術に強みを持つ当社は運行管理システムの開発を担当させていただきました。開発にあたっては、お客さまのニーズをしっかりとヒアリングし、システムを完成。無線通信のレスポンスなどの課題も解決し、基本的な制御機能についてはご満足いただけたと思います。将来的には、工場におけるAGVの運行管理システムと基幹システムとを連携させることが想定されるなど、この分野はますます進化していきます。工場の省人化や効率化に貢献するソリューションを、日立産機システムさんとともにお客さまにご提供していけるよう、技術力をさらに高めていきます。

画像3: 【お客さま導入事例 vol.151】
田辺工業株式会社 埼玉技術センター

大型の化学プラントからAGV(無人搬送車)まで、幅広いフィールドで “ものづくりのための、モノづくり。” を展開。

株式会社 日立ハイテクソリューションズ
ICT事業統括本部 ソリューション営業本部
デジタルエンジニアリング部
営業グループ 松岡 晃

ご採用いただいた製品

レーザ測位システム
ICHIDAS Laser

移動体の位置を高速かつ高精度に検出
ICHIDAS Laserはレーザスキャナのみを用いるシンプルな構成でレーザの計測データから地図を作成し、作成した地図上での位置と姿勢を高精度に検出できます。cmオーダーの検出精度により、ニーズの高まる自動搬送車などの自己位置検出に適しています。

主な特長
1. レーザのみを用いて高精度でロバストな位置を同定
2. 移動体の制御に十分な位置検出速度を実現
3. 地図作成・位置同定機能を制御するソフトウェアが付属

画像4: 【お客さま導入事例 vol.151】
田辺工業株式会社 埼玉技術センター

大型の化学プラントからAGV(無人搬送車)まで、幅広いフィールドで “ものづくりのための、モノづくり。” を展開。

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( vol.110・2020年5月掲載 )

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