
トヨタ自動車株式会社
代表取締役社長:豊田章男
創立:1937年(昭和12年)
所在地:
本社 愛知県豊田市トヨタ町1番地
堤工場 愛知県豊田市堤町馬の頭1
従業員数:74,132人(連結 359,542人)(2020年3月末現在)
事業内容:自動車の生産・販売 など
https://global.toyota/
「サステイナブル・プラント活動」から「トヨタ環境チャレンジ2050」へ
“世界のトヨタ”の生産拠点が集積する愛知県。豊田市を中心に、歴史ある本社工場、「クラウン」や燃料電池車「MIRAI」などを生産する元町工場、ハイブリッド車などを生産する堤工場、人気のSUV車などを生産する高岡工場、LEXUSブランドやランドクルーザーの生産拠点の田原工場、エンジンを生産する上郷工場と下山工場、駆動系部品などを生産する三好工場、衣浦工場、貞宝工場。足回り部品を生産する明知工場などの11工場を含む15の事業所が展開されています。
今回訪ねた堤工場は、1970年に「セリカ」「カリーナ」の生産を開始して以来、数々の人気車種を世界に送り出し、現在はハイブリッド車「プリウス」を中心に、「カムリ」や「カローラスポーツ」などを生産。主力の完成車工場としての歴史を歩み、累計生産台数は約2,000万台を誇っています。また堤工場は、トヨタ自動車が2007年から進めてきたサステイナブル・プラント活動のモデル工場としても知られています。

組み立てライン
サステイナブル・プラント活動とは、「自然を活用し、自然と調和する工場づくり」をめざし、①革新技術の導入とカイゼンによる飛躍的な環境パフォーマンスの実現、②太陽光・風力などの自然エネルギーやバイオマスなどの再生可能エネルギーの活用によるCO2削減、③工場の森づくりを通じた、地域交流・生態系保護、この3つの観点を踏まえた工場づくりのこと。堤工場では太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入や、「工場の森づくり」に向けて地域本来の植生種を生かした約5万本の植樹などを実施してきました。
さらに同社では2015年10月に、持続可能な社会の実現に貢献するための新たなチャレンジとして「トヨタ環境チャレンジ2050」を公表。サステイナブル・プラント活動を発展させた「工場CO2ゼロチャレンジ」や「人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ」など、6つのチャレンジを設定し、大きな注目を集めました。「工場CO2ゼロチャレンジ」では徹底した省エネ活動と再生可能エネルギーの導入、水素活用の推進などに取り組み、「人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ」では、堤工場のビオトープづくりなどをモデルとして、グローバルな取り組みとして展開しています。

世界に誇るエコカー、4代目プリウス
愛知県内に展開する15事業所の電気の安全を守るプロフェッショナル
現在、堤工場をはじめ世界中の工場で、「トヨタ環境チャレンジ2050」実現のステップとして、2025年目標「グローバル工場CO2 30%削減(2013年比)」「再生可能エネルギー導入率(電力)25%」を掲げ、革新技術の導入と徹底した省エネ活動に取り組んでいます。
「電力はクルマの生産を支える重要なエネルギーなので、省エネ活動とともに、電気の安全を守る取り組みを推進しています」と語るのは、同社プラント・環境生技部 工場計画室 技術2グループ チーフエキスパートの大前秀樹様。大前様は、愛知県内にある特別高圧電力を受電する全事業所の電気保安業務を統括する電気主任技術者です。具体的には、15の特高受電設備と合計約700ヵ所のサブ変電所、各工場の建屋内にある電気設備の安全を守っています。例えば堤工場には、77,000Vの特高受電設備をはじめ、94万㎡の敷地に点在する約60ヵ所のサブ変電所、そこからプレス、溶接、塗装、組み立てなどの工程に電気を送るための設備、機器などがあり、監視の目を光らせているのです。

トヨタ自動車株式会社 プラント・環境生技部 工場計画室
技術2グループ チーフエキスパート 大前秀樹 様
「もちろん私一人でできる仕事ではなく、管理者の課長、そのもとで現場を監督する工長、さらに主任技術者の業務を代行する代務者とチームを組んで、コミュニケーションを大切にしながら全事業所の電気の安全を守っています」と語る大前様。さらに、構内で変電所を新設するような工事があると、その安全管理審査も行います。「審査にあたっては、JISやJECなどの一般的な電気保安基準より厳しい社内基準に則って厳しく見ています」と語ります。同社がグローバルで運用している「トヨタ生産技術標準」によれば、例えばキュービクルやケースに入っている電気設備をさらに柵で囲って安全性を高めることが定められています。
堤工場をはじめとする愛知県内の事業所では、これまで特高用の変圧器やガス絶縁開閉装置(GIS)、メタルクラッドスイッチギヤ、サブ変電所の変圧器、ハイブリッド形真空遮断器(VCB)など、多くの日立製受変電・配電設備をご採用いただき、メンテナンスも含め、長くお付き合いをいただいてきました。
「今後も電気に関わる安全については最優先に取り組んでいくので、信頼性が高く、誤作動のない、しかもメンテナンスが容易な設備機器についてご提案をいただきたいですね」とのお言葉をいただきました。

77,000Vを6,600Vに変圧する特高変電所

特高変電所の変圧器

サブ変電所で使われているアモルファス変圧器
現場のお困り事にお応えするソリューションを提供
一方、堤工場、上郷工場、下山工場、上郷物流センターにおいて、動力源である電力、圧縮エアー、蒸気、ガス、水などを生産現場に供給しているのが、同部 第3動力課 工長の児玉弘司様をリーダーとするメンバーたち。
「例えば塗装工場に送っている蒸気や圧縮エアーの圧力が下がると生産が阻害されてしまいます。製造現場へ供給する“原動力品質”の“良品条件”を守り、クルマづくりを支えることが我々に与えられた使命です」と児玉様。また堤工場では、2019年末に日立産機製の低圧絶縁監視システム「i-moni(アイモニ)」を溶接工程に導入していただきました。ここでは直流電流を使う溶接機などからの高調波漏れ電流を正確に把握するために実地調査をする必要がありました。「i-moni(アイモニ)」は基本波有効分方式により有効分漏れ電流を正確に抽出できるので、人手をかけずに、設備の絶縁劣化の兆候を早期に発見できるという特長があります。
「それまでは、漏れ電流の計測にかなりの時間を使っていましたが、今ではムダに動かなくていいので本当に助かっています。溶接工程以外でも同様の課題があるので、現場の困り事を一発で解決できる製品をこれからも開発していただきたいですね。また、供給する原動力も品質を守ることは当然として、より安価に、より効率よく、より環境にやさしいものが求められています。このようなニーズに応えてくれる製品の開発を期待しています」と児玉様。

トヨタ自動車株式会社
プラント・環境生技部
第3動力課
工長 児玉弘司 様

トヨタ自動車株式会社
堤工場
塗装成形部 技術員室
グループ長 原田怜 様
「今、当社では『トヨタ環境チャレンジ2050』をめざして、再生可能エネルギーの導入拡大に取り組んでいます。その中で、原動力の蒸気や圧縮エアーのような二次エネルギーに代わり、一次エネルギーの比重が高まっていくと思います。また現状の送配電システムに頼ることなく工場内で発電、蓄電し、その場で使うことも考える必要があります。また効率的な直流送電システムの導入も検討するかもしれません」と将来を見据える大前様。「個人的には新しい発電方式を開発したいですね」と今後の夢も語っていただけました。
日立製作所と日立産機システムは、省エネ性と高い環境性を実現した環境調和型変圧器 Superアモルファス「奏(かなで)」をご提案するなど、これからもトヨタ自動車様の電力インフラの高度化や、工場の自働化やIoT化などを推進するお手伝いをしていきたいと考えています。

ハイブリッド形真空遮断器(VCB)が搭載された高圧盤

塗装ラインに並ぶ高低圧盤

高圧盤に搭載されたブレーカー

熱源室の空気圧縮機
堤工場 びおとーぷ堤
ビオトープは「人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ」のシンボル
堤工場の正門の右手に広がる「びおとーぷ堤」は、従来から展開してきた「工場の森づくり」を拡大し、地域生態系保全につながる活動としてさらに発展させるために2018年10月にオープン。面積は約2,800㎡もあります。地域本来の生態系保全に貢献することをめざして、地域に分布しているコナラを中心とした里山的な広葉樹林をコンセプトとし、水辺、草地、樹林などの環境づくりを行ってきました。
開設から2年以上経ち、今では導入した植物が成長。工場周辺に生息する鳥類、トンボ類、チョウ類、カエル類などもビオトープを利用するようになり、整備活動やモニタリング調査を行っている従業員の方の努力のほどがしのばれます。
小さな滝から水が流れ込むせせらぎにはメダカなどが泳ぎ、草地にはチョウが舞う。そんな懐かしい光景が広がる「びおとーぷ堤」は、人と自然が共生できる空間づくりのシンボルです。

左:地域の小学生や有識者、関係者ら約200人が出席したオープニングセレモニー
右:生きものの隠れ家などを創出し、豊田市に生育・生息する希少種である水生植物のヒルムシロや魚類のミナミメダカ、ウシモツゴを保全

びおとーぷ堤の全景
お客さまのために力を合わせて —日立産機システム 製品関係者—
“世界のトヨタ”様に認められる、高い省エネ性と環境性を兼ね備えたソリューションを提供していきます
当社のトヨタ部は、トヨタ自動車株式会社様、トヨタグループ各社様、関係会社様のIT、OT、プロダクトなどの分野で活動しています。私は主にOTとプロダクトを担当して、受変電・配電設備などの電力インフラに力を入れてきましたが、近年はIT系の製品・システムの拡販にも注力しています。今回お訪ねした堤工場様は、多くの受変電・配電設備を導入していただいています。また「サステイナブル・プラント」のモデル工場として、コストはもちろんのこと、省エネ性と環境性の高い製品を重視されていますので、これからも日立としての強みを発揮できると考えています。今後は、さらに勉強し、高度な省エネ提案をしていきます。

株式会社 日立製作所
中部支社
トヨタ部 第四グループ
岡井浩樹
日立グループ一体となって、お客さまの大切な動力インフラを守っています
日立製作所と一体となって、トヨタ自動車株式会社様、トヨタグループ各社様、関係会社様の受変電・配電設備を担当させていただき約7年。感謝と誇りを持って仕事に取り組んでいます。トヨタ自動車様は1994年頃から変圧器を導入していただいていますし、アモルファス変圧器を発売当初にご採用いただいた大切なお客さまです。各工場の大切な受変電・配電を支える設備なので、何かトラブルがあればすぐに現場に駆けつけ、必要な調査やメンテナンスを行う体制と、チャレンジングな案件でも喜んで引き受けられる技術力があるのが当社の強みです。今後ともお客さまのご期待にお応えできるよう、日立グループの力を結集していきます。

株式会社 日立産機システム
中部支社
第一営業部 受変電・配電システムグループ
主任 佐々木雄作
ご採用いただいた製品
低圧絶縁監視システム
i-moni
全設備に対する絶縁劣化兆候の早期発見が可能!
漏洩電流の基本波有効分方式(Ior方式)を国内で初めて確立・採用した低圧絶縁監視システム。それが「i-moni:アイモニ」です。低圧側電路と負荷設備の健全性を、本方式により、漏洩電流と電圧との演算だけで有効分漏洩電流(Ior)を計算できます。これにより生産ラインや工場全体の予防保全に貢献できます。また、注入用電源、注入用トランスなどが不要なので、コスト低減と省スペース化につながります。
*日立産機システムのIor方式(基本波有効分方式)は、国土交通省監修「公共建築工事標準仕様書」に掲載。 国土交通省監修「電気設備工事監理指針」に準拠。国土交通省運営「新技術情報提供システム(NETIS)」 に登録。(NETIS登録番号:KT-190057-A)
主な特長
1. 基本波有効分方式を採用(フーリエ解析、ベクトル解析演算)
2. 自己点検機能搭載(機器本体、ZCT破損有無、接続線の断線確認他)
3. 漏電リレー機能(JIS C 8374)搭載絶縁監視機器もラインアップ(1/2/6/10回路 盤面/盤内タイプ共通)

ご採用いただいた製品
高圧遮断器
ハイブリッド形真空遮断器(VCB※1)
※1 Vacuum Circuit Breaker
注油不要なシンプル構造でトラブル抑制と省メンテナンスを両立!
真空遮断器(VCB)は、平時や、短絡、過電流、地絡状態などの異常時に電路を安全に遮断。電気の安全性、保守にとって重要な機器です。ハイブリッド形VCBは、永久磁石と電磁石を組み合わせた構造により、一般的な電動ばね式と比較し部品点数を大幅に削減。またすべての摺動部に固体潤滑材を採用し、遮断器機構部をノングリースとすることで、定期的な注油を不要とし、点検作業の低減と点検周期の延長を実現しました。
主な特長
1. 永久磁石と電磁石を組み合わせたシンプル構造により故障率を60%削減※2
2. ノングリース化とシンプル構造により保守作業を60%削減※2
3. 長寿命コンデンサを使用することで消費電力を80%削減※2
※2 当社電動ばね操作式真空遮断器との比較値

ご採用いただいた製品
変圧器
Superアモルファス Zero
トップランナー変圧器2014の第二次判断基準をはるかに超えた超高効率変圧器
アモルファス変圧器は、変圧器の鉄心にアモルファス合金を使うことで、ヒステリシス損※1と渦電流損※2が極めて少なく、電力変換のロスを大きく抑えることができます。とくに深夜や休日といった無負荷時あるいは低負荷時の待機電力を最大限に抑えることができます。SuperアモルファスZeroは油入タイプとモールドタイプをご用意。サイズや機種のバリエーションも豊富で、設置場所や用途に応じてお選びいただけます。
※1 ヒステリシス損 : 鉄心内の磁束が変化することで分子相互間に発生する摩擦損のこと。
※2 渦電流損 : 磁束の変化で鉄心内に発生する電流の抵抗損失のこと。
主な特長
1. 約40%のエネルギー削減
2. 耐震性、防災性に優れた設計
3. 無負荷損を抑えて、ずっと省エネ
4. 用途に応じて選べる、充実のラインアップ
5. アモルファス合金はリサイクル可能

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( vol.115・2021年3月掲載 )