
東日京三電線株式会社
代表取締役社長:豊崎 真一
設立:1947(昭和22)年5月10日
所在地:茨城県石岡市荒金1番1号
従業員数:257名
事業内容:電線、ケーブルおよび光ファイバケーブルの製造、組立加工および販売
https://www.tonichi-kyosan.co.jp/
磨き上げた生産技術とチームワークで、高品質の電線・ケーブルを生産
現代社会の生命線である電力供給網や通信ネットワークは、産業や暮らしを支える重要なインフラです。今回お訪ねした東日京三電線株式会社は、エネルギーと情報分野で欠かせない、電線・ケーブルや光ファイバケーブルの生産と販売を手掛ける専門メーカーです。中でもビルや工場などで使われる建設・電販向けの電線・ケーブルの分野では、国内シェアの10%以上を占める電線製造会社です。
同社の歴史を振り返ると、創業は1945年11月。創業当初より各種電線の生産・販売を開始し、1967年に日立電線株式会社の子会社となり、1968年には社名を東日電線株式会社と改め、1978年に現在地の茨城県石岡市に本社を移転。2000年には同じく日立電線系の京三電線株式会社との合併により、600V以下のCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシース電力ケーブル)の生産能力を集約した現在の姿となりました。
 ビニル絶縁電線[IV LF 14m㎡](中、下)](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783708/rc/2025/03/25/d16ad72aa1edeef3fac25080f602a1146fd52c37_xlarge.jpg)
600V架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル[600V CTV 3X100m㎡](上)
ビニル絶縁電線[IV LF 14m㎡](中、下)
同社代表取締役社長 豊崎真一様は、「当社の転換期は、2002年に電線製造会社が共同出資し販売会社を設立、この事業に参画し、同社ブランドの製品を受託生産するというビジネスモデルを築いたことです。2004年には日立電線株式会社(2013年 日立金属株式会社と合併)の完全子会社となり、以来、電線・ケーブルの生産を通じて日本のインフラを支えているという使命をより重く受け止め、安全、品質を何よりも大事にしてきました」と、これまでの歩みを紹介されました。
「当社では、原料の電気銅荒引線の入荷から製造、検査、出荷に至るすべての工程が、本社工場の中で完結していることが一番の強みです。また国内市場の中心に近いところに拠点を構えているという地の利も強みですね」と紹介されたのは、同社ケーブル製造部 部長の井上剛介様です。ケーブル製造部の生産技術と生産管理のスタッフはもちろんのこと、管理スタッフも含めて同じ建屋の中で日々の業務に取り組んでいるので、一つのチームのような形でタイムリーな議論、スピーディな意思決定ができることも強み。一体となって課題を共有して解決することで、高品質の製品を効率良く市場に送り出しています。

東日京三電線株式会社
代表取締役社長 豊崎真一 様(右) ケーブル製造部 部長 井上剛介 様(左)
空気圧縮機の使い方を徹底的に調査し、ステップアップした省エネの取り組み
同社の本社・石岡事業所では、154,000㎡という広い敷地の中に、工程と製品に応じた建屋が配置されています。主力のCVケーブルは、導体の素材となる銅荒引線の入荷後、①荒引線を所定の太さに引き伸ばす伸線工程、②引き伸ばした銅線を複数撚り合わせ導体をつくる撚線工程、③導体に絶縁体を被覆する絶縁押出工程、④絶縁体にシース(保護膜)を被覆・表面印刷するシース押出工程、⑤ケーブルを撚り合わせる撚合工程、⑥検査工程、⑦必要な長さに切り分ける切分工程を経て出荷となります。
「製造における工程は、伸線や撚線、押出、撚合がありますが、CV工場では絶縁押出機、シース押出機、撚合機が稼働しています」と説明されるのは、同社ケーブル製造部 ケーブル製造課 課長の宇津野唯様です。また工場全体の生産設備の保全・管理などを担う同部 生産技術課 課長の浅野美一様は、「たくさんの設備機器がありますが、年数が経っても簡単に更新できるものはなく、大切に使いつつ生産効率を高めるために常に性能アップに努めています」と日頃のご苦労を語ります。同部 ケーブル製造課 電力ケーブル係の上北敬太様は、「当社の特長は、銅荒引線の入荷から完成・出荷までのリードタイムが他社より短いことと、安定した品質、仕掛かりを持たない効率的な生産体制です。その強みを活かすために、製造と生産技術が一体となって生産ラインの性能やレイアウトを常に見直すとともに、生産設備のメンテナンスに力を入れています」と、モノづくりの強みを紹介されました。

東日京三電線株式会社
ケーブル製造部 生産技術課 課長 浅野美一 様

東日京三電線株式会社
ケーブル製造部 ケーブル製造課 課長 宇津野唯 様(左)
同部 ケーブル製造課 電力ケーブル係 上北敬太 様(右)
同社では、主要生産ラインで日立スクリュー圧縮機を長年お使いいただいています。浅野様は、「絶縁押出工程で導体に絶縁体を被覆すると、この被覆電線は高温のまま走行するため、冷却水槽に通して冷却します。その冷却水を除去するために大量の圧縮エアーを使用します。また製品を巻き取るドラムを着脱する時に大きなシリンダーを動かすために、さらに高圧のエアーが必要です」と空気圧縮機の役割を紹介されました。宇津野様は、「圧縮エアーの使い方は工場全体の省エネに関わるので、CV工場での更新に合わせて棟内の配管をすべて調査したところ、いくつかの課題が見つかりました」と、エアー供給システムを見直すきっかけについて言及されました。

CV工場全景

導体となる電気銅荒引線

撚合(よりあわせ)工程

キャタピラ挟み込み動力部のシリンダー

ピントル着脱動力部のエアシリンダー

押出工程におけるドラム軸開閉用動力部のエアシリンダー
空気圧縮機とブースタベビコン、台数制御盤を組み合わせて実現した、高いエネルギー効率
「2016年度に流量計を設置し、実際に空気圧縮機が供給できる流量と配管の太さからポイントごとの流量と圧力をシミュレーションしたところ、流速が想定より速いために、結露が出やすく圧力損失が発生していることが分かりました」と浅野様。上北様も「圧縮エアーの配管ルートを見ると魚の骨のようでした。配管自体も細かったので、ループ配管に変更するとともに幹線も支線も太くしました」と、当時の状況を説明されました。
「配管の更新が終わって空気圧縮機の選定段階で、日立産機システムさんと特約店のセンター電機さんから空気圧縮機とブースタベビコンを組み合わせることで、大きな省エネ効果が得られるとご提案があり、検討の上、採用に至りました」と宇津野様。特に圧力が必要な設備でトラブルがあったことから、6台のブースタベビコンを導入していただきました。それまでは0.6MPa以上のエアーを供給していましたが、ブースタベビコンによりピンポイントで圧力を高めることができるので、元の圧力を0.5MPaに下げてエアーを供給することができました。浅野様からは、「この取り組みでエアー1㎥あたりの消費電力が約33%低減できた上、設備のダウンタイムもほとんどなくなったので生産上のメリットも生まれました」との評価をいただきました。2021年9月には日立産機製の台数制御盤を導入していただき、さらなる省エネにつなげることができました。

より高圧のエアーが必要なポイントをブースタベビコンにより昇圧することで元エアーの供給用圧縮機の設定圧を低減し、省エネとともにエネルギー原単位の向上を実現
※吸い込み空気に油分が含まれる場合は、吸い込み側にはエアーフィルタとミクロミストフィルタを設置する。
「当社では、モノづくり体制の構築は一応のメドが立ったので、今後は働きやすい職場づくり、魅力的な職場づくりをめざしていきたいと考えています。また電線・ケーブルメーカーとして、カーボンニュートラルの達成のために、省エネをさらに追求していく必要があります」と豊崎様。「CV工場で成功した空圧システムを他のラインにも展開して、電力消費をできるだけ抑える生産ライン、効率の良い生産ラインを構築したいと考えます。また、自動化や遠隔監視・制御できる設備の導入を検討するなど、将来を見据えた一歩を踏み出していきたいですね」とのお言葉を受けて、センター電機と日立産機システムは、徹底した省エネと工場のIoT化の面で、さらなる貢献をめざしていきたいと考えています。

コンプレッサー室に設置された日立スクリュー圧縮機(37kW×4台)

ケーブル巻取設備に設置されたブースタベビコン

日立産機製台数制御盤

日立産機製エアードライヤー
お客さまのために力を合わせて —日立産機システム 製品関係者—
圧縮エアーをきめ細かく供給するための空圧システムに欠かせない、ブースタベビコン
ブースタベビコンを、他の設備より高い圧力を必要とする箇所にピンポイントで導入すれば、元の空気圧縮機から吐出するエアーの圧力を下げることができ、省エネに直結します。例えば0.1MPa下げるだけで約7〜8%の消費電力を低減できるといわれているので、省エネを追求される東日京三電線株式会社様にご採用いただいたところ期待通りであったとの評価をいただきました。今回の案件は、空気圧縮機単体ではなく空圧システム全体での取り組みでしたので、勉強させていただくことがたくさんありました。今後は、他の生産ラインにも展開されると伺っていますので、ぜひお手伝いをさせていただき、お客さまの省エネにさらに貢献したいと思います。

株式会社 日立産機システム
営業統括本部
空圧営業統括部 空圧システム部
空圧システム第一グループ(空気圧縮機・窒素ガス発生装置担当)
金剛寺桃子
長年の実績を生かして、何でもご相談していただけるビジネスパートナーをめざしています
東日京三電線株式会社様では、長年、工場全体で多くのスクリュー圧縮機をお使いいただいてきましたが、CV工場内の空気圧縮機更新とともに、設備ごとに最適な圧力と量の圧縮エアーを供給できるように、ブースタベビコンの導入をご提案し、ご採用いただくことができました。お客さまは、空気圧縮機更新の前にCV工場内のエアー配管を見直されていたので、更新と合わせて、大きな省エネ効果をあげることができました。空気圧縮機とブースタベビコンを組み合わせたご提案は、当社ではあまり例のない取り組みでしたが、ご評価をいただきうれしく思っています。今後とも何でもご相談いただける特約店として、お客さまのご期待に応えてまいります。

センター電機株式会社
水戸支店
主任 小谷俊一
ご採用いただいた製品
ブースタベビコン
日立オイルフリー ブースタベビコン
必要なポイントに必要な圧力でエアーを最適供給、ライン全体の省エネを実現
供給元の吐出圧力を0.7MPaから0.5MPaに下げると、理論動力は約18%低減します。高い圧力を必要とする設備にはオイルフリーブースタベビコンを導入し、工場エアー用大型コンプレッサーの運転圧力を下げれば大きな節電効果が得られます。
主な特長
1. 0.4~11kWのオイルフリータイプ
2. 最大圧1.0~1.37MPaをラインアップ
3. 静音タイプのPOBシリーズ

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( vol.123・2022年7月掲載 )