私達の社会は、断面が丸や四角の鋼管によって支えられています。ビルをつくる構造用鋼管や電線管、巨大な建造物を地中で支える杭、建設現場の足場管、物流倉庫のコンベアローラー、スーパーやコンビニエンスストアの陳列棚、道路標識や照明を支えるポール、自動車の部品に使われる構造鋼管をはじめ、あらゆる場面で鋼管が活躍しています。設立以来74年の歴史を重ねた丸一鋼管株式会社は、鋼管づくりのスペシャリスト。今回お伺いした堺工場は、同社の主力工場として、多様なサイズ、多様な用途に対応できる鋼管を社会に送り出しています。長さ100mを超える工場建屋には当社製の天井クレーンが縦横に走り、今日もその生産を支えています。
画像1: 【お客さま導入事例 vol.159】
丸一鋼管株式会社 堺工場

小指ほどの太さの鋼管から建築物の骨組みまで、
暮らしと社会を支える多様な鋼管をつくるトップメーカー

丸一鋼管株式会社

代表取締役会長兼CEO:鈴木博之
代表取締役社長兼COO:吉村貴典
設立:1947(昭和22)年
所在地:
本社 大阪市中央区難波5丁目1番60号 
堺工場 大阪府堺市西区石津西町16番地
従業員数:2,383名(2022年3月 連結)
事業内容:構造材用鋼管・配管用鋼管・電線管・テーパーポールの製造・加工・販売
https://www.maruichikokan.co.jp/

自転車の部品づくりから世界に知られた鋼管メーカーへと進化

 社会を支えるさまざまな鋼管。丸一鋼管株式会社は、一般構造用鋼管をはじめ、建築構造用鋼管、機械構造用鋼管、鋼管杭、配管用鋼管、鋼製電線管、ラインパイプ、テーパーポールなど、多彩なラインナップを誇っています。

 同社の歴史は、1910年代に小さな町工場が自転車部品の製造に着手したことから始まります。その後、「素材から良いモノをつくりたい」という創業者の想いから、鋼管専業メーカーへと転身し、1947年には株式会社丸一製作所を設立。1960年に現社名に改称しました。やがて高度経済成長期には全国に生産拠点を展開し、2000年以降は積極的に海外にも進出。グローバルに成長を遂げてきました。現在は、グループ会社を含め14ヵ所の国内生産拠点、海外では北米、中国、インド、インドネシア、ベトナム、フィリピンなどに、グループ会社が19拠点を展開しています。

画像: 出荷を待つ完成された鋼管

出荷を待つ完成された鋼管

 同社の強みは、全国各地の工場が、地域ごとに異なるニーズに合わせ、需要地に直結した供給ネットワークを確立していることです。これがスピーディな提案や納品を可能にしています。また、直径8mmから508mmのパイプ、最大400mm角の建築用コラムまで、さまざまな径と長さの鋼管を、お客さまが二次加工しやすい高品質な製品として提供することで、溶接鋼管のトップメーカーとしての名が、国内外に知られるまでになりました。その主力工場として国内丸一グループの3分の1を生産しているのが、1965年に大阪府の泉北臨海工業地帯に竣工した堺工場です。

 「当工場だけは地域の需要に合わせるのではなく、全国のお客さまに向けた製品を生産、出荷しています。広大な工場内には6機の造管機があり、最大直径508mm×肉厚19mmの鋼管をつくることができます。また、金属組織が均一で加工性に優れた鋼管をつくるストレッチレデューシングライン、連続溶融亜鉛めっきライン、円錐状のパイプを製造するスピニング式テーパーラインなど特殊な生産設備を有し、約25,000t/月の鋼管を生産しています」とその役割を語られる同社執行役員 堺工場工場長の成﨑敏行様。多くのお客さまの信頼を得てきた同社のモノづくりへのこだわり、高い生産技術を誇ります。

画像: 丸一鋼管株式会社 堺工場 執行役員 工場長 成崎敏行 様

丸一鋼管株式会社 堺工場 執行役員 工場長 成崎敏行 様

高周波溶接で、滑らかで加工しやすい鋼管を生産し、社会を支える

 堺工場で生産されている鋼管は、暮らしと産業に密着したものばかりです。建築・一般構造用鋼管は、ビルの柱、足場管、農業用ハウスの柱などに。機械構造用鋼管は、自動車や自転車の部品、家具、コンビニなどの陳列棚、物流倉庫のコンベアローラーなどに利用されています。テーパーポール加工製品は道路の照明柱、標識柱、ETCゲートとして。さらにガスや水などを配給する配管用鋼管、石油などを輸送するラインパイプ、自然災害防止杭や土木基礎用の鋼管杭、電線やケーブルを保護する電線管など、いずれも社会に欠かせないものばかり。そんな鋼管の材料は、鋼板を幅1.5~2m、15~30tに巻いたホットコイル(熱間圧延鋼板)です。同社では丸管の場合は、①ホットコイルを用途サイズに合わせてせん断する工程 ②成形ラインで筒状に曲げ、端と端を高周波電流で鋼板を縫うように連続圧接する電縫工程 ③丸くした時にできる余盛りをカットする工程 ④太さを調整するサイジングの機械に通してニーズに応じた最終外径に整える工程 ⑤切断工程 ⑥メッキや塗装工程などを経て出荷します。照明柱や標識柱に使われるポールは、さらに円錐状のテーパーポール加工、さび止めめっき加工、ねじ切りなどの加工を施します。なお角管は、丸管に四方から圧力をかけ成形します。

画像: 生活のあらゆるシーンで活躍している製品。 上:製品標識柱 下:(左より)ETCガントリー入口(鋼構造物のみ)、多目的柱、照明柱(テーパーポール)

生活のあらゆるシーンで活躍している製品。
上:製品標識柱
下:(左より)ETCガントリー入口(鋼構造物のみ)、多目的柱、照明柱(テーパーポール)

 「通常、板を丸めて溶接すると母材と溶接部分の硬さが異なるので、お客さまが二次加工する時に支障が生じます。当工場では、中周波の加熱器で約1,000℃に加熱した管を、同業他社含め国内に3基しかない特殊なストレッチレデューサーで熱間縮径することで、後加工がしやすい製品になります。また、テーパーポールは円柱を円錐状に加工する際、回転・引っ張る・絞るのバランスが崩れると製品になりません」と同工場のモノづくりの特徴を説明される成﨑様。「鋼管は要求品質に加えて、社会の中に存在し続けるので、近年は外観の美しさも求められます。当社の製品は、この点でも強みを持っています」と胸を張ります。

画像: 埠頭設備では材料搬入を担う日立製作所製ジブクレーンが活躍

埠頭設備では材料搬入を担う日立製作所製ジブクレーンが活躍

画像: 堺工場全景

堺工場全景

画像: 主力工場である堺工場には長大な建屋が並ぶ

主力工場である堺工場には長大な建屋が並ぶ

画像: 太陽光パネル

太陽光パネル

画像: 電気自動車充電ステーション

電気自動車充電ステーション

画像: 高周波溶接で、滑らかで加工しやすい鋼管を生産し、社会を支える
画像: 第6工場の4号造管機

第6工場の4号造管機

画像: パイプ造管ライン

パイプ造管ライン

画像: 溶接(圧接)工程

溶接(圧接)工程

画像: サイジング(定形)の工程

サイジング(定形)の工程

重く、長い吊り荷を、安全に効率良く運搬するインバータ制御の天井クレーン

 敷地面積約154,000㎡の堺工場では、全工場棟でホットコイルや鋼管を運搬するための天井クレーンが計67機も稼働しています。その約3割を占めるのがインバータを搭載した日立産機システム製のクレーンです。インバータ制御のクレーンは、吊り荷の揺れや振動を軽減するとともに、モータの回転が低い時にブレーキをかけて機械部分への衝撃を緩和できるのが特長です。さらに標準オプション機能の共吊同調機能では、長い鋼管を2機のクレーンで巻き上げ・巻き下げをする際に、2機が位置と動きを同調できるので、水平な状態を安定して維持し、作業効率と安全性に貢献しているとの評価をいただいています。

 「クレーンがなくては、当工場は生産ができません。現場の安全と生産性を守るために、定期的な点検や保全を実施しています。故障やトラブルでラインを止めれば、お客さまに大きなご迷惑がかかります。だから一番大切なのは、予防保全ですね」と語るのは、同工場の設備の管理や保全を担う設備課 機械係 係長の北野貴裕様。「造管ラインの天井クレーンは、重さが数t、長さが4~14mの鋼管を束にして休むことなく工程間を運んでいます。特にクレーンの駆動部分やブレーキは重要ですから、毎日の始業前点検、月次点検、年次点検を重ねて、設備の保全に努めています」と安全を追求した取り組みをご紹介されました。同工場では、日立産機システムと、特約店である日本電気機器のメンテナンスサービスを活用されながら大切にお使いいただくとともに、長年使ってきたクレーンは、インバータ部分のみ更新させていただくことで機能の向上を図り、さらに長く安心してお使いいただいています。

画像: 丸一鋼管株式会社 堺工場 設備課 機械係 係長 北野貴裕 様

丸一鋼管株式会社 堺工場 設備課 機械係 係長 北野貴裕 様

 成﨑様からは、「当工場の埠頭設備には、日立製作所製の40tクレーンが原料のホットコイルを船から荷揚げするために活躍していますし、40年以上しっかり働いている主力の1号機や2号機の造管機も日立製作所製です。日立産機システム製の天井クレーンも含め、日立ブランドの製品なら大丈夫だと信頼しています。これからもまだまだ使い続けたいですね」とのご評価をいただきました。

画像: 共吊同調機能が働き、水平を保ったまま運搬

共吊同調機能が働き、水平を保ったまま運搬

画像: 第四倉庫全景

第四倉庫全景

画像: 第四倉庫の日立インバータホイスト Super Vseries(4形)6t(3t×2)

第四倉庫の日立インバータホイスト Super Vseries(4形)6t(3t×2)

画像: 第六倉庫の日立インバータホイスト Super Vseries(2形)4.8t(2.4t×2)

第六倉庫の日立インバータホイスト Super Vseries(2形)4.8t(2.4t×2)

電力の監視で省エネを追求するとともに、研究機関と連携して、新しい鋼管の可能性を探る

 産業界においては、カーボンニュートラル実現に貢献する省エネ対策は重要な課題です。同工場で電力関係を全般的に管理する、設備課 課長の宇田恭史様は「2012年に日立産機システムさんの配電・ユーティリティー監視システム『H-NET』を導入し、電力のムダはないか、ルール通りに運用されているかを見える化しました。これで、工場全体の消費電力の2割を占めるエアーコンプレッサーの使用電力量や、その他の生産設備の電力監視を容易にしています。実際に1号機の造管ラインではムダをなくし、稼働率がアップしました」と手応えを実感されています。さらに、工場棟ごとにカーボン使用量を発表するほか、工業用水の再利用、耐震性のある建物に太陽光パネルを設置するなど、省エネ、創エネを図り、カーボンニュートラルへの取り組みを積極的に進めています。

 また、工場全体で安全で、働きやすい環境づくりに取り組んでいます。「クレーン作業では、ワイヤーを掛ける人、クレーンを操作する人、鋼管を運ぶ人の連携が悪いと、荷崩れを起こし、事故につながりかねません。当社の製品は重量物が多いので、特に安全性は重要です」と現場の安全を強調される成﨑様。そこで「高所にあるクレーンの車輪やレールの傷み具合を遠隔監視で知らせてくれる機能があるとありがたいですね。加えて故障が発生する前に目に見えない傷具合を把握できる予兆診断が可能になれば、さらにうれしいですね」とのご要望をいただきました。

画像: 丸一鋼管株式会社 堺工場 設備課 課長 宇田恭史 様

丸一鋼管株式会社
堺工場 設備課 課長 宇田恭史 様

 今、同社では研究機関とともにさらなる軽量化と加工性に優れた鋼管をつくるためのオープンイノベーションを推進しています。さらに同社名古屋工場では、次世代型の自動造管ラインを設置する予定だといいます。同社では、鋼管と鋼板のトップメーカーとして、新しい技術や材料を開発し、新しい製品づくりに取り組んでいます。また、堺工場では、将来ビジョンを見据えつつ、若い世代や女性が働きやすい環境づくりを進めながら新たな課題にチャレンジしています。

 日本電気機器と日立産機システムは、今後も力を合わせて、より安全性と生産性向上に貢献できる天井クレーンとサービスのご提供、また、長年ご使用いただいている空気圧縮機・変圧器などの省エネ更新のご提案も行い、同工場の発展に貢献していきます。

画像: 配電・ユーティリティー監視システム『H-NET』

配電・ユーティリティー監視システム『H-NET』

画像: 『H-NET』の監視モニタ

『H-NET』の監視モニタ

画像: 日立製空気圧縮機

日立製空気圧縮機

画像: 日立製変圧器

日立製変圧器

お客さまのために力を合わせて —日立産機システム 製品関係者—

お客さまからさらなるご信頼をいただくために、製品、サービス、技術を磨いています

 丸一鋼管様では、堺工場様をはじめ国内各地の工場でホイスト・クレーンをお使いいただいています。重い製品や金属材料を運搬する天井クレーンは重要な生産設備。お客さまの安全・安心、生産性を守るために、全国規模のサービス網を生かして、予防保全やメンテナンスに力を入れています。今後は遠隔監視を実現するFitLiveサービスの導入をご提案。サービス体制をさらに進化させていきたいと考えています。

画像2: 【お客さま導入事例 vol.159】
丸一鋼管株式会社 堺工場

小指ほどの太さの鋼管から建築物の骨組みまで、
暮らしと社会を支える多様な鋼管をつくるトップメーカー

株式会社 日立産機システム 関西支社
営業統括本部 設備第一営業統括部
第二営業部 関西・四国第二グループ(ホイスト・クレーン)
部長代理 津司渉(右)
技師 下假僚真(左)

当社の強みを生かして、クレーンの心臓部・インバータのリニューアル提案をさらに

 堺工場様の操業を支える天井クレーンを守るため、万一のトラブルが発生したら迅速に駆けつけることができる体制を整えています。それに加えて、当社の強みは古くなったクレーンでもインバータを交換することで、機能も制御もリニューアルできること。これで長く安心してお使いいただけます。当社製のクレーンが、堺工場様の出荷工程で大活躍している様子を見ると誇らしい気持ちになります。

画像3: 【お客さま導入事例 vol.159】
丸一鋼管株式会社 堺工場

小指ほどの太さの鋼管から建築物の骨組みまで、
暮らしと社会を支える多様な鋼管をつくるトップメーカー

株式会社 日立産機システム 関西支社
営業統括本部 設備第一営業統括部
第二営業部 関西・四国第二グループ(ホイスト・クレーン)
技師 池西良陽

お客さまの課題解決のお力になれる、機械電気設備のプロとしてさらに成長いたします

 丸一鋼管様の皆さまは、真面目なプロフェッショナル。鋼管づくりにおいては妥協することなく真剣に取り組んでいらっしゃいます。当社は機械電気設備を中心にさまざまな日立製品を納入していますが、いずれも長くお使いいただく重要なものばかりですので、常にお客さまの本音を聞かせていただける立場にいたいと願っています。今後も日立産機システムさんと協力しながら、お客さまの課題解決に貢献してまいります。

画像4: 【お客さま導入事例 vol.159】
丸一鋼管株式会社 堺工場

小指ほどの太さの鋼管から建築物の骨組みまで、
暮らしと社会を支える多様な鋼管をつくるトップメーカー

日本電気機器株式会社
重工営業本部 西日本営業部 機電課
課長 伊勢木俊治

ご採用いただいた製品

ホイスト
日立インバータロープホイスト共吊同調機能 ※注文品対応

画像5: 【お客さま導入事例 vol.159】
丸一鋼管株式会社 堺工場

小指ほどの太さの鋼管から建築物の骨組みまで、
暮らしと社会を支える多様な鋼管をつくるトップメーカー

2台のインバータホイストを1つの操作ボタンで同時運転。2つの同調機能で吊り荷を常に安定した状態で巻き上げ、巻き下げ。安全・安心とともにスムーズな操作性を実現しました。

2つの同調機能
動作同調 : 基本機能を備えたベーシック機能です。
位置同調 : 動作同調に自動フック位置調整機能が追加されます。また、位置同調には水平保持制御と位置保持制御があります。

制御盤IP55対応可能
外部出力機能6点、12点、18点
多段速(巻き上げ:最大16段速+軽負荷高速、横行:最大8段速)

画像6: 【お客さま導入事例 vol.159】
丸一鋼管株式会社 堺工場

小指ほどの太さの鋼管から建築物の骨組みまで、
暮らしと社会を支える多様な鋼管をつくるトップメーカー

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( vol.125・2022年11月掲載 )

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