先輩技師の田所(右)とペアを組み、DSP空気圧縮機オーバーホールのための増速ギアシャフト寸法を測定する大野(左)。
大小さまざまな工場や学校、病院や商業施設などで活躍する空気圧縮機。搬送や駆動用、あるいはブロワーとして、圧縮エアーはあらゆる分野でなくてはならない重要な動力源です。日立産機システムは、0.2kWから780kWまでの出力帯を揃え、お客さまの多様なニーズにお応えしています。今回は日本アルプスを望む甲信地方で活動する、若きサービスエンジニアの活躍をご紹介します。
画像1: 【熱きサービスエンジニア・9】
甲信サービスステーション[空気圧縮機編]
画像2: 【熱きサービスエンジニア・9】
甲信サービスステーション[空気圧縮機編]

甲信サービスステーション
所在地 : 〒392-0012 長野県諏訪市大字四賀2408-2

上:長野県と山梨県のお客さまを支える甲信サービスステーションのスタッフ
下:甲信サービスステーション外観(左)オフィス内(右)

甲信地方を駆け巡り、お客さまの設備機器を見守るサービスエンジニア達

 株式会社 日立産機システム カスタマーサクセス・サービス事業本部 サービス事業部 甲信越サービス部 甲信サービスグループの大野慶は、空気圧縮機を担当するサービスエンジニアです。

 長野県と山梨県の全域という広大なエリアを担当している甲信サービスステーションは、2007年に旧・甲信サービスステーションと長野サービスステーションが統合して誕生して以来、日本アルプスの山々に見守られながらサービスを展開してきました。

 「お客さまの現場に伺う日は、朝からサービスカーで出動します。遠方の場合、片道で2時間以上かかることもあり、往復で約300km走行することもありますが、高速道路網が充実しているのであまり負担は感じないですね」と大野。「現場に着いたら協力会社や特約店さんのスタッフと合流して、すぐに点検、修理、部品交換などを行い、午後には試運転と確認作業。夕方前にはお客さまに引き渡して帰社することになります」と仕事の流れを紹介してくれました。

 甲信サービスステーションの所長である主任技師の渡邊伸治は、「長野県と山梨県は山がちで空気がきれいなことから、お客さまには電機・電子部品や半導体、精密機器、食品や飲料関係の大手メーカーさんが多いですね。お客さまの現場まではカーブや峠も多く、冬季は道路が凍結することも多いので、安全第一の作業と安全運転を日々強調しています」と甲信地方ならではの苦労を語ります。

画像3: 【熱きサービスエンジニア・9】
甲信サービスステーション[空気圧縮機編]

大野慶 (2019年入社)
株式会社 日立産機システム
カスタマーサクセス・サービス事業本部
サービス事業部
甲信越サービス部
甲信サービスグループ

どんな空気圧縮機と出会っても、迷うことなく保守、修理できる技術と自信

 「お客さまからのお問い合わせで多いのは、空気圧縮機の制御がうまくできないとか、生産ライン側で吐出エアーの圧力が上がらないということですね。簡単な設定変更で対応できれば良いのですが、制御用の電子部品が故障したり、電磁弁の動きが悪かったりすると部品交換が必要になります。圧縮エアーが使えなくなり生産ラインが停止すると、お客さまがいかにお困りになるかが分かるので、持てる技術と知識を総動員して対応しています」と語る大野は、入社5年目にしてしっかりとした技術と自信を持って仕事をしています。

 大野の先輩である技師の田所玲二は、「当社ではベビコンから大型まで、出力でいえば0.2kWから上は780kWと幅広いラインアップを揃えています。また、同じ出力でも給油式とオイルフリーがあったり、圧縮方式にはレシプロ、スクリュー、スクロールの3種類があります。さらにアモルファスモータ 一体型圧縮機のように、モータそのものが違うものもあります。しかも空気圧縮機は年々進化しているので、若いサービスエンジニアがその変化とトレンドにキャッチアップすることは大変ですが、大野はしっかりと対応できています」といいます。

 一方大野は、「空気圧縮機は製品寿命が長いので、お客さまの現場で自分の年よりも長く稼動している空気圧縮機に出会うこともあります。新しい製品は勉強したばかりなのでメンテナンスで苦労することは少ないのですが、旧式の空気圧縮機の場合、それまでに経験したことがない構造や制御メカニズムが採用されていることもあり、どうしたらいいか考え込んでしまったこともありました」と振り返ります。「私は機械工学部出身なので、機械をいじることが本当に好きです。古い空気圧縮機は手に負えないような部分もありますが、その分、おもしろいと感じています」と難しさの中にも楽しさを見出しています。

画像: テスターを使用して、お客さまからお預かりしているインバータをチェック。

テスターを使用して、お客さまからお預かりしているインバータをチェック。

画像: 所長の渡邊とメンテナンス計画を打ち合わせる大野。

所長の渡邊とメンテナンス計画を打ち合わせる大野。

成長のきかっけは、先輩の的確で迅速な対応力と、提案する力を学んだこと

 大野の成長に大きな影響を与えてきたのは、先輩や特約店のサービスエンジニアの仕事ぶりだといいます。中でも大野にとって印象深いできごとは、今回お伺いしたKOA株式会社様の生産拠点である「七久里の杜」様でのことでした。それは大野が入社して1年目。「空気圧縮機の潤滑油の油量が減少し、圧縮機が停止してしまった」とのご連絡があり、特約店の株式会社 マナテックさん、先輩とともに「七久里の杜」様に駆けつけました。

 「構造上、オイルは流れ出るものですが一定時間のうちに流れる量が多かったため、オイルが減って空気圧縮機の温度が上がり保護装置が働いて停止していました。先輩の手際の良い調査の結果、圧縮エアー内のオイルをフィルターで分離し、そのオイルを圧縮機に戻すための回収配管に詰まりが生じていたことが判明し、再発防止のために回収配管にフィルターを付けることをご提案。事業所と連携し、特注フィルターを設置してトラブルの再発を防ぐことができました」と大野は振り返ります。

 この時大野は、先輩の対応の的確さと迅速さ、そしてお客さまに納得していただける提案をできる力に驚いたといいます。「先輩からサービスエンジニアとしてあるべき姿を学ぶことができました。もちろん、この対応はお客さまからも高い評価をいただきました」と大野は語ります。

 その後、大野自身が直接経験したできごともありました。空気圧縮機を複数納入した時、台数制御の初期設定がどうしてもうまくいかない、というものでした。1機ごとの試運転では正常に稼動できたのですが、台数制御モードにするとなぜかエラーになったといいます。そこで大野は配線や設定を初めからすべて見直し、「ここを変えてみよう」「今度はあちらを変えてみよう」とトライアンドエラーを何度も繰り返し、夜になってようやく真因を発見することができました。「大変でしたがお客さまの操業に影響を与えず復旧できたことで、お客さまと特約店さんに大変喜んでいただけ、大きな自信につながりました」と笑顔で語ってくれました。

 田所は、「大野の仕事ぶりから感じることは、いつも思いやりがあるところですね。お客さまに対して気配りが行き届いたサービスを提供しています。『彼は将来有望だね』」と評価していただいたこともあります」と語ります。渡邊も「今後は甲信越サービス部全体をリードしてほしいと思っています」と期待を寄せています。

画像: 左:整備用工具や部品を積み込んで迅速に出動の準備。 右:安全に配慮して整理整頓されたサービスエリア。

左:整備用工具や部品を積み込んで迅速に出動の準備。
右:安全に配慮して整理整頓されたサービスエリア。

画像: 帰社後はオフィスにてメンテナンスパックの提案書を作成。

帰社後はオフィスにてメンテナンスパックの提案書を作成。

業務の効率化で、お客さまのために使える時間をさらに増やす

 今、甲信サービスステーションでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用によりサービスエンジニアの日々の業務を効率化することで、サービスエンジニアがお客さまと直接向き合うことができる時間を増やそうという取り組みを進めています。

 渡邊は、「サービスエンジニアは、お客さま先でのメンテナンス業務が終了してから作業報告書や見積もり書を作成しています。これらのデスクワークをデジタル化することでサービスエンジニアの業務を軽減し、その結果生まれた時間でお客さまに新たな価値をご提供することが目的です」と展望を語ってくれました。

 「業務の効率化には期待しています。お客さまに新たなメンテナンスサービスを提案したり、遠隔監視サービス『FitLive』から得られたデータを活用して迅速で的確な対応ができるサービスエンジニアをめざしていきたいですね」と大野も抱負を披れきしてくれました。

 サービスエンジニアを支える取り組みは、業務の効率化だけではありません。例えば、全国各地のサービスステーションには緊急のご連絡以外に、一般ユーザーからもさまざまな製品に関する技術情報の問い合わせが届きます。時には当社製品以外の機器に関するお問い合わせが入ることも珍しくなく、それもサービスエンジニアが対応することになります。このような課題に対しては、本社に技術相談窓口を設け、そこで全国からのお問い合わせに対応する取り組みを進めています。すでに産業用インクジェットプリンタとホイストに対応した窓口は稼働を開始し、空気圧縮機に対応する窓口は準備中です。

 今後も全国のサービスエンジニアとともに、すべてのお客さまにより良いサービス、より価値の高いサービスをご提供することで、お客さまのさらなる成功に貢献していきたいと考えています。

画像: 株式会社 マナテックの佐々木と今後の作業方針を確認。

株式会社 マナテックの佐々木と今後の作業方針を確認。

総合エンジニアリング商社として日立製品の強みを活かし、お客さまに貢献

株式会社 マナテック
サービス本部 飯田サービス課 主任 佐々木康博

 当社は日立特約店として、設計から施工、メンテナンスまで一気通貫したサービスをお客さまに提供する総合エンジニアリング商社です。長野県内に本社を含め6拠点を構え、地域に密着した事業を展開しています。今回ご紹介するKOA株式会社様は、当社が40年以上にわたりお付き合いをいただいている大切なお客さまです。私は空気圧縮機などを担当し、頼りにしている大野さんと連携し、メンテナンスのためにお伺いしています。
 当社では今、目標を掲げてSDGsに取り組んでいます。今後ともお客さまには環境に配慮した設備をご提案し、さらなる信頼をいただけるよう努めていきたいと思っています。

株式会社 マナテック https://manatec.co.jp
本社・長野支店 〒381-8539 長野県長野市大字南長池字古新田369番地5
飯田支店 〒395-0001 長野県飯田市座光寺6628番地261

画像: 左:飯田支店 外観 右:飯田サービス課を支える佐々木

左:飯田支店 外観 右:飯田サービス課を支える佐々木

サービスエンジニアが活躍するお客さまを訪ねて

里山の暮らしと文化に溶け込んだ、
先進のモノづくり
KOA株式会社 七久里の杜 様

画像: 日立のオイルフリー圧縮機 NEXTⅢ

日立のオイルフリー圧縮機 NEXTⅢ

画像: KOA株式会社 下伊那ビジネスフィールド 左:業務グループ ラインリーダー 代田正和 様 中:厚膜センター 設備管理グループ 竹内英和 様 右:業務グループ 上野和彦 様

KOA株式会社 下伊那ビジネスフィールド
左:業務グループ ラインリーダー 代田正和 様
中:厚膜センター 設備管理グループ 竹内英和 様
右:業務グループ 上野和彦 様

 KOA株式会社様は、国内トップシェアの抵抗器をはじめ、さまざまな電子部品を開発・製造・販売するグローバルカンパニーです。今回お訪ねした「七久里の杜」様は、豊かな自然に包まれた伊那谷の地で、厳しい品質管理体制のもと面実装型のフラットチップ抵抗器を生産する同社の主力生産拠点。「抵抗器は電気回路に必要不可欠な部品で、家電から自動車用電子部品、産業機器、コンピュータなど、電気を使う製品には必ず使われています」と紹介されたのは、同社 下伊那ビジネスフィールド 業務グループラインリーダーの代田正和様。工場全体のユーティリティの管理を担っています。
 「七久里の杜」様では、生産ラインに当社製の給油式とオイルフリー式の空気圧縮機を2系統導入されています。代田様は「空気圧縮機が故障すると生産ラインは止まってしまいます。最重要なインフラ設備と位置付け、遠隔監視サービス『FitLive』とメンテナンスパックを全機契約しています」と予防保全の取り組みを紹介されました。先頃まで同グループで設備管理を担当されていた竹内英和様は、「マナテックの佐々木さんと日立産機システムの大野さんは、迅速なトラブル処理に加え、弊社の機器の使用状況を把握した上で、メンテナンスや機器選定の面で的確なアドバイスもいただけるので大変助かっています」と評価してくださいました。業務グループの上野和彦様からは、「遠隔監視により集積したビッグデータを活用して、今後の予防保全に活用できるとさらにありがたいですね」と期待の言葉をいただきました。
 同社では2030ビジョンとして、「Essential Parts of the World」を掲げ、カーボンニュートラルの実現と持続可能な社会に貢献できる必要不可欠な高品質、信頼性の高い製品を世界に供給することをめざしています。当社はマナテックとともに、KOA様のビジョン実現に貢献したいと考えています。

画像: 左:ビオトープ(左)を備えた七久里の杜 中:竹内様(左)と設定画面を確認する大野 右:上野様(左)とFitLive画面を見ながら打ち合わせ

左:ビオトープ(左)を備えた七久里の杜
中:竹内様(左)と設定画面を確認する大野
右:上野様(左)とFitLive画面を見ながら打ち合わせ

KOA株式会社 https://www.koaglobal.com
事業内容:各種電子部品の開発・製造・販売
本社(アースウイング) 〒399-4697 長野県上伊那郡箕輪町大字中箕輪14016 KOAパインパーク内
七久里の杜 〒395-0301 長野県下伊那郡阿智村春日1088-1

画像: FitLiveの監視画面。監視データを分析することで、状態監視だけではなく最適運転を提案することができます。

FitLiveの監視画面。監視データを分析することで、状態監視だけではなく最適運転を提案することができます。

遠隔監視“FitLive”でリアルタイムに各製品の稼働状況を把握。

画像4: 【熱きサービスエンジニア・9】
甲信サービスステーション[空気圧縮機編]

◆ PCやタブレット端末でいつでも監視状態が分かります。
設備の温度・圧力・電流などの稼働データをいつでもどこでも確認できます。また、お客さまの指定した販売・保守会社との情報共有も可能です。
◆ 産業機器の警報やメンテナンスのお知らせが自動でメール送信されます。
点検時期のお知らせ、警報・故障発生を自動でメール送信します。点検漏れの防止や、故障発生時の早期対応に役立ちます。
◆ 産業機器の稼働データはクラウド上に保存されます。
自動保存されたデータは、記録日時を指定してグラフ化やファイル出力が可能です。トレンドグラフにより温度などの上昇傾向が見える化され、予防保全、故障原因の早期究明に役立ちます。

安定稼働のための早期異常発見&対処で設備ダウンタイム短縮
状態監視により迅速に対処方法を検討できるので、保守作業にムダが生じません。

画像: FitLive導入前後のフロー比較(イメージ)

FitLive導入前後のフロー比較(イメージ)

( vol.130・2023年9月掲載 )

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