自転車が庶民の主な移動手段であった時代、ホンダが自転車用補助エンジンのカブ号F型を発売したのは1952(昭和27)年のことであった。ピストンバルブ・横断掃気式2ストローク単気筒で、性能は排気量49.9㎤、最高出力は3,600回転/分で1PS(馬力)。後輪アクスルシャフト部に配置し、ドライブチェーンによって後輪を駆動するというものであり、エンジンを扱ったことのない自転車店でも取り付けが容易であった。軽量化と高い生産性を実現するため、時代に先駆けてアルミダイキャスト部品やプレス部品を取り入れたことで、自転車用補助エンジンとして質量は当時最軽量の6kgを達成した。
 「白いタンクと赤いエンジン」という斬新なデザインもうけ、当時のサラリーマンの初任給約3ヵ月分相当と高価であったが、高い品質は価格以上と評価された。発売開始年だけで2万5千台が生産される大ヒット作となり、急速に普及。さらに、流通網にも大きな影響を与え、大量生産の工業製品としての市場を大きく拡大した。戦後のプロダクトデザインの原点のひとつとなった歴史的な機械である。
(日本機械学会 機械遺産 第14号)

引用:日本機械学会「機械遺産」 機械遺産第14号 https://www.jsme.or.jp/kikaiisan/heritage_014_jp.html
協力・参考:本田技研工業株式会社 https://global.honda/jp/

( vol.136・2024年9月掲載 )

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