
卓球選手(日本生命所属)
早田ひな さん
福岡県北九州市出身。両親とも卓球とは無縁ながら4歳より卓球を始める。日本の「女子卓球黄金世代」の1人として世界で戦う。ITTF(国際卓球連盟)2024年4月2日付世界ランキング6位(日本選手トップ)。日本女子のエースとしてパリオリンピックでの活躍が期待されている。
ごあいさつ
皆さん、こんにちは。卓球の早田ひなです。この度、日立産機システム様にご支援をいただくことになりました。ありがとうございます。1月28日まで東京体育館で開催されていた「天皇杯・皇后杯 2024年全日本卓球選手権大会」(一般・ジュニアの部)、女子シングルスで優勝することができました。ここからあと半年、パリオリンピックに向けてさらに頑張っていきたいと思いますので、ご支援、ご声援、よろしくお願いします!(早田ひな)



世界と戦う心と体を準備する
竹内 大切な大会を圧倒的な強さで勝ち続け、優勝されましたね。おめでとうございました。
早田 ありがとうございます。めざすところは世界のトップです。そのためにも国内で負けるわけにはいかないと思い、勝つ卓球、負けない卓球を追求してきました。
竹内 世界各地で転戦し、国内外の強い選手と戦う上で、辛いと感じることはありませんか。
早田 私の特技はいつでもどこでも寝ることができることです(笑)。例えばヨーロッパ遠征の時には、東京から現地までの約14時間、ほとんど飛行機の中で寝ています。チームメートが2、3日、時差で苦しんでいるのに、私は時差ボケをほとんど感じません。体力があるほうではないので、この特技はありがたいです。
竹内 睡眠が早田さんを支えているのですね。
早田 寝ることは体力を回復させるだけではなくて、新しい技術を身につけようと一生懸命に取り組んでいる時は睡眠中に体が覚えようとするみたいで、寝ながら素振りをしたりすることもしょっちゅうあるそうです(笑)。
竹内 睡眠中も練習ですね(笑)。毎日、どのくらい卓球をしているのですか。
早田 以前は、毎日午前9時から12時まで練習。昼食後は、午後3時から6時まで練習し、その後はトレーニングをこなし、さらに体のケアをしてもらっていたので寝る時間が少なかったと思います。今は、午前中にみっちりと5時間集中して練習し、その後はリラックスするなど体を大切にしています。また日曜日はしっかりと休み、心身ともにリフレッシュさせています。休んでいる時間は、頭を休めることも大切ですが、明日はこれをやってみたらどうだろう、とちょっとしたヒントが浮かんでくることもあります。
多様な個性が集まったチームには、つねに可能性がある
竹内 大切な試合に備えて、メンタルの強化やモチベーションを高めるためにどんな対策をしていますか。
早田 私とコーチ、2人の練習パートナー、トレーナーなど6人で「チームひな」を組んで活動しています。心強い仲間がいるので、私ひとりだけで戦っている、という気持ちはありません。専門家のコーチ、卓球を経験したことのないトレーナーも含め、皆で議論する中、自分とは異なる意見を受け止めながら、最終的には自分で決断して試合に臨んでいるので、けっこう平気です。チームのいろんな立場、いろんな意見や感じ方を組み合わせて、答えを見つけ出すようにしていますね。また負けたら負けたでそこに大切な課題があると思っているので、「負け試合も決してムダにはしないぞ」というぐらいの気持ちでいます。
竹内 当社では、企業風土、企業文化を改革する“Working Together”というCX(カルチャー・トランスフォーメーション)プロジェクトを展開しています。異なる背景や考え方を持つ人が集まることで、チームの多様な力を活かしてさらに成長しようと考えているので、今のお話は大変参考になりました。
早田 ありがとうございます。それに、厳しい練習の中にもおもしろさを発見し、楽しくトライすることが大切だと考え、言葉にできない自分の感覚を、シンプルでインパクトがある言葉に置き換えたりしています。例えば「パラパラチャーハン」という言葉は、体の真ん中をめがけて打ち込まれてくるボールをうまく処理する時の身体感覚を表現していますが、きっと誰にもわからないですよね(笑)。
竹内 オリジナルの“ひな語”ですね。おもしろい言葉でプレーや体の動きを理解し、表現することも、チーム全員で早田さんの独特の感覚を共有することに役立っているのでしょうね。当社は産業機器分野で伝統的なモノづくりをしている企業ですが、私も仕事はもっと楽しくできるし、楽しくすべきだと考えています。
早田 おっしゃる通りだと思います。また、何か新しいことにチャレンジする時には、先入観を排した考え方や方法を試すようにしています。今自分ができないと思っている技術って、これまでの専門家の言葉を鵜呑みにして、自分が勝手に「難しい技術だ」と決めつけているだけ、ということもあります。でも、本当に難しいのだろうかと掘り返し、異なる言葉や感覚に置き換えてみると、解決できたりすることもあります。そういう言葉や感覚をどんどん見つけたり、新しい視点を当てはめたりすることで、自分にはそれこそ限界がないと思えて、今はすごく楽しく卓球に取り組むことができています。
竹内 若い早田さんが、自分に固定概念が染みついていると感じ、それを打ち破っていこう、新しいことに挑戦しよう、といつも考えていることに驚きました。このような生き方は、スポーツに限らず仕事でも大切だと思います。
今日は興味深いお話をいろいろと聞かせていただき、ありがとうございました。この夏の大活躍を期待しています。
早田 こちらこそありがとうございました。今年1年、戦い続けていきますので、よろしくお願いいたします。


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( vol.134・2024年5月掲載 )