日立の「環境ビジョン」と「環境長期目標」のもと、脱炭素社会、高度循環社会、自然共生社会の実現をめざす日立産機システムは、主力製品であるスクリュー圧縮機のユニット構成部品であるエアエンド、モータ、インバータのリビルト事業を展開することで、お客さまとともに「リニアエコノミーから、サーキュラーエコノミー」への転換を促進し、脱炭素社会と高度循環社会の構築に貢献していきます。

脱炭素社会と高度循環社会の実現に貢献する
サーキュラーエコノミーの拡大

 原材料⇒生産⇒消費⇒廃棄という一方通行の「線形経済(リニアエコノミー)」から、市場のライフサイクル全体で、効率的で循環的な資源の利用と製品のシェアリングや二次流通促進などを最大化する「循環経済(サーキュラーエコノミー)」への転換が急がれています。その背景には、資源枯渇や調達リスク増大への対応、廃棄物削減、カーボンニュートラル達成への貢献、さらにはサーキュラーエコノミーの拡大による社会全体の新しい成長が期待されていることなどがあります。

画像: 脱炭素社会と高度循環社会の実現に貢献する サーキュラーエコノミーの拡大

 当社では、サーキュラーエコノミーの拡大に貢献するために、相模事業所に置かれたグローバルエアパワー統括本部 空圧システム事業部 汎用圧縮機統括部 リビルト・エンジニアリングセンタ(以下 当センタ)と、中部支社に置かれた空気圧縮機用インバータリビルトセンタにおいて、スクリュー圧縮機ユニット構成部品のリビルト事業を展開しています。

 その概要は、あるお客さまからスクリュー圧縮機のオーバーホールをご依頼されたら、その圧縮機のエアエンド、モータ、インバータを取り外して、新品同等の性能と基準を満たしたリビルトプロダクツに交換して、お客さまにご使用いただきます。また、取り外したエアエンドやモータなどは当社で回収し、分解・整備・検査の上、合格した部品は再利用し、組立・試験の後、リビルトプロダクツとして保管し、別のお客さまから整備依頼をいただいた時にリビルトプロダクツとして交換、使用していただくというものです。当センタでは1985年から事業化に取り組み、これまで多くの実績を重ねてきました。またインバータリビルトセンタも、2009年の設置以来、当センタとともにリビルト事業の拡大に貢献してきました。

画像: 左:リビルト・エンジニアリングセンタが置かれた相模事業所 右:インバータリビルトセンタが置かれた中部支社

左:リビルト・エンジニアリングセンタが置かれた相模事業所
右:インバータリビルトセンタが置かれた中部支社

お客さまに支持され、拡大・定着したリビルト事業

画像1: 【日立産機システムの環境への取り組み】
サーキュラーエコノミーの拡大に向けて—
空気圧縮機 リビルト事業の展開

 さまざまな産業で活躍するスクリュー圧縮機は、クリーンな圧縮空気を生成するオイルフリースクリュー圧縮機(DSP)と、圧縮室に潤滑油を充填した油冷式スクリュー圧縮機(OSP)に大別されます。この製品には、心臓部である圧縮機本体(エアエンド)と、可変速機の場合はDCBL(ブラシレス)モータ、一定速機ではIM(誘導)モータが搭載されています。DSPは6年ごとにオーバーホールを行いますが、これには大がかりな装置や熟練技術を必要とするので、お客さま先での作業は困難でした。加えて、エアエンドのオーバーホール時には新品のエアエンドに交換できますが、エアエンドの主要部品は再使用できるものが多いことから、当センタでオーバーホールしたエアエンドをリビルトプロダクツとして交換していただく方が、整備品質の面でも価格面でもお客さまにとって大きなメリットがあると判断してリビルト事業を開始しました。

 一方、 OSPは8年ごとにオーバーホールを行いますが、そのエアエンドは構造が比較的簡単なため、お客さま先でオーバーホールを行っていましたが、作業効率の向上、お客さまのライン停止時間の短縮などを目的に、2015年からリビルトプロダクツの提供を開始しました。DCBLモータの場合は、モータロータに非常に強力な永久磁石が組み込まれているため、鉄粉やじん埃が多い場所で整備を行う時には細心の注意が必要でしたが、当センタでオーバーホールを行えば安定した整備品質を確保できると考え、これも2015年からリビルトプロダクツの提供を開始しました。

画像1: お客さまに支持され、拡大・定着したリビルト事業
画像: 株式会社 日立産機システム グローバルエアパワー統括本部 空圧システム事業部 汎用圧縮機統括部 リビルト・エンジニアリングセンタ 製作課長 兼 製造統括部主任技師 稲生哲也

株式会社 日立産機システム
グローバルエアパワー統括本部 空圧システム事業部
汎用圧縮機統括部 リビルト・エンジニアリングセンタ
製作課長 兼 製造統括部主任技師 稲生哲也

画像2: お客さまに支持され、拡大・定着したリビルト事業
画像3: お客さまに支持され、拡大・定着したリビルト事業

 こうしてDSPのエアエンドのリビルト事業は、実績と経験を重ねてきたことで、お客さまや販売店、特約店から高い信頼をいただき、オーバーホールの際、ほとんどのお客さまがリビルトプロダクツを選ばれるようになりました。OSPのエアエンドも、リビルトプロダクツを使うメリットがお客さまに浸透してきたことで、多くのケースで採用されるようになりました。現在、DSPのエアエンドのリビルトプロダクツは全出力帯の製品に対応し、OSPのエアエンドは、全出荷台数の約80%を占める出力75kW以下の製品に対応することで、1985年から現在までのリビルトプロダクツ累計出荷台数は29,200台と、エアエンドの出荷実績は大きく伸長し、今後もさらなる成長が期待されています。

画像4: お客さまに支持され、拡大・定着したリビルト事業

環境負荷を36%にまで抑制する高い環境性

画像2: 【日立産機システムの環境への取り組み】
サーキュラーエコノミーの拡大に向けて—
空気圧縮機 リビルト事業の展開

 DSPとOSPのエアエンドを、すべて新規に製作した場合に必要な素材重量とそれを換算したCO2排出量を見ると、エアエンド全体では素材重量(kg/年)、CO2排出量(t-CO2/年)を約36%に抑制することができ、当社の環境ビジョンである脱炭素社会と高度循環社会の実現に大きく貢献しています。

画像1: 環境負荷を36%にまで抑制する高い環境性

リビルトプロダクツの性能と品質を支える設計グループ

 設計グループの重要な役割は、回収した使用済み回収品が再使用できるのかどうかを判断する基準や、新品同等の性能を発揮するための加工基準を、品質・性能面、環境性、さらに事業性などの観点から製作課とともに検討して策定することです。また空気圧縮機のラインアップには、年々新製品が加わりますので、その都度、リビルトのための基準づくりを検討します。大切なことは、サーキュラーエコノミーの拡大に貢献するために、リビルト事業をさらに発展させることです。そのために、品質、性能、価格面でのお客さまのメリットを追求しつつ、ビジネスとして安定して供給できる体制を整えています。

画像3: 【日立産機システムの環境への取り組み】
サーキュラーエコノミーの拡大に向けて—
空気圧縮機 リビルト事業の展開

株式会社 日立産機システム
グローバルエアパワー統括本部
空圧システム事業部
汎用圧縮機統括部
リビルト・エンジニアリングセンタ
設計グループ
主任技師 杉本正則

リビルトプロダクツの生産を円滑に回す生産管理グループ

 生産管理グループは、リビルトプロダクツの注文を受けたら、調達⇒生産⇒試験・検査⇒出荷・納品までの工程を管理するとともに、次の注文に備えた調達・生産の準備を行っています。空気圧縮機の機種ごとに注文数や納期が異なるので、注文生産と見込み生産のバランスを考慮しながら生産計画、生産体制を整えています。また、リビルト事業のサイクルが途切れることがないように、オーバーホール後の使用済みユニットを2週間以内に当センタに必ず返送していただくことを周知するなど、リビルトプロダクツの生産を常に安定させ、事業の拡大に貢献しています。

画像4: 【日立産機システムの環境への取り組み】
サーキュラーエコノミーの拡大に向けて—
空気圧縮機 リビルト事業の展開

株式会社 日立産機システム
グローバルエアパワー統括本部
空圧システム事業部
汎用圧縮機統括部
リビルト・エンジニアリングセンタ
生産管理グループ
部長代理 田中裕

画像2: 環境負荷を36%にまで抑制する高い環境性

新品同等の性能と基準を満たす独自のリビルト技術

 新品同等の性能と基準を満たすリビルトプロダクツは、当センタ独自の技術から生まれます。その工程は、①専用の通い箱に入れられた回収品が全国のサービスステーションから当センタに送られる ②エアエンドを全分解し主要部品を取り出す ③主要部品は大型洗浄機や超音波洗浄機を用いて洗浄し、専用工具を用いて汚れを除去する ④外観検査および各部を測定し合否を判定する ⑤主要部品は新品同等の性能と基準を満たすために独自の加工が施される ⑥各部品を組み立て、完成させる ⑦専用の試験装置でエアエンドの試験を行う ⑧検査に合格したリビルトプロダクツを専用の通い箱に入れ出荷する、となります。

■ エアエンドのリビルト

 当センタにおけるDSPのリビルト技術は、国内では他に例のない独自のものです。特にエアエンドを構成する一対のロータは、ごく僅かな隙間を保ったまま互いに非接触で回転する構造であり、加えてロータとケーシングの間にもごく僅かな隙間が必要なので、新品同等の基準を満たすためには、研磨・コーティングにおいて1,000分の1mm単位の高い加工精度が必要です。

画像1: 新品同等の性能と基準を満たす独自のリビルト技術

■ DCBLモータのリビルト

 DCBLモータについてはモータロータに強力な永久磁石を採用しているので、お客さま先の据え付け環境のもとでは磁力健全の確認が難しい上に、過酷な据え付け環境によっては磁力が低下する可能性があります。そこで、当センタのクリーンな環境下で分解・洗浄、部品交換、専用試験装置により磁力が劣化していないかを確認します。

画像2: 新品同等の性能と基準を満たす独自のリビルト技術

■リビルト技術を支える管理体制
 当センタは空気圧縮機のマザー工場である清水事業所と同じモノづくり技術を受け継ぐとともに、独自のリビルト技術に加え、マザー工場と同等の品質管理体制、生産管理体制のもと品質を保証することで、リビルトプロダクツをお客さまに自信を持って推奨しています。

リビルト事業のさらなる発展のために

 空気圧縮機のリビルト事業のさらなる発展をめざし、当センタではさまざまな取り組みが進んでいます。例えばスクリュー圧縮機とは構造が異なる、アモルファスモータ 一体型オイルフリースクロール圧縮機用モータのリビルト事業をすでにスタートさせました。また、DSPの主要部品再利用率を大きく向上させるため、新たなリビルト技術の研究を進めています。さらに、エアエンドとモータ以外の部品や材料の再利用を進めることで資源循環の輪を拡大するなど、サーキュラーエコノミーの拡大に貢献するリビルト事業を、一層大きく育てていきたいと考えています。

画像: リビルト事業のさらなる発展のために

空気圧縮機を最適制御するインバータのリビルト事業

 空気圧縮機用インバータのリビルト事業は、2009年、中部支社内に空気圧縮機用インバータリビルトセンタを設置して以来、着実に実績を重ね発展してきました。インバータは、高性能のエアエンドと組み合わせ、使用空気量に合わせてエアエンドを駆動するモータの回転速度を自動制御することで、消費電力の抑制とCO2排出量の削減に貢献する重要なユニットです。中部支社では、当時すでにインバータをはじめとする電子部品の整備に関する知見、ノウハウを蓄積していたことから、リビルト事業を開始しました。

 現在、リビルト事業に対応した空気圧縮機用インバータは、汎用品をカスタマイズしたインバータと、空気圧縮機用に独自に開発したDCBLコントローラーの2種類があり、そのリビルトプロダクツはいずれも新品と同等の性能と基準を満たしたものでありながら、価格は最大で約50%低減、部品・材料の再利用率は主にケースや放熱フィンなどのアルミニウムや鉄などの金属を中心として、質量比で約80%を達成しています。また、その他使用済みの電子部品や樹脂類は有価物としてリサイクル処理しています。

画像1: 空気圧縮機を最適制御するインバータのリビルト事業
画像2: 空気圧縮機を最適制御するインバータのリビルト事業
画像3: 空気圧縮機を最適制御するインバータのリビルト事業
画像4: 空気圧縮機を最適制御するインバータのリビルト事業

新品同等の性能と基準を担保するインバータのリビルト技術

 インバータとDCBLコントローラーの整備の流れは同じで、①受け入れ検査:腐食や熱変形、汚れなどの確認、通電確認、細部に至る分解確認、交換する部品を選定する ②清掃・洗浄・再塗装:再利用部品を清掃、洗浄、再塗装をする ③組立:専門技術者が専用工具を使用して200点以上の部品を組み立てる ④運転確認:実際の使われ方を織り込んだ専用の試験装置による運転確認を実施することで、不意のトラブル発生を防ぐ ⑤梱包・発送:静電防止機能を持つ専用の通い箱に収めて発送、交換後の返却品は通い箱に収めてご返却、となります。

画像: 新品同等の性能と基準を担保するインバータのリビルト技術

自社生産の強みを活かして、リビルト事業をさらに拡大

 当社では、インバータを自社生産してきたことで蓄積した高度な整備技術とサービスエンジニアの育成により、リビルトプロダクツを安定して供給できる体制を整えています。中部支社内に置いた空気圧縮機用インバータリビルトセンタでは、返却された使用済みユニットは細部に至るまで分解・確認や清掃・洗浄を実施、どんな細かな不具合も見逃すことはありません。専門技術者による点検整備が行き届いたリビルトプロダクツに交換していただければ、空気圧縮機を安心してより長くお使いいただけるので、製品のライフサイクルにわたって経済性と環境性を両立することができます。

 当社の使命は、お客さまに安全かつ安心して日立空気圧縮機をご使用いただくために、より高い品質の製品とサービスをご提供することです。そのためにもリビルト事業をさらに拡大、廃棄部品を削減し、環境負荷低減に貢献していきたいと考えています。また、日本国内だけでなく、グローバルにリビルト事業を拡大し、サーキュラーエコノミーの拡大に貢献してまいります。

画像: 株式会社 日立産機システム 中部サービスステーション 左から:主任技師 櫻井勇二、藤江岳史、技師 古崎元啓、部長 北山康彦

株式会社 日立産機システム 中部サービスステーション
左から:主任技師 櫻井勇二、藤江岳史、技師 古崎元啓、部長 北山康彦

「経済産業省 産業技術環境局長賞」を受賞

 2023年10月20日、本特集で紹介した、当社 グローバルエアパワー統括本部 空圧システム事業部 汎用圧縮機統括部 リビルト・エンジニアリングセンタの取り組みが、長年培ってきたリビルト技術を時代に則した新たな価値として提供することで、循環型社会の実現と環境負荷削減に貢献するとともに、サーキュラーエコノミーのビジネスモデルとして優れた取り組みであるとして表彰されました。近年注目されているサーキュラーエコノミーのビジネスモデルを、1985年当時にすでに実現していた先輩たちの努力に深く感謝するものです。今後ともお客さまとともに、サーキュラーエコノミーの拡大、高度循環社会と脱炭素社会の実現に貢献していくためにも、リビルトプロダクツのラインアップをさらに拡充するとともに、リビルト技術のさらなる進化に取り組んでまいります。

画像: 株式会社 日立産機システム グローバルエアパワー統括本部 空圧システム事業部 汎用圧縮機統括部 リビルト・エンジニアリングセンタ 左:センタ長 斉藤典一 右:製作課長 稲生哲也

株式会社 日立産機システム
グローバルエアパワー統括本部 空圧システム事業部 汎用圧縮機統括部
リビルト・エンジニアリングセンタ
左:センタ長 斉藤典一 右:製作課長 稲生哲也

画像: リビルト・エンジニアリングセンタ 左から:課長 稲生哲也、課員 長谷川健太、課員 太田聡、生産指導員 前原宏之、課員 内山民人、組長 高橋哲也

リビルト・エンジニアリングセンタ
左から:課長 稲生哲也、課員 長谷川健太、課員 太田聡、生産指導員 前原宏之、課員 内山民人、組長 高橋哲也

( vol.134・2024年5月掲載 )

This article is a sponsored article by
''.