日本や米国をはじめ、多くの先進国で橋や工場といった構造物の老朽化が深刻化しつつあります。これらの構造物を壊し、つくり変えるのではなく、大切な資産と捉えて、より永く、よりキレイに使い続けることに挑戦する株式会社トヨコー。鉄橋や鉄塔を蘇らせる革新的なレーザークリーニング工法や工場の屋根を再生する独自のスプレーカバー工法を開発・普及することで、脱炭素社会、循環型社会の実現に貢献することをめざしています。今回は、同社のレーザークリーニング工法を支える日立産機システムの製品をご紹介します。
画像: 浜松研究所

浜松研究所

株式会社トヨコー(TOYOKOH Inc.)

代表取締役CEO:豊澤一晃
設立:1996(平成8)年3月1日
所在地:[本社]静岡県富士市青島町39
[浜松研究所(CoolLaser開発拠点)]静岡県浜松市浜名区宮口3824-12
[SOSEI BASE(SOSEI開発拠点)]静岡県富士市蓼原241-1
従業員数:役員(社外取締役含む)10名、社員42名
事業内容:老朽化したインフラのサビや塗膜などをレーザーで除去する「CoolLaser」の製造・販売事業および、3層の特殊な樹脂をスプレーコーティングして強靭な屋根に蘇らせる「SOSEI」事業の展開
https://www.toyokoh.com/

新事業創出のキーワードは、現場主義、市場創造、協創

 静岡県富士市に本社と開発拠点、浜松市に研究所を構える株式会社トヨコーは、老朽化した鉄橋や鉄塔などのサビや塗膜、塩分などを高出力レーザーで除去する「CoolLaser」の製造・販売事業と、広大な工場の屋根を特殊な樹脂でカバーすることで強靭な屋根として再生させる独自の「SOSEI」事業を展開する注目のベンチャー企業です。

 1996年に塗装・防水工事業を目的に設立された同社が大きく成長したきっかけは、現 代表取締役CEO豊澤一晃様が、入社間もない2003年にSOSEI工法の開発を始めたことです。これは、旧態依然とした塗装業界に現場目線に立った技術革新をもたらすオリジナル工法として、2006年に事業化に成功しました。「経年により、もろく風化したスレート屋根を、工場の操業を止めることなく特殊な樹脂で3層におおうことで軽量化と断熱性、機械的強度に優れた屋根として安全に蘇生できる工法です」と豊澤様。

画像: ウィングトラックに搭載された「CoolLaser」システム(上) 高さ40mのパラボラアンテナの複雑な構造でもサビの除去が可能(右)

ウィングトラックに搭載された「CoolLaser」システム(上)
高さ40mのパラボラアンテナの複雑な構造でもサビの除去が可能(右)

画像: 「SOSEI」工法による屋根の再生

「SOSEI」工法による屋根の再生

 この事業はすぐに業界に知れ渡り、多くの受注を得て同社の発展に貢献しましたが、豊澤様はこれに満足することなく、すぐに次の市場創造への挑戦を開始しました。それが光の力を使って、サビや塗膜、有害物質を除去する「CoolLaser」と名付けられたレーザークリーニングシステムの開発と事業化です。豊澤様は、2008年に光産業創成大学院大学と共同で技術開発に着手し、製品化にあたっては、自らが同大学に入学し教授陣の指導のもと開発を加速しました。さらに、多くの企業との協創を活かしつつレーザー出力の高出力化などの改良を重ね、2024年にようやく世界最高峰の出力を誇る実用機を出荷することができました。「今までのレーザー業界では実現されなかった屋外でのレーザークリーニングの実用化により、過酷な環境でサビや塗膜の除去作業を行っていた現場を3C(Cool、Clean、Creative)の現場として改善するとともに、重要な社会インフラの再生を通じて脱炭素社会、循環型社会の実現に貢献することができます」と豊澤様は胸を張ります。

画像: 株式会社トヨコー 代表取締役 CEO 豊澤一晃 様

株式会社トヨコー 代表取締役 CEO 豊澤一晃 様

現場の課題を解決したい、との思いをカタチにした革新的な「CoolLaser」

 「CoolLaser」は一点に6kWという高強度のレーザービームを照射し、くるくると高速に回転させながら円状に走査させる高速円環スキャン方式(日米で特許取得※)により、サビや塗膜、金属、塩分を瞬間的に溶融、蒸散、熱破砕します。「従来工法は砂などの投射材を吹き付け、サビを除去しますが、その時にリサイクル不能な産業廃棄物が大量に発生するので、処理だけでも大きな負担となります。一方、『CoolLaser』を使えば除去物以外の廃棄物が発生しないという環境性の高さと、軽量で扱いやすいレーザーヘッドが現場の環境を劇的に改善します」と豊澤様。さらに「ピンポイントで1種ケレン相当の高品質な表面処理ができるので、狭い場所や、高所にあるパラボラアンテナのような複雑な構造でも施工が可能です。また、レーザー発振器と発電機、固まった飛散物からレーザーヘッドを守る圧縮エアーを供給する空気圧縮機などをシステム化してウィングトラックに搭載することで、どこへでも出動して施工ができます」と語ります。

画像: 株式会社トヨコー 執行役員 CTO 内田亘 様(左) 株式会社トヨコー CoolLaser Div. 原口学 様(右)

株式会社トヨコー 執行役員 CTO 内田亘 様(左)
株式会社トヨコー CoolLaser Div. 原口学 様(右)

 「CoolLaser」の車載化に取り組んだ、同社 CoolLaser Div. の原口学様は、「2020年頃、施工速度や施工品質をより高めるために高出力レーザーを導入することを決め、併せて空気圧縮機などの他の装置もより高性能なものを選び直すことにしました」と振り返ります。「私たちが空気圧縮機に求めることは高い圧力ではなく、車載システムから施工現場まで100m離れても安定した流量のエアーを供給できる性能とヘルツフリーでしたが、その条件を満たす機種がなかったので、ユアサ商事さんに相談したところ日立産機システムさんを紹介していただきました。そこでご提案いただいた機種が、オイルフリータイプのインバータベビコンでした」と原口様。しかし空気圧縮機は車載化を想定して設計されていません。「そこで商用電源ではなく車載用の発電機に対応できるかを検証することと、トラックに搭載して移動する時は固定でき、駆動する時は固定しない機構にできないかとお願いしたところ、当社に寄り添って解決していただき、大変助かりました」とのお言葉をいただきました。
※ 日本:特許第5574354号/米国:PatentNo.US9,868,179

画像: 効率的にレイアウトされた「CoolLaser」システム

効率的にレイアウトされた「CoolLaser」システム

画像: ラボで行われたサビの除去デモ(左) 短時間で高品質の施工を実現(右)

ラボで行われたサビの除去デモ(左)
短時間で高品質の施工を実現(右)

画像: サビ除去前(左)とサビ除去後(中) 足場が組めない難所でも施工が可能(右)

サビ除去前(左)とサビ除去後(中)
足場が組めない難所でも施工が可能(右)

ビジョンを共有する仲間の輪を広げ日本市場から世界市場への飛躍を視野に

 現在、同社では、「CoolLaser」の量産化と市場開拓に取り組んでいます。大手電機メーカーでいくつもの製品開発プロジェクトをリードした実績を持つ執行役員CTOの内田亘様は、「本年は、まず製品の品質をより確かなものにし、ユーザー様に信頼していただくことが最大のミッションです。そのためにも、日立産機システムさんをはじめとするサプライヤーの皆さんのさらなるご協力、ご支援をいただきたいと思います」と決意を語ります。また市場創出に全力を傾注しているのは、世界をリードする半導体メーカーから転身した取締役 COOの鈴木紀行様です。「人生を賭けて社会課題の解決、社会貢献に直結する仕事がしたいと思っていたところ、『CoolLaser』に出会うことができました。世界のインフラの再生に貢献する環境に優しい製品として、国内はもちろん、世界にも広く発信していきたいと思います」と抱負を披れきされました。

 同社は、自社の発展だけをめざすのではなく、国内の土木インフラの再生に貢献するレーザークリーニング工法の理解と普及をめざして、(一社)レーザー施工研究会の立ち上げ時からその運営と活動に参画し、施工に関する安全ガイドラインの策定や公表、人材育成に取り組むなど、業界全体の進化にも貢献してきました。同社の高い志に共感する日立産機システムはユアサ商事株式会社様とともに、今後も新たな製品開発、技術開発を通じて、同社がめざす社会課題の解決のお手伝いをさせていただきたいと願っています。

画像: 株式会社トヨコー 取締役 COO 鈴木紀行 様

株式会社トヨコー 取締役 COO 鈴木紀行 様

画像: ウィングを閉じて出動する

ウィングを閉じて出動する

画像: 「CoolLaser」システム全体図 : 本機から100m離れた場所での施工が可能

「CoolLaser」システム全体図 : 本機から100m離れた場所での施工が可能

画像: レーザーヘッドを守る圧縮エアーを供給する日立パッケージベビコン

レーザーヘッドを守る圧縮エアーを供給する日立パッケージベビコン

画像: 6kWの高出力レーザーを照射するレーザーヘッド(左) 組み立てを待つ日立パッケージベビコン(右)

6kWの高出力レーザーを照射するレーザーヘッド(左)
組み立てを待つ日立パッケージベビコン(右)

 当社は、産業機器、工業機械、住設・管材・空調、建築・エクステリア、建設機械などを手がける全国規模の商社です。株式会社トヨコー様とは、2019年に当社の展示会に「CoolLaser」の試作機を出展していただいた時からお付き合いをさせていただいています。この時、当社のトップが同機に大きな可能性を感じたことから、私が開発のお手伝いをさせていただくようになり、日立産機システムさんをご紹介する機会が生まれました。「CoolLaser」は日本の産業界にインパクトを与える画期的な製品です。今後もその進化をぜひお手伝いさせていただきたいと思います。

画像: ユアサ商事株式会社 浜松営業所長 横幕正光 様

ユアサ商事株式会社 浜松営業所長 横幕正光 様

ユアサ商事株式会社
本社 : 〒101-8580 東京都千代田区神田美土代町7番地
浜松営業所 : 〒430-0929 静岡県浜松市中央区中央2丁目10番1号
https://www.yuasa.co.jp/

お客さまのために力を合わせて —日立産機システム 製品関係者—

1本の電話から始まった挑戦が、車載を可能としたベビコンを生み出しました

 高出力レーザーで大型構造物のサビを除去する「CoolLaser」にパッケージベビコンをご採用いただいたきっかけは、2年前にユアサ商事株式会社様から1本のお電話をいただいたことでした。それは、株式会社トヨコー様が開発した「CoolLaser」に圧縮エアーを供給する空気圧縮機を4tトラックに積載しても問題なく使えるか、というものでした。空気圧縮機は、安定した場所に固定して使うことを前提につくられているので、お客さまと当社の設計担当者を交えて、設置構造に変更を加えることで安全性と安定性を確保することができました。飛躍をめざすお客さまとともに、さらに挑戦を重ねこのビジネスの成功に貢献してまいります。

画像1: 【お客さま導入事例 vol.166】
株式会社トヨコー

「キレイに、未来へ」を実現することをミッションとし、老朽化が加速する重要な社会インフラや工場を再生する

株式会社 日立産機システム
営業統括本部 中部支社 空圧営業部
空圧システム第二グループ 主任 本杉貴広(左)
中部支社 サービス・エンジニアリング部
空圧グループ 猿渡一拓(右)

お客さまのニーズにお応えし、ベビコンの新しい可能性を開くことができました

 株式会社トヨコー様の革新的な「CoolLaser」の商用化に向けて、ベビコンの設計担当者としてお手伝いできたことは、貴重な体験でした。取り組んだ課題は、本来、固定して使う空気圧縮機をトラックに積載して使えるようにすることに加え、商用電源ではなく車載発電機が供給する電源でも安定して使えるかどうかを検証することや、圧縮エアー用と冷却用に使うエアーの吸気と空気圧縮機からの高温の排気を問題なく可能とする積載位置の検討など、お客さまと議論やトライアルを重ねて、今まで経験したことがないような使い方に挑戦することができました。重要な社会課題に貢献する製品開発に関わることができ、大変光栄に思います。

株式会社柿本商会
相模事業所
ベビコン設計部 往復動設計グループ 
主任技師 齋藤広明

画像2: 【お客さま導入事例 vol.166】
株式会社トヨコー

「キレイに、未来へ」を実現することをミッションとし、老朽化が加速する重要な社会インフラや工場を再生する

ご採用いただいた製品

空気圧縮機
日立オイルフリーパッケージベビコン

クリーンなエアーと優れた静音性で設置場所を選ばない!
圧縮機とエアードライヤー 一体型の制御を一体化、操作パネルのスイッチで先行運転/同時運転を容易に選択できます。ドライヤー、空気タンク内ドレン自動排出機能を標準装備したコンパクト設計による使いやすさが魅力です。

主な特長
1. インバータ制御により、一定圧力制御・圧力開閉器式を自動選択
2. ドライヤー、空気タンク内ドレン自動排出機能を標準装備したコンパクト設計

画像3: 【お客さま導入事例 vol.166】
株式会社トヨコー

「キレイに、未来へ」を実現することをミッションとし、老朽化が加速する重要な社会インフラや工場を再生する

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( vol.136・2024年9月掲載 )

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