![画像1: 【環境への取り組み】
「日立カーボンニュートラル2030」の実現に向けた日立産機システムの取り組み [2]習志野事業所](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783708/rc/2025/01/08/50a3d247462b448cf1e89318afc0ae9a1730a3b2_xlarge.jpg)
習志野事業所
所在地:〒275-8611 千葉県習志野市東習志野7-1-1
操業開始:1962年8月(昭和37年8月)
従業員数:1,400名(含関連会社)
敷地面積:30万㎡
建築面積:9.5万㎡
緑地率:25%
受変電設備:受電電圧66kV、受電容量20,000kVA、契約電力5,000kW
主要製品:産業用モータ、PMモータ、インバータ、風水力機械(ポンプ、ファン他)
環境・省エネに貢献する製品とシステムのショールーム、習志野事業所
日立産機システムの主力生産拠点である習志野事業所は、日立製作所の亀戸工場(東京都)からモータ・制御装置部門を現在の地(千葉県習志野市)に移転し、1962年に操業を開始。翌年には習志野工場が設立され、2002年4月1日に日立製作所から分離・統合し当社習志野事業所としてスタートしました。当事業所では、高効率で高い省エネ性能を誇る各種産業用モータやポンプ、優れた制御機能と使いやすさを追求した多彩なインバータ、工場のIoT化に貢献するIoT対応産業用コントローラなど、社会インフラ、産業インフラを支える多くの製品とシステムを社会に送り出しています。
また当事業所では、会社設立当初から環境と省エネに貢献することをめざした取り組みを進め、これまでに「省エネルギーセンター会長賞」やエネルギー管理優良工場「経済産業大臣表彰」を受賞。さらに日立グループのエコファクトリー※として継続して認定されるなど、環境に配慮した活動を続け、操業開始から60年近くを経た工場でありながら高いレベルで省エネの成果をあげています。
※ 日立の工場やオフィスでは、環境に配慮した取り組みを展開しています。そうした活動を評価し、目標を達成 した事業所を日立では「エコファクトリー&オフィスセレクト」と認定しています。
2段階で進化した、エコファクトリーの取り組み
当事業所では、環境・省エネに貢献する産業用モータ、ポンプやファン、インバータなど、当事業所製の機器を積極的に導入・活用しつつ、着実な省エネ活動を推進してきました。CO2排出量を見ると、1990年度は20,791t-CO2でしたが、2020年度には6,016t-CO2と大きく削減。CO2排出量原単位においても、取り組み強化に着手した2013年度の243kg-CO2/百万円から、2020年度には156kg-CO2/百万円と低減しています。これらの成果は短期間の大きな設備投資によって生まれたものではなく、省エネの取り組みを本格化してから、PDCAを回しながらさまざまな努力を着実に積み重ねてきたからこそ達成できたことです。
省エネの取り組みが最初にステップアップしたきっかけは、1998年度に当社製の配電・ユーティリティー監視システム“H-NET”を導入し、電力の見える化に着手したことでした。まずサブ変電所ごとの電力監視システムを導入するとともに、工場内で電気を使用する主要な設備機器約70点に電気使用量を示す積算メータを設置。誰でもリアルタイムで電気の使用量を確認できるようになりました。この取り組みにより、電気はもちろんのこと、すべてのエネルギーを常時監視し、管理する重要性が事業所内で広く認識されました。

FEMS監視画面
次のステップアップは、2010年度にエネルギー統合管理システム(FEMS)を導入したことです。FEMSは電気だけではなく、ガス、蒸気や水の使用量、建屋内の室温や湿度などを総合的に監視・管理するシステムで、広大な事業所内で使われているエネルギーの使用状況を、棟ごと、あるいは設備ごとにリアルタイムで監視します。エネルギーの見える化からスタートして、エネルギーの使い方の問題点への気づき、改善策の検討、実行することで省エネの取り組みが進み、そこからさらなる省エネにつなげることができる仕組みが構築できました。
環境・省エネに貢献する信頼性の高い製品
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エネルギーの見える化からエネルギーの最適制御へ
FEMSとH-NETの違いは、FEMSはPLC(プログラマブルコントローラ)を活用することで事業所内のさまざまなエネルギーの計測範囲をより広くできるとともに、設備機器の制御ができることです。基本的な機能としては、「気づき支援機能」「節電支援機能」「管理機能」が備わっています。「気づき支援機能」ではトレンドグラフ、過去データ比較グラフ、待機電力閾値(しきいち)設定などの表示によって問題点を容易に把握できます。「節電支援機能」にはデマンド監視や空調省エネ制御があり、節電・省エネにつなげることができます。「管理機能」としては、監視データを日報、月報、年報にまとめることができ、予算管理にも対応します。さらに当事業所では、一定能力以上の設備は必ず監視することを管理標準でルール化しており、これまでに150のポイントにメータを設置してエネルギー使用状況を監視しています。なお、お客さまがFEMSを導入される場合の監視ポイントは、監視範囲、監視目的に応じて柔軟に設定することができます。

エネルギーの最適制御の取り組み
以下にご紹介する省エネとエネルギーの最適制御の取り組みは、カーボンニュートラルをめざす上で重要なベースとなるものです。
1. 空気圧縮機の群制御
当事業所は、エアーを供給する範囲が非常に広く、しかも建屋やラインによって生産品目が異なる上、日ごと、時間ごとに生産量が変動するため、空気圧縮機の監視と制御は重要な課題でした。そこで空気圧縮機の稼働台数を建屋ごとに3系統の群に分けて制御することを基本とし、末端でのエアー供給圧力、エアー供給時間帯をきめ細かく制御。同時に、固定速機とインバータを搭載した可変速機の並列制御も組み合わせ、個々の群ごとに末端の圧力を担保しつつ最適制御するシステムを構築。導入当初から使用電気量を1,260MWh/年(547t-CO2/年に相当)削減することができました。
群制御システムはその後も進化を続け、PLCを活用した生産計画に応じたエアー供給量のスケジュール管理、FEMSによる消費電力量の管理とエアー漏れロスの管理を導入。また2016〜2019年度にかけては、6台の空気圧縮機をPMモータ搭載のスクリュー圧縮機に更新し、さらなる省エネを実現しました。なお、空気圧縮機の群制御システムはお客さまに評価をいただき、導入していただいています。
また、管理システムの導入とともに予防保全の充実にも取り組んできました。広大な事業所の建屋ごとに点在している空気圧縮機に、稼働時間、エアー圧力、油温、室内温度、負荷などを遠隔監視する機能を装備することで、監視業務を自動化することができました。
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2. 空調機の群制御
当事業所では各種インバータを生産するDS棟に、空調機の群制御システムを導入しました。これは、空調コントローラとスマートモジュールという温度湿度センサと小型の無線基地局によって構成された制御システムであり、遠方からの一括管理によりすべての手元リモコン温度設定固定、空調機のスケジュール停止などで、冬季の電気使用量を6MWh/月(3t-CO2/月に相当)削減することができました。なお熱中症への対応のため、夏季は制御を停止しています。

3. 工業用水の給水システムの更新
当事業所で使う工業用水は、従来1日1回、1日分の総流量を監視していましたが、時間ごとの変化や設備が停止している状態でのベースライン水量を把握できないという管理上の課題がありました。そこで2017年度に給水塔の老朽化に対応した給水システムの更新を実施した際、高効率のHEポンプによる直結給水と多台数制御(5台)システムを導入するとともに、流量計を設置。2018年度にはIoT対応産業用コントローラ“HX”とFEMSを併用した進化した流量のリアルタイム監視をスタートさせました。ブラウザで遠隔監視ができ、HXでは瞬時流量(㎥/分)、FEMSでは積算流量(㎥/時間)のトレンドグラフなどの表示ができるようになったことで、水使用量の細かな監視が可能となり、水資源のムダを防止することができました。
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4. FEMSを使った工業用水の漏水対策
2018年度にアップデートしたFEMSにより、昼夜を問わず工業用水の詳細な水量確認が可能となったことで、稼働日と休日、あるいは年度ごとの水量比較が容易になり、垂れ流しのようなムダな水使用や、古い工場ならではの漏水について検知できるようになり、適切な漏水対策を実施することができました。節水効果と漏水修繕を進めたことで、2020年度の水使用量生産高原単位は、2010年度比で約54%に低減することができました。当事業所では貴重な水資源をムダなく大切に使うことが重要だと考えています。そのため早期に漏水を発見し手当てをするために、今後は流量計の設置ポイントの拡大や配管の地上化も検討していきます。
5. インバータ生産ラインの生産性向上
各種インバータを生産するDS棟では、IoT対応産業用コントローラ“HX”を核として生産ラインのIoT化を徹底して進めてきました。生産が計画通りに進んでいるかリアルタイムに状況を把握し、計画通りではない場合は生産の阻害要因を明らかにし、直ちに対策を講じ、納期遅延などが発生することのないようにしています。また、毎日の設備の稼働状況や生産状況の膨大なデータを集約し、分析。その結果を生産計画にフィードバックし、その精度を高めることで生産ライン全体の生産性を向上させています。この取り組みにより、1台当たりのサイクルタイムを約3分の2に短縮するなど、生産性が大きく向上しました。


FEMSの進化はカーボンニュートラルへの道
当事業所では、これまでFEMSを活用して事業所全体のエネルギーマネジメントに取り組み、省エネの成果につなげてきました。しかし、FEMSと連携していない設備機器はまだまだあるので、事業所の隅々にまで徹底した省エネを実践することで、カーボンニュートラルに近づけることができると考えています。また当事業所の省エネの取り組みの中で進化を続けてきたFEMSにも、さらなる発展の可能性があります。

工業用水用ポンプ室にて稼働中のIoT対応産業用コントローラ“HX”
その1つが生産性向上への貢献です。空気圧縮機や空調機の群制御、水やガスの制御以外の面でも、エネルギーマネジメント機能を駆使して生産ラインを最適制御できるという大きな可能性があります。
2つ目は予知保全です。人の五感に頼っていたこれまでの事後保全から、CBM(状態基準保全)を実現する遠隔監視により、計画保全、予知保全を可能とするシステムへの可能性が広がります。設備機器の故障による生産停止は生産量低下につながり、CO2排出量原単位の悪化、ムダなエネルギー消費に直結するので、予知保全の実現は、生産性の向上、エネルギー効率の向上につながり、CO2排出量の増加を未然に防ぐことができます。
3つ目はデータ解析です。さまざまな設備機器からの監視データとその分析から得られたパラメータを重ね合わせることによって、それまで見ることができなかったムダを可視化することができ、CO2の新たな削減につなげることができます。
2010年代から省エネの取り組みを一段とレベルアップしてきた習志野事業所では、今後もカーボンニュートラルへの挑戦を続けるとともに、お客さまに向けては、〈省エネに貢献できる設備機器のご提供〉、〈設備機器の運転状況(電気や水使用量)の監視につながるシステムのご提供〉、そしてそれらを組み合わせたトータルソリューションをご提案することで、お客さまのカーボンニュートラルへの取り組みをお手伝いしていきたいと考えます。
日立産機システムでは全社一体となってカーボンニュートラルに向けて取り組みを進めています。
“SAN FEMS”を活用しエネルギーの最適制御に取り組んできた習志野事業所の省エネの取り組みは、今後のカーボンニュートラルの取り組みにとって大きなヒントとなります。当社では各事業所の知見と経験を活かして、省エネの取り組みをさらに進化させていきます。
![画像6: 【環境への取り組み】
「日立カーボンニュートラル2030」の実現に向けた日立産機システムの取り組み [2]習志野事業所](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783708/rc/2025/01/08/d2e84d080619992f0bfc317c2b005753950f92c7_xlarge.jpg)
株式会社 日立産機システム
習志野事業所
[左]ドライブシステム事業部 生産統括部 部長 酒井亨
[中央]環境管理センタ 技師 久世勝彦
[右]ドライブシステム事業部 品質保証部 部長 長瀬兼一
![画像7: 【環境への取り組み】
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株式会社 日立産機システム
環境戦略推進本部
[左]本部長 久恒一修
[中央左]戦略グループ 主任技師 池田洋二
[中央右]戦略グループ 主任技師 清水洋子
[右]副本部長 小俣剛
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株式会社 日立産機システム
営業統括本部省力・ソリューション統括部
[左]担当部長 向山士郎
[右]エネルギーソリューショングループ 部長代理 吉崎昭男

日立産機システムは、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」の達成をめざして、脱炭素ビジネスの拡大と、事業所(ファクトリー・オフィス)におけるカーボンニュートラル※実現に向けた取り組みをプロダクトの提供とモノづくりを通じて推進していきます。
※ 企業が自ら排出するCO2などの温室効果ガスを主体的に削減する努力を行うとともに、削減が困難な排出量については、他の場所で実現した削減量などを購入することにより、排出量と削減量を差し引きゼロのニュートラル(中立)とすること

カーボンニュートラル実現に向けたステップ
日立産機システムの事業所では、これまで変圧器や空気圧縮機などを高効率機器へと更新したり、エネルギー消費効率の高いシステムを導入したりするなど、エネルギー効率の最大化を推進してきました。今後は再生可能エネルギー(以下「再エネ」とも表記)の導入をさらに拡大するな ど 、カ ー ボ ンニュートラル実現に向けた取り組みを進化させていきます。
STEP1:エネルギー効率の最大化
STEP2:再エネ導入の検討、拡大
STEP3:再エネ電力などの活用
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![画像10: 【環境への取り組み】
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( vol.119・2021年11月掲載 )